小さな旅のしおり

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山の歌 秋 母なる"天空の大地" ~八幡平~

投稿時間:2018年11月18日 08:24 | 投稿者: | 

hatimanmain.jpg秋田と岩手の県境に位置する八幡平。太古の火山活動が山頂部になだらかな台地をつくりあげました。秋、八幡平には色とりどりの紅葉とあちこちから吹き上がる湯けむりの景色が広がります。土砂崩れで廃業の危機に追い込まれても懸命に先祖代々の景色を守ってきた宿のおかみ、40年近く湯治場で仲間たちと語らい交流を深めてきた男性、70年以上山頂に通い写真を撮り続ける写真家。秋の八幡平に思いを寄せる人々に出会います。


今回の放送内容

hatiman1.jpg八幡平の五合目、森を抜けると、300年前に発見されたという蒸ノ湯(ふけのゆ)温泉にたどり着きます。宿を切り盛りするのは、阿部恭子さん。八幡平の美しい自然に魅せられ、55年前に東京から嫁いできました。しかし昭和48年、土砂崩れが蒸ノ湯を襲います。ほとんどの建物が流され、壊滅的な被害を受けました。心折れそうになったとき、支えとなったのは、毎年変わらず色づく紅葉の景色だったといいます。先祖代々から続く“紅葉と湯けむり”の風景を絶やさず守っていきたい。強い思いで宿と温泉を再建しました。


hatiman2.jpg続いて訪れたのは、明治から続く湯治場。布団や食料、冷蔵庫までもを持ち込んで、自炊をしながら長期間滞在できる施設です。地熱で暖まった“オンドル”とよばれる室内で過ごし、体をあたため療養します。ケガをした人や病気の人、さまざまな人が共同生活を送るなか、湯治客の楽しみは、夕方に開かれる“宴会”。森で採ってきたキノコや山菜など、それぞれが持ち寄った料理をみんなで食べ、語り合います。山の恵みを授かりながら、気心の知れた仲間たちと、心も体も癒やされるひとときです。


hatiman3.jpg山頂一帯には、草紅葉で黄金色に染まった湿原が広がっていました。そこで出会ったのは、70年以上八幡平に通う富樫弘さん。終戦直後、小学校の遠足で来た八幡平で、厳しい環境の中でもたくましく生きる花々の姿に魅了されたといいます。一時の登山ブームによって、湿原が荒れ草花も姿を消してしまった時期がありましたが、富樫さんは地元の人たちと共に湿原を取り戻すための地道な活動を行いました。「八幡平は、いつも優しく包んでくれるお袋みたいなもの。宝物として大事にしたい」と話す富樫さんです。


旅人・山本哲也アナウンサーより

hatimanyamamot.jpg八幡平の中腹、谷あいにある蒸ノ湯温泉。300年続く老舗旅館の14代おかみ阿部恭子さんの「心が折れそうになった時に支えられたのが目の前の紅葉なんです」の言葉が沁みてきた、湯煙の白も手伝う色鮮やかな紅葉。淡い光の差し込むブナ林の明るい紅葉。登山道の一歩一歩に八幡平の色の美しさを感じ、点在する湯治場に集う人たちの温もりを肌で感じることができました。人を癒やす八幡平、この秋一番の紅葉をたっぷりいただいた気がします。


八幡平へのアクセス

hatimantaimap.jpg

〈電車〉
・秋田新幹線「田沢湖」駅→路線バス(羽後交通・秋北バス)「八幡平頂上駐車場」(約130分)

・東北新幹線「盛岡」駅→東口より路線バス(岩手県北バス)「八幡平頂上駐車場」(約110分)

※路線バスは冬期運休

〈車〉
・鹿角市方面より
東北自動車道「鹿角八幡平」IC→国道341号線→八幡平アスピーテライン経由

・岩手 盛岡市・八幡平市方面より
東北自動車道「松尾八幡平」IC→八幡平アスピーテライン経由

※11月上旬〜4月下旬まで、八幡平頂上側アスピーテライン及び国道341号線(田沢湖方面)は通行止め


問い合わせ先

▼八幡平について
 八幡平ビジターセンター 0186-31-2714
 (4月中旬~11月上旬 ※冬季は休業)

 営業期間外は
 自然公園財団八幡平支部冬期事務所 0186-25-8846


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