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2020年6月29日(月)

北朝鮮で何が起きているのか?

今月(6月)16日、北朝鮮は「南北融和の象徴」といわれてきた共同連絡事務所を爆破。
その指示を出した、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の妹、キム・ヨジョン氏(金与正)の存在感が増しています。
韓国への圧力を強める一方で、突然、軍事計画を保留するなど、揺さぶりを続けています。
北朝鮮の狙いはどこにあるのか?
専門家と共に読み解きます。

中川
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは北朝鮮情勢についてお伝えします。」

西海
「いま、北朝鮮で何が起きているのか。
朝鮮半島情勢に詳しい、龍谷大学の李相哲(り・そうてつ)教授に聞きました。」

韓国惑わす北朝鮮 その国内事情は

西海
「北朝鮮が韓国に揺さぶりをかけていますが、その背景にはどのような事情があるのでしょうか?」

龍谷大学社会学部教授 李相哲さん
「北朝鮮の国内事情と関係があると思います。
北朝鮮は大変な状況にあって、首都ピョンヤン(平壌)でも3か月前から配給が途絶えたと言われています。
一部メディアによると、ピョンヤンですでに餓死者が出ているという話もあります。
新型コロナウイルスの影響もあり、国連制裁もあって、経済活動がほとんどないに等しい状況です。

1月末から国境を全て封鎖したので、中国との密貿易もできなくなりました。
政府に対する不満もあります。
以前だったら、自由市場で国家保衛員たちが取り締まるとおとなしく話を聞いたのが、最近はトラブルが頻発しているようです。
なのでこういう怒りや不満の矛先を韓国に持っていきたい、ガス抜きという形で韓国に強い姿勢を見せたのです。」

なぜ存在感高まる? キム・ヨジョン氏

そうしたなか、北朝鮮で存在感が高まっているのが、キム委員長の妹、キム・ヨジョン氏です。
李教授は、去年(2019年)12月からヨジョン氏の名前で、農業や漁業などさまざまな分野で指示が出されるようになったことに注目しています。

李相哲さん
「北朝鮮の政治を長く見てきた私にとっては、非常に異様なことです。
北朝鮮は憲法と党規約の上に『10大原則』というのがあるんです。
ジョンウン氏以外の話や、その人に対して幻想を持って従ってはならない。
キム・ジョンウン氏=太陽は1人だけということです。
しかし去年12月になって、キム・ヨジョン氏がキム・ジョンウン氏と同じような指示を出したことが確認されたのは、内部で変化があるのかと感じられます。
一番最たる、彼女の役割を示したのが6月13日の談話で、南北共同連絡事務所を爆破すると言って実行させました。
今キム・ヨジョン氏が、キム・ジョンウン氏の代わりに指示を出す、命令を出す立場にいるんだという事実に、関係者が驚いている状況です。
おそらくキム・ジョンウン委員長の信頼が厚く、キム・ジョンウン氏のメッセンジャーのような立場として、キム・ジョンウン委員長の代わりに命令を出したり、指示を出したりするという状況だとみられます。」

なぜメッセンジャーを必要とするのか

キム委員長はなぜ、ヨジョン氏に自らのメッセンジャーのような役割をさせているのか。
李教授は、2つの可能性が考えられると言います。

李相哲さん
「状況証拠と今までに出ている朝鮮労働新聞の記事などを基に判断するしかないのですが、ひとつはキム・ジョンウン委員長の健康状態が良くないのではないかと見られます。
もう一つ考えられるのは、北朝鮮政府はキム・ヨジョン氏以下の人たちが統治し、韓国はムン・ジェイン(文在寅)大統領以下の人たちが統治し、その両者の上にキム・ジョンウン氏が君臨するという構図を作ろうとしているのではないかということです。
韓国との交渉など細々したことはムン大統領とヨジョン氏が行って、一番大事な場面でジョンウン氏が出るという構図を作ろうとしているのか、作っているのか、そのような2つの可能性があると思われます。」

韓国へ揺さぶり 北朝鮮の狙いは

北朝鮮が韓国にゆさぶりをかける狙いは、経済支援にあるとみています。
北朝鮮は観光事業やケソン(開城)工業団地の再開を望んでいますが、制裁は解除されず、南北の経済協力は進んでいません。

李相哲さん
「北朝鮮は今年(2020年)に入って非常に苦しい状況の中で、突破口が必要です。
その突破口というのは一番弱い部分から突破しなければならず、それが韓国なんです。
国連制裁やアメリカの制裁を破るような行動がほしいわけです。

韓国がアメリカと距離を置くか、あるいは決別してほしいんです。
これは今に始まったものではなくて、北朝鮮の国家目標です。
韓国がアメリカの同盟から脱出して、民族同士に戻ってほしいと。
なかなか躊躇(ちゅうちょ)して踏み切れないので、そこに対しても北朝鮮はいらいらしているんですね。」

今後の北朝鮮 再び瀬戸際外交か

アメリカとの非核化に向けた協議が行き詰まる中、李教授は、北朝鮮が今後、再び韓国やアメリカに対して硬軟織り交ぜた瀬戸際外交を展開するのではないかとみています。

李相哲さん
「北朝鮮の戦略ははっきりとしていて、核実戦配備を急いで、核が完成すれば、かつての冷戦時代のソビエトとアメリカのような、軍縮会談で行動対行動、自分たちが核兵器を一つ捨てたらアメリカは何かをしてくれるという交渉に持ち込むつもりなんです。

しかし、アメリカは空母3隻を展開し、最新鋭の偵察機8機を朝鮮半島に展開して偵察を行ったり、2017年の一番緊張していた時以上に戦略資産を朝鮮半島に展開しています。
北朝鮮がアメリカにもはや希望が持てないと判断すれば、また挑発的な行為に出る可能性はあります。
韓国を圧迫しつつ、対米関係で以前のように瀬戸際外交のようなことを始めるのではないでしょうか。」

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