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2020年6月1日(月)

“コロナ危機” 高まるテロの脅威

新型コロナウイルスの感染拡大に揺れる国際社会。
経済は低迷し、社会には閉そく感が漂っています。
こうした“コロナ危機”の隙を突いて、各地で過激派組織が存在感を示し始めています。
高まるテロの脅威。
その実情に迫ります。

西海
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは、新型コロナウイルスの感染拡大の陰で懸念されるテロの脅威について、国際テロリズム論が専門の、清和大学・非常勤講師 和田大樹(わだ・だいじゅ)さんに話を聞きました。」

“新型コロナ”感染拡大 テロ活動への影響は

西海
「新型コロナウイルスの感染拡大が、世界各地の武装勢力やテロ活動にどのような影響をもたらすと見ていますか?」

清和大学 非常勤講師 和田大樹さん
「新型コロナウイルスによって、世界各地で経済的に大きな被害が生じています。
失業者が増え、経済格差が広がる。
それにより若者たちの不満が、これまで以上に高まってきています。
テロ組織がそういった隙を突いて、若者たちをリクルートし、組織を拡大してしまう。
これが中長期的な意味で非常に怖いことだと、私は懸念してます。」

西海
「実際に感染が拡大する中で、アフガニスタンでは、反政府武装勢力タリバンが感染予防に取り組む姿が捉えられています。」

タリバンの感染予防

アフガニスタンの首都近郊、タリバンの支配地域です。

こちらの診療所では、防護服を着たタリバンの構成員が、新型コロナウイルスの症状を訴える市民の検査を行っています。
本格的な検査はできませんが、多い日には500人もの人がやってきます。

症状が軽い人には、自宅で療養するよう伝えたり、感染を予防するための説明会を開いたりしています。

“支持基盤を固めたい” タリバンの感染対策

西海
「タリバンといえば、これまで政府軍などと激しい戦闘を続けてきました。
政府との停戦協議も進展していない中で、感染予防対策に一役買うという、その狙いはどこにあるのでしょうか?」

和田大樹さん
「やはり、政権を奪還したいということがあると思います。
そのためには、支配地域の住民の支持をより多く獲得しなければなりません。
タリバンとしても、ただ武力行使だけではなくて、こういった医療や食料など、さまざまな支援活動を行っていく必要があるのです。

動画配信を通して、『タリバンは医療支援も行えるんだ』ということを示し、自分たちの存在をアピールしたいということだと思います。」

イラクで再燃するISの脅威

一方、中東イラクでは、新型コロナウイルスの感染者が6,000人を超え拡大するなか、IS=イスラミックステートによる襲撃が多発。
ことし(2020年)3月には36件でしたが、4月には87件まで急増しています。

ネットで過激思想拡散 求心力高めるIS

和田大樹さん
「首都バグダッドでは、都市封鎖が行われ、外出禁止・ロックダウンなどの措置がとられました。
軍や警察が新型コロナ対策に追われ、本来の任務である対テロ対策がおろそかになる。
その隙をISに突かれ、活動を活発化させるおそれがあると指摘されています。

イラクとシリアにおけるISの支配領域は完全に崩壊しましたが、サイバー空間上には、ISの求心力というものは今でも残っています。
“コロナ危機”に乗じて、今回もISはいくつかの声明を発表しています。
例えば、新型コロナウイルスが発生したとされる中国に対して、『これまでウイグル族を長年苦しめてきた中国共産党への神からの罰だ』という声明を発表しています。
ISの過激思想に感化する人、それを支持する人というものは今でもサイバー空間上に残っていて、ISの脅威は今後も残り続けると思います。」

白人至上主義者の台頭

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界各地で課題になっているのが、差別の問題です。
先月(5月)16日、アメリカのワシントン州では、アジア系の男性が通りすがりの男から暴行を受け、「全部お前たちのせいだ」などと暴言を吐かれる事件が起こりました。
アメリカやヨーロッパでは、こうした差別の風潮が高まることで、過激な思想を持つ白人至上主義者たちが活動を活発化させることに懸念が高まっています。

西海
「白人至上主義者と言いますと、日本ではちょっとなじみが薄いかとも思うんですけれども、新型コロナウイルスの感染拡大と彼らの活動は、どう関係するのでしょうか?」

和田大樹さん
「白人至上主義者には、白人の世界から移民や難民を追い出して、白人優位の欧米社会を取り戻そうという考え方が根本にあります。
外から来た新型コロナウイルスによって、白人の世界で多くの死者が発生し、そして経済的にも深刻な打撃を受けた。

こういった形で自分たちの主義・主張をある意味、正当化する道具として、新型コロナウイルスが使われることが懸念されています。
アメリカの国土安全保障省によりますと、白人至上主義者は感染した白人に対して、『移民や難民にせきやたんを吐きかけろ』というメッセージを発信しているといいます。

白人至上主義者によるテロの脅威は、去年(2019年)の3月に起きたニュージーランドの事件以降、急速に高まっていて、アメリカのエルパソ、ノルウェー、ドイツで同じような事件が連続して起こっています。

これらのテロ事件では、容疑者が犯行前にインターネット上にマニフェストを出しています。
そのマニフェストに感化された人物が『俺もテロを起こすんだ』と同じような事件を起こし、そして『自分に続け』とほかの支持者に呼びかけているんです。
そうなってきますと、今後『ポストコロナ』の時代においては、イスラム過激派だけではなくて、グローバル化した白人至上主義者によるテロの脅威に注意を払う必要があると考えています。」

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