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2020年5月18日(月)

新型コロナウイルス 感染拡大防ぐアプリ 試験運用開始

西海
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ手段として注目されている、スマートフォンのアプリについてお伝えします。
各国では、スマホを使ってウイルスに感染した人と濃厚接触した人を追跡する『コンタクト・トレーシング』の試みが始まっています。」

中川
「コンタクト・トレーシング用のアプリは、シンガポールやオーストラリアではすでに実用化されていて、ドイツやフランス、スイスなどヨーロッパ各国や日本でも導入が検討されています。
アプリの機能は国によって異なりますが、おおむね、利用者に匿名のIDを割り当て、スマホに内蔵された近距離の無線通信『ブルートゥース』を使い、利用者同士が濃厚接触したかどうかの履歴を保存。

これを手がかりに、感染者が出た場合、速やかに濃厚接触者に警告するシステムです。
この他に韓国では、GPSを使って自宅に隔離された人たちを追跡するアプリもあります。
また、中国では、アプリを通じ、みずからの健康状態を証明する『健康コード』と呼ばれるシステムが導入されています。
そして政府だけでなく、アメリカの大手IT企業のアップルとグーグルが協力して開発に乗り出しています。
将来的には、感染者と濃厚接触した可能性があることを知らせる機能をスマホそのものに加えるということです。」

西海
「こうした技術は、感染の拡大を封じ込める手段として注目される一方、個人のデータを使う際、どのようにプライバシーを保護するかなど、課題も浮かび上がっています。
IT問題に詳しい、弁護士の高橋郁夫(たかはし・いくお)さんに話を聞きました。」

コンタクト・トレーシング 導入の背景

西海
「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界中でさまざまなアプリの開発や導入が進んでいますが、その背景には何があるのでしょうか?」

高橋郁夫弁護士
「感染の拡大を防ぐためには、コンタクト・トレーシングという、感染者の把握や、接触した人を洗い出す作業をデジタル化によって合理化していこうという動きが非常に重要になっているためです。」

西海
「こうしたアプリが感染拡大を防ぐために、どのように役立っているのでしょうか?」

高橋郁夫さん
「シンガポールの『トレーストゥギャザー』というアプリがありますが、非常にスピード感を持って開発され、3月20日にリリースされました。
いままで手作業でコンタクト・トレーシングをやっていましたが、過去2週間どこに居て、誰と近くに居たか教えてくださいという話になっても、なかなか思い出せないわけです。
人の力によってはっきりさせることができないような接触者を、デジタル技術を使ってはっきりさせていこうということで、このトレーストゥギャザーは非常に注目度が高く、他の国でも似たような仕組みを開発していこうという動きが非常に盛んになってきたと思います。」

西海
「作業が効率化されると、保健所のスタッフや医療従事者の方の負担を軽減するということにもつながるということですよね。」

高橋郁夫さん
「その通りだと思いますね。」

効果を出すには

西海
「一方で気になるのがシンガポールの例なんですが、感染をいったん抑え込んだわけですが、いままた増えています。
これはどういうことなんでしょうか?」

高橋郁夫さん
「アプリが有効に使われるためには、国民の約60%以上の人がインストールする必要があると言われていますが、実際にインストールされたのは20%を少し超えるくらいと言われています。
個人にとって、アプリを入れることによってどのようなメリットがあるのか、なかなかわからず、またスマートフォンのバッテリーの消費が早くなってしまうといった技術的な問題もあるかと思います。
そういった点をクリアして、広く使ってもらうためにはどうしたらいいかを考えていくべきだと思います。」

プライバシーへの懸念は

日本政府もアプリの開発を進めています。

西村経済再生担当大臣は8日、濃厚接触者を速やかに把握するためのスマホアプリについて、今月(5月)中の実用化をめざす方針を示しました。

西海
「日本政府は導入にあたって個人情報の保護が課題になっていることを踏まえ、電話番号や位置情報を取得しない方法を採用することを決めました。
プライバシーの保護は問題になると思いますが、各国ではどのような議論になっているのでしょうか?」

高橋郁夫さん
「国によってプライバシーをめぐる議論の状況は違うと思いますが、ヨーロッパなどでは、そういった点について非常に敏感だと思います。
反対にオーストラリアやシンガポールでは、電話番号を取得して、感染者と接触があった人は誰なのかということを政府などが判断できるようなシステムを作るという動きもあり、その点は国によって違うのかなと思います。

ただ、一般論からいって、プライバシーを最大限に尊重しながら考えていくという点については共通の認識だと思います。
先ほど紹介したシンガポールのトレーストゥギャザーの考え方は、ある意味では非常に画期的でした。
プライバシーの尊重と、コンタクト・トレーシングを両立させようとする取り組みとして、非常に革新的だったと思います。」

西海
「システムを信用するには、そういった担保があることが大事になってきますよね。」

高橋郁夫さん
「まず提供する側が、『あなたの情報はこういう形でこの目的だけに使います。そのための仕組みはこうなっていて、こういうチェックをして、情報漏洩がないように最大限の努力をしていますよ』というのを、透明な形で提供していく。
それによって信頼を確保していくことが重要になってくると思います。」

導入への課題は

西海
「こうしたアプリの導入をめぐって、浮き彫りになっている本質的な問題は何だとお考えですか?」

高橋郁夫さん
「人の命を救うことと、プライバシーを保護することは、残念ながら簡単に両立するものでありません。
人の命を救うために個人情報を使うことを問われるのは、初めての経験になるのではないかと思います。」

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