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答申第44号

平成18年7月27日
NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の諮問第46号に対する意見

1. 再検討の求めに至る経緯
    視聴者から「元ソウル支局長を刑事告発しなかった根拠を知りたい」として、「1支局長在任中の月別不正請求額、2元支局長が、私的に流用しなかったという結果に至った根拠、3司法組織の介入なく、銀行口座の全てを調べられたという根拠、4磯野氏の私的流用は刑事告発をし、私的流用がなければ刑事告発しないNHKのコンプライアンスに対する考え、5元支局長の現在の処遇」について開示の求めがあった。
 これに対してNHKは、「1から3までについては、懲戒処分に至る過程で作成された文書で、開示すると、NHKの事業活動に支障を及ぼすおそれがあり、また、被処分者の個人情報に当たるため、不開示情報に該当する。4については、開示の求めに該当する文書は存在しない。5については、開示することにより当該個人の権利利益を害するおそれがあり、不開示情報に該当する」とした上で、平成16年9月7日にNHKが公表した「『芸能番組制作費不正支出問題』等に関する調査と適正化の取り組みについて」の中の「ソウル支局長のずさんな経費精算問題」の部分を情報提供した。
 これに対してこの視聴者から、「元ソウル支局長の不正請求に対して、私的流用はなかったと主張するのであれば、その根拠を開示する義務がある。報道機関として情報源秘匿の義務があることは理解しているので、個々の支払先は仮名とし、支払金額や領収書の有無、そしてその有無に関わらず、全ての支払先にその裏付けを取ったかとの書類を求めている。元ソウル支局長の現在の処遇については、現在も在職するのか、不正請求分を弁済させる意思があるのかを尋ねるものである」として、再検討の求めがあった。

2. 不開示としたNHKの見解の要旨
    本件再検討の求めは、平成5年7月から平成9年6月にかけてソウル支局長を勤めていた職員が、外部プロダクションに、実際より多い領収書を書いてもらう形で、分かった限りで29か月分、合わせて4399万7120円(1ウォン=0.13円で換算)の不適切な経理処理を行っていたことに関するものである。NHKでは平成9年当時の調査で、私的流用はなかったと判断したが、経理処理が不適切であったとして、この職員を厳重注意処分とし、さらに平成16年、停職6ヶ月の懲戒処分を行った。
 開示の求めの12、に該当する文書は、懲戒処分に至る過程で作成された文書であって、個人情報そのものであり、不開示情報に該当する。
 またこれらの資料は、非公開を前提として任意で行った調査をもとに作成されており、これらを公にした場合、今後こうした情報の収集が困難となり、責任審査委員会の審議等に影響を与えるおそれが生じる。さらに、1の月別の処理額が明らかになると、ソウル支局の取材活動の一端が明らかになり、NHKの事業活動に支障を及ぼすおそれがあるため、不開示情報に該当する。
 4については、本件は私的流用がないと判断したため、告訴は行わなかったものであり、「私的流用がなければ刑事告発しないNHKの考え」に該当する文書は存在しない。
 5については、個人情報であり、不開示情報に該当する。

3. 審議委員会の判断
    まず「1元ソウル支局長在任中の月別不正請求額」については、実質的には「月別の不適切な経理処理額」の開示を求めているものと解する。NHKは、平成16年9月7日に公表した「ソウル支局長のずさんな経費精算問題」の中で、外部プロダクション側から請求書が提出された29ヵ月分について、不適切な経理処理と認定した合計額および月別の最高額と最低額を既に発表している。これらに加えて、開示が求められている月別の額を明らかにしても、今後の責任審査委員会の審議に影響を及ぼしたり、ソウル支局の取材活動の一端が明らかになったりするなど、NHKの事業活動に支障を及ぼすおそれが生じるとは認められない。
 「2元ソウル支局長が、私的に流用しなかったという結果に至った根拠」についてNHKは、外部プロダクション側から提出された請求書や報道局総務部に保存されていた経理資料、当時の支局員や外部の関係者などからの聞き取り調査、元支局長個人の銀行口座の出入金記録などによって判断したと説明しており、これらは当該職員の懲戒処分を検討するための資料であるため、NHK情報公開規程第8条第1項第1号と第3号に該当する。
 「3司法組織の介入なく、銀行口座の全てを調べられたという根拠」については、NHKは、当該職員が提出した本人の銀行口座の出入金記録の調査をしたのであって、「銀行口座の全てを調べられた」のではない。
 「4磯野氏の私的流用は刑事告発をし、私的流用がなければ刑事告発しないNHKのコンプライアンスに対する考え」については、NHKは、私的流用がなかったと認定したので、刑事告発しなかったものである。私的流用がない場合、刑事事件にはならないので、刑事告発の対象とはならない。
 「5元ソウル支局長の現在の処遇」については、個人情報であり、NHK情報公開規程第8条第1項第3号に該当する。したがって、元ソウル支局長に関して、1について月別の不適切な経理処理額を開示すべきである。また、25については、いずれも不開示としたNHKの取り扱いは、妥当である。

4. 審議の経過
 
平成18年
 3月23日
 (第60回審議委員会)  第46号諮問、審議
 
 4月26日
 (第62回審議委員会)  審議
 
 5月11日
 (第63回審議委員会)  審議
 
 5月26日
 (第64回審議委員会)  審議
 
 6月 8日
 (第65回審議委員会)  審議
 
 6月22日
 (第66回審議委員会)  審議
 
 7月14日
 (第67回審議委員会)  審議
 
 7月27日
 (第68回審議委員会)  審議、答申

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