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2020年9月7日(月)

タイ 王室改革訴える若者たち

ほほえみの国・タイ。
しかしいま、学生などによる反政府デモが各地で起きています。
政権批判だけでなく、これまで絶対的な権威とされてきた王室の改革を求める声があがる、異例の事態となっています。
タイ社会に何が起きているのか。
専門家と迫ります。

西海
「タイでは、今年(2020年)7月以降、連日のように各地で抗議集会が開かれ、先月(8月)16日に行われた集会には1万人以上が参加し、6年前のクーデター以降、最大規模となりました。」

中川
「この場で学生たちが訴えたことの1つが、王室の改革です。
タイでは王室を中傷することは厳しく禁じられ、違反すると『不敬罪』に問われ、最長で禁錮15年が科されます。」

西海
「議論することすらタブー視されてきた、王室のあり方に言及した今回の抗議活動。
その背景に何があるのか。
タイの政治に詳しい法政大学教授の浅見靖仁(あさみ・やすひと)さんに聞きました。」

タイ 抗議集会 社会へのインパクト

西海
「今回のデモは、どれくらいのインパクトがあるとお考えですか?」

浅見教授
「私は大きいと思っています。
特に8月になってから、はっきりと国王に言及するようになっていますので。
これまでタイの政治の安定の要と言われていた王室というものが、不安の1つの大きな要因になっているというので、大きく変わってきていると思います。」

国民から絶大な尊敬 プミポン前国王

タイの国民にとって大きな存在なのが2016年に亡くなったプミポン前国王です。
70年にわたって在位し、国民の絶大な尊敬を集めました。

浅見教授
「1960年代まだタイが貧しかった時に一番貧しい農村を積極的に訪問して、農村の人たちの暮らしが改善できるようにさまざまな開発プロジェクトを国王が直々に行った、というふうに言われています。
タイはこれまでにもクーデターなど大きな争いがあったんですが、その場合も最終的にはプミポン国王が調停に出て、軍人に対して自粛を求めて収めることがありました。
そういったことからタイが混乱したら最後はプミポン国王が治めてくださる。
特に1990年代からプミポン国王をある意味、神格化する動きが出て、またプミポン国王自身もそれに合うような立ち居振る舞いをしていたこともあり、非常にカリスマ性のある国王になりました。」

タイの若者が王室改革求める理由

プミポン前国王が亡くなりワチラロンコン国王が即位してから、およそ4年。
若者たちの一部は、王室への誹謗中傷を罰する『不敬罪の廃止』や『国王の神格化教育の禁止』など10項目にわたって王室の改革を訴えています。
なぜいま、若者たちはタブーを犯してまで変化を求めているのでしょうか。

浅見教授
「特にこの時期に動きが高まった理由としては、新型コロナウイルスの問題があります。
タイはもともと観光業が盛んな国ですので、外国からの観光客が入ってこないことは、タイ経済に非常に大きなダメージを与えます。
高校生や大学生がデモや集会の中心になっているんですけども、口々に自分たちの将来が心配だということを言っています。
実際いまのタイ経済は、新型コロナウイルスの影響もあり非常に大変な状況ですので、それに対して有効な対策を打ち出すことができない政治指導者に対する憤り、不満、失望というのがあります。
そこに重ねて、たくさんの予算を無駄に使っているように見える国王に対する不満。
そしてその国王に対して何も言うことができないプラユット首相に対する不満というのに重なってきます。
2016年にプミポン国王が亡くなってから新しい国王になったワチラロンコン国王なんですが、まあいろいろと言動に問題がある。
よく問題に挙げられるのは、タイ国内にいないということですね。
そうした中で、国王が多額のお金を海外で使い続けていることに対する憤りが、新型コロナウイルスの問題が出る以前よりもさらに強くなっている。」

抗議活動は首都バンコクのみならず、地方でも行われています。
若者たちはネット上で連携し、活動を広げているのです。

浅見教授
「夕方になって学校が終わったり、あるいは会社が終わったりしたら自発的に来て、夜になったら、次の日は学校とか会社があるので帰るっていう形のデモですね。
なのでこれまでより、人数は今の時点では少ないんだけども、かなり自発的に、しかも若い人たちが参加してる。
ツイッターのトレンドというのがあるんですが、4~5日に1回は王様をやゆする、あるいは王室に対する不満を表すハッシュタグがトップ5に入るような状況になってきました。
これだけ一斉に言えば捕まらないぞということになって、集会の際に結構、王室批判を掲げるようになりました。」

王室をめぐる対立 今後の行方は

抗議活動が広がりを見せる一方、王室を擁護する人たちからは反発が起きています。
先月30日には、バンコクに数千人が集まり、『王制を破壊しようとする行為は許さない』と訴えました。
浅見さんは今後、両者の間で緊張が高まり、不測の事態も起こりうると言います。

浅見教授
「タイの国民が一致団結していま改革に向かってるのであれば、もう改革は秒読み段階という感じなんですが、必ずしもそうではなくて、これまで自分の人生でずっと国王を崇拝してきたものを、急に変えるということに対してやはり彼ら自身の心の問題としても整理がつかない人が割合では少ないんですが、絶対数ではかなりいます。
ただ2016年にワチラロンコン国王が即位してから、いまの陸・海・空軍の上層部はワチラロンコン国王に非常に忠誠心が強い人たちで固められています。
これまでの対応策では生ぬるいと感じた国王、あるいはその周辺の人たちが、より強硬な策をとるべきだと考える軍人に、クーデターを起こさせるということも可能性としてはささやかれていますので、その辺りが最悪のシナリオでしょうね。
双方が自制をしないと大変なことになるという危機感はタイの人が抱き始めていると思います。」

西海
「抗議活動を主導するメンバーの1人で、騒動を扇動した疑いなどで逮捕された人権派弁護士が先週、再び逮捕され、若者の間で反発が強まっています。
来週土曜日の19日には、バンコク近郊のタマサート大学で反政府集会が予定されていて、どれくらいの人が集まるのか注目されます。」

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