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2020年5月25日(月)

コロナ禍で苦悩 カンボジアの医療

世界的な感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス。
収束の見通しが立たない中、懸念されているのが医療体制がぜい弱な途上国への影響です。
東南アジアのカンボジアでは、確認された感染者は124人にとどまっているとされていますが、現場では深刻な事態が起きています。
特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは、カンボジアで活動を続けるNGOの医師にインタビュー。
感染対策の影響を受ける途上国の実情に迫ります。

高橋
「医療体制の構築が遅れているとされるカンボジア。
人口1万人あたりの病院のベッド数は8で、日本の134を大きく下回っているほか、医師の数も1.7人と日本のおよそ15分の1にとどまっています。」

松田
「こうした厳しい状況のなか、貧困層の子どもたちが治療を受けられるよう、日本のNGO、ジャパンハートは現地で医療センターを運営しています。
この活動が新型コロナウイルスによってどのような影響を受けているのか。
医療センターの責任者で、感染症の専門医でもある神白麻衣子(こうじろ・まいこ)さんに聞きました。」

「手術が受けられない」 医療者が行き来できず…

カンボジアの首都プノンペンから北におよそ40キロにある「ジャパンハートこども医療センター」。
18歳以下はすべて無料で治療を受けられます。

これまで延べ1,400人以上の日本の医師と看護師がボランティアとして活動。
しかし今、長期にわたる入国制限によって深刻な影響がでているといいます。

ジャパンハートこども医療センター 神白麻衣子さん
「私たちが一番困っていることは、日本からの医療者が行き来できない状況になってしまったことです。
当院では日本の専門チームの力を借りて小児がんの治療にも取り組んでいますが、小児がんの手術をしてもらうはずだった大学の小児外科や麻酔科の専門医チームが3月から一切来られなくなってしまい、予定していた手術ができなくなりました。
通常は、抗がん剤による化学療法をある程度行ったあとに、ここで手術をするという時期が決まっていますが、その手術ができない状況になっています。」

医療センターで手術が予定通りに受けられなかったのはこれまでにおよそ100人。
今は化学療法でしのぎながら、日本から専門医が来るのを待っています。
しかし、神白さんはそれにも限界があるといいます。

神白麻衣子さん
「子どもの病状にもよりますが、だいたい4週間から6週間ぐらいは化学療法を延長できると思います。
しかしもうすでに抗がん剤治療をかなり長く行っていて、最後の最後に手術を計画していた子どもに関しては、1か月ぐらいが限界かなと感じています。
今は、専門医のチームが来られなくても、なんとか外科医に入国してもらい、手術してもらう方法を模索しています。」

カンボジアの現状と課題

徹底的な水際対策で、感染拡大を抑えてきたとされるカンボジア。
その背景には、十分ではない国内の医療体制があるといいます。

神白麻衣子さん
「カンボジア全体の医療レベルは決して高くありません。
例えば、ICUの病床や人工呼吸器などは非常に少なく、もし新型コロナウイルスが再流行して爆発的な感染拡大をしたら、全く耐えられないと思います。
やはり予防が最大のカギになると思いますが、おそらくカンボジアの人々もそれは理解していて、もし感染して重症化したら、入院しても助からないと考えているのではないかと思います。

カンボジアでは急速に手洗いなどが普及しましたが、今回の新型コロナウイルスは、カンボジアの人々に衛生管理の大切さについて気づかせた面はあると思います。」

医療だけでなく、経済活動にも大きなダメージを及ぼす新型コロナウイルス。
神白さんは、貧しい人々に、さらなるしわ寄せがいくことを懸念しています。

神白麻衣子さん
「カンボジアの健康保険制度は非常にぜい弱なので、貧しい人々は医療を受けることがまだまだ難しいんです。
今回の感染対策の影響で、さらに難しくなっています。

病院に到達することさえ難しい人もいる中で、やはり私たちは、医療センターまで来てくれた人々には、なんとかして最大限の治療をしたいと思っています。
治療を始めた以上、止めるわけにはいきません。
1人でも多くの子どもたちを助けられるように、できることは何でもやっていきたいと思っています。」

高橋
「たくさんの子どもたちが手術を待っているということで、心配ですね。」

松田
「インタビューからは、なんとか状況を打開したいという使命感がひしひしと伝わってきました。
立場の弱い貧困層の人々をどうすれば救うことができるのか、私たちができることは何なのか、考えていきたいと思います。」

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