2017年02月12日 (日)

命紡ぐ冬 ~新潟県 村上市~

murakamimain.jpg山形との県境・朝日連峰の山懐にある、新潟県村上市山熊田集落は、毎年2メートルを超える積雪を記録する豪雪地帯です。雪に閉ざされる冬、人々は厳しい自然と一途に向き合いながら暮らしてきました。山の恵みを生かして作るとち餅にふるさとの思いをのせる人。女性の辛抱強さが紡ぐ伝統の「しな布」。山の恩恵を授かる熊撃ち猟師と、そのたくましさに憧れて移住してきた人。山とともに、たくましく生きる人々を訪ねます。


今回の放送内容

murakami1.jpg冬、山熊田の暮らしに欠かせないのが、まきストーブです。どの家も居間の真ん中に置かれ、暖をとるのも煮炊きするのも、このストーブ。春、雪どけと同時に山からまきを切り出し、一年がかりで蓄え、長く厳しい冬を越します。この時期、各家庭で作られるのが、秋に集めたとちの実で作る「とち餅」。熊も食べないと言われるほどアクが強いとちの実を、ストーブから出たナラやブナの灰を使ってアク抜きし、餅米と混ぜて食べるのです。大切に守り伝えられる知恵を使って、山の恵みを余すことなく生かして作る、香り豊かなふるさとの味です。


murakami2.jpg冬の間、集落の女性たちに任されるのが、「しな布」作りです。男性が出稼ぎに出た冬、女性は何反ものしな布を織り、その収入で家計を支えました。原料は、集落の山にあるしなの木の皮。樹皮をほぐして繊維にしたものを紡ぎ、糸を作ります。その糸で、一目一目丁寧に織り上げていくのです。幼い頃、母の姿にならって糸作りを覚え、今も機織りを続けるのが、大滝栄子さん。「しな布を作ってくれた昔の人はありがたい」と、はるか昔から変わらぬ手仕事で自然の命を紡いでいきます。


murakami3.jpgのサムネイル画像集落の男性たちがいそしむのが、山の猟です。ここは古くから続くマタギの里。食糧に乏しい冬の間、山の貴重な命を頂き暮らしを繋いできました。代々猟師の一家に生まれた大滝剛さんは、「山の神」への感謝を胸に今も昔ながらの暮らしを大切に守っています。力強く生きる人たちの姿にひかれて移住してきたのが、妻の順子さん。現代美術のアーティストとして、日本各地の表情豊かな暮らしを芸術で表現してきました。今では、芸術表現ではなく山の暮らしの中でたくましく生きる力を学びとる日々を送っています。


旅人・山田敦子アナウンサーより

murakamiyamada.png山熊田、という名前は、生きていく上で大事なものを上から3つ重ねたものだそうです。一番大事なのは、山菜やきのこ、とちの実や薪を与えてくれる山、2番目は肉や毛皮をとる熊、3番目が田んぼ。30年前まで冬は孤立集落だった山熊田で、人々は手に入るものを何とか工夫して暮らしを立ててきました。何日もかけてアクを抜いたとち餅も、木の皮をほぐしほぐした糸で織り上げた「しな布」も、かけた手の数だけ深い味わい。大量生産とは真逆の暮らしの尊さを、自分には無理だと痛感しながら憧れ眺めた旅でした。


新潟県村上市 山熊田へのアクセス
murakamimap.png

〈電車〉
JR羽越本線「府屋」駅よりタクシーで約50分

〈車〉
日本海東北道「朝日まほろば」ICより車で約70分


 問い合わせ先

▼「しな布」について
 村上市山北支所 産業建設課 産業観光室 0254-77-3115
 さんぽく生業の里企業組合 0254-76-2115

 

 

投稿時間:08:24


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