小さな旅のしおり

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深山に幸いただいて ~青森県 西目屋村~

投稿時間:2017年7月16日 08:24 | 投稿者: | 

sirakamimain.jpg広大な広葉樹の森が広がる世界自然遺産「白神山地」、その山懐に抱かれた青森県西目屋村。遅めの田植えが終わる6月、村には、薪(まき)割りの音が響きます。厳しい冬の間に使う薪を、夏の間に蓄えるのです。村は、山の恵みを受けて暮らしてきたマタギの里。人々は春から夏にかけては、山菜にキノコ、イワナを採り、冬は熊やウサギなど、狩猟を行い、暮らしてきました。山を敬い、山とともに穏やかに生きる人たちと出会う旅です。


今回の放送内容

sirakami1.jpg集落を歩いてみると、どの家の軒下にも大量の薪が積み上げられています。薪に使う木は、白神山地の麓に広がる山から切り出したもの。1年に使う薪の量はおよそ4トンにもおよびます。遅めの田植えを終えたこの時期、人々はこの薪を燃やしたあとの灰を利用して、よもぎ餅を作ります。田植えを無事に終えたことを神様に感謝し、餅でお祝いするのです。高齢化の影響もあり、餅を作る家庭も少なくなりましたが、喜びを分かち合う習わしが脈々と息づいています。


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ピンク色の布をかぶり、炭俵を背負った目屋人形。かつて西目屋村では、ブナやナラを使った炭焼きが盛んに行われてきました。燃料となる炭を女性が背負って山を下り、その炭を売って収入を得ていたのです。この目屋人形は当時の女性の姿をかたどったものです。実際に炭を背負った経験のある前山貞子さんは、「当時は苦しかったが、その山里の生活を後世に伝えたい」と、30年以上人形を作り続けています。
あどけない少女の表情が、命を繋いでくれた山との暮らしを伝え続けます。


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山に分け入ること20分。たどりついたのは、きれいな水が流れ、急な傾斜に囲まれた沢です。この山に通う米澤昭也さんは、自生の山菜を収穫して地元の直売所で販売する、いわば山菜採りのプロ。ネマガリダケにワラビ、ウド、特に今の季節は「ミズ」と呼ばれる山菜が旬を迎えています。西目屋村は、先祖代々山の恩恵をうけて暮らすマタギたちの村でした。動物や山菜、キノコなどの山の命をいただいて生きてきたのです。4月の雪どけからほぼ毎日山に入るという米澤さんは、この場所を「宝の山」だと語ります。


旅人・山田敦子アナウンサーより

sirakamiyamada.jpgのサムネイル画像残雪の岩木山を望む青森県西目屋村。ここには山菜採りを生業にしている人々がいます。麓に雪が消える4月から10月まで、山を縦横に駆け巡っては山菜を探すこの人々は、山の神に深い敬意を抱き、山菜を「恵みとしていただく」のです。私も、一番入りやすい場所に案内していただきました。入りやすいと言っても、私には一人では絶対行けないような沢。沢筋に立って見上げる青空ははるかに遠く、聞こえるのはせせらぎの音だけ。深緑の苔や不思議な形の山菜、ブナの若緑。ここは神様の領分で、人間はそこにお邪魔している、という感覚を味わいました。


西目屋村へのアクセス

nisimeyamap.png

〈電車・バス〉
JR「弘前」→駅弘南バス「西目屋村役場」(約60分)

〈車〉
JR「弘前」駅から約30分
青森空港から約1時間30分


問い合わせ先

▼直売所について
 Beechにしめや 0172-85-2855

▼目屋人形について
 西目屋村商工会 0172-85-2828


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