長野県飯田市龍江(たつえ)。
天竜川に抱かれたこの地におよそ3000人が暮らしています。ここで、江戸時代から続くのが人形浄瑠璃です。りんごを栽培しながらけいこに励む農家は、若手の指導も担います。人形浄瑠璃に使う人形も、地元のひとの手作り。舞台の掃除も地域で行い、公演は皆で盛り上がります。天竜川のあゆ釣りや伊那谷の夏の風景とともに、地域の宝を守り継いでいく人たちの心意気を伝える旅です。
<電車>
東京駅→JR東海道新幹線「豊橋」駅→JR飯田線「天竜峡」駅
<車>
東京→中央自動車道「飯田山本」IC→三遠南信自動車道「天竜峡」IC
再放送予定
7月21日(月) 午前11:05
7月26日(土) 午前 5:15
龍江にある人形浄瑠璃の一座 「今田人形座」 は、23人で活動しています。農業や建設業、工場勤め、主婦など、それぞれ別の仕事を持つ老若男女が稽古に励みます。座長の澤柳太門さんは、一座で30年以上活動を続けるベテラン。人形の頭と右手を操る「主遣い(おもづかい)」を担います。代々受け継いだ畑でりんご作りをしながら、人形浄瑠璃に打ち込む日々。「若い世代にうまく伝わって欲しい」と、若手への指導も積極的です。
交通の要衝だった伊那谷に、上方で流行していた人形浄瑠璃が伝わったのは、およそ300年前です。龍江の人々は、自分たちの手で人形浄瑠璃を演じ始め、今日まで続けてきました。演目に欠かせないのが、人形の頭、「かしら」です。江戸時代から残る悪役のかしらや、物知りな老人などに使われる「神老(しんろう)」、布でできた「提灯(ちょうちん)おばけ」など、龍江には新旧100以上もの「かしら」があります。
「かしら」を作るのは、龍江で生まれ育った牧本寿亮(としすけ)さん(82)。会社勤めを終えた60歳のころ、大阪の人形師の元で修行を積み、人形作りを始めました。ひのきを材料に、のみ1本で掘り進めます。1体作るのにおよそ2か月。これまでに15体を今田人形座に納めています。「苦労して作った人形が舞台で踊ったときは、人形が自分の子どものように感じる」と話す牧本さん。ふるさとの人形浄瑠璃を舞台裏で支えます。
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