BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2020年4月27日(月)

新型コロナウイルス パンデミックに至った背景は

松田
「特集ワールドアイズ。
けさは、新型コロナウイルスの感染がパンデミック=世界的な大流行に至った背景についてお伝えします。」


高橋
「アメリカのジョンズ・ホプキンス大学によりますと世界でこれまでに感染が確認された人はすでに300万人近く、死亡した人は20万人を超えました(27日午前6時時点)。」

松田
「今回のウイルスの感染はどうしてここまで広がったのか。
そして、この危機から得られる教訓は何なのか。
長年、各国の感染症対策に取り組んできた、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、戦略局長の國井修さんに聞きました。」

止まらぬ感染拡大 途上国支援の現状は

松田
「國井さん、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、今、途上国などへの支援の現場にどのような影響が出ているんでしょうか?」

世界エイズ・結核・マラリア対策基金 國井修さん
「今回、新型コロナが世界中に広がって、まず、先進国でいろいろな国際協力をしている機関が、動けなくなりました。
私たちは現場に行って、技術協力などのサポートをしますが、まずそれができなくなりました。
アフリカではもう50か国以上に広がって、医療スタッフにも感染が広がってしまっています。
すぐにでも防護服やマスクを送って彼らを守らないといけないということで、もうすでに60か国以上へ500億円以上の支援を決めて、走り出したところです。」

新型コロナウイルス なぜパンデミックに

松田
「今回、新型コロナウイルスがこれだけまん延した理由について、どのように見ていますか?」

國井修さん
「私たちは、よく『ステルス攻撃』と言うんですが知らぬ間に入り込んで多くの人たちに広げてしまう。
おそらく発症する手前や、いわゆる無症状の人も感染を広げているので、それが一番、新型コロナウイルスの怖いところだと思います。
今は、飛行機などの高速な交通手段が増えたため、感染の広がり方が昔に比べて段違いに速くなりました。
先進国にもこれだけの勢いで広がり、特にアメリカみたいにお金や人材、技術などがあり、万全の体制と言っておきながら、それでも感染拡大を防げず、対応が難しかったというのは、本当に驚きでした。」

パンデミックの中心は、中国からヨーロッパやアメリカに移り、イタリアやスペインなどでは急増する患者に医療現場の対策が追いつかず医療崩壊が起きました。

イタリアとスペインでは新型コロナウイルスによる死者数の割合は、人口100万人あたり400人以上と日本やドイツなどよりはるかに高くなり、アメリカのニューヨーク州では、1100人以上にのぼっています。
なぜ、医療崩壊が起きたのか、國井さんは、次のように指摘します。

なぜ起きた? 各国の医療崩壊

國井修さん
「ひとつはやはり文化や習慣の特徴があると思います。
イタリア、スペインなどは、特にラテン文化で、いつもハグをしてキスをして、手をつないだりして、とにかく人と人との距離が本当に近い。

もうひとつは、特にアメリカなどでの大きな問題は、格差社会だということだと思います。
ロックダウンになっても、どうしても働かなくてはいけないと、仕事に出かけて感染してしまう貧困層の人たちが多く、病院にも行けないため感染拡大してしまったというのがあったと思います。
医療体制について、イタリア、スペインでは例えば病院のベッド数や看護師の数がもともと日本などと比べるとかなり少ないんです。
あと医療費もかなり少ないと言われています。
例えばイタリア北部のロンバルディア州では、たくさんの感染者が押し寄せた結果、医療が完全に崩壊しました。

他の地域とのコーディネーションができていなかったからです。
危機管理において本当に重要なのはこのコーディネーションです。
国としての計画や方針があったとしても、それぞれの州、日本で言えば都道府県や市町村にあたるところのキャパシティーや横とのコーディネーションが十分でなければ、一つの地域だけで対応するのは全く無理なんです。」

日本の医療体制に 今必要な備えは

松田
「これまで各国の状況について伺ってきましたが、日本が医療崩壊を防ぐために、どのような対策、どのような備えが具体的に必要だと考えますか?」

國井修さん
「作った行動計画を、実際にシミュレーションしなければいけません。
例えば、ここで患者があふれた時に、どこにどのような形で搬送していくかなどです。
シミュレーションすることは本当に重要です。
計画というのは、紙の上でできていても絶対その通りにはいきません。

まさに日本でも、今のうちからそういったシミュレーションをできるだけ多くの都道府県、または市町村レベルでやって、オーバーシューティング(爆発的な感染拡大)をしたときに、具体的にどんな対応をするのか決めておく必要があります。
その場合には本当につらいことですが、命の選択をしなくてはいけないかもしれません。
私もアフリカで、いつもそういうことを考えながらやっていました。
薬もベッドも限られた数しかありませんし、ひどいときには食糧も限られた量しかありません。
そんな時にどのようにこれを配っていくか考えなくてはいけないんです。
本当につらい話ですが、もしかすると日本でも、医師や看護師がどの患者を優先するかという命の優先順位を決めなくてはいけないような事態になるかもしれません。
これはもう実際にイタリア北部やアメリカのニューヨークでもあったことなので、日本でも現実に起こるかもしれないと考えて準備する必要があると思います。」

日本でも緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大するなど、私たちの生活に深刻な影響を与えている新型コロナウイルス。
国内外の課題を分析することで、将来に向けて生かせることがあるのではないかと國井さんは指摘します。

感染症拡大に備えて 日本の課題は

國井修さん
「私は今回、日本と海外との大きな違いがいろいろと見えたと思います。
例えば、ITを使った対策ができる国とできない国があるのが分かります。
あと検査に関しても、スタートアップ企業がとても多い韓国ではすぐにたくさんの検査キットを作り対応を強化できましたが、スタートアップが十分に育っていない日本ではそれができていないといったことなどです。
今は、新型コロナウイルスと闘っていますが、今後、いつでも同じような危機は来ると思って備えるべきです。
感染症というのは、地震や台風と同じように、いつか必ず来ます。
そういう意味でいつでも備えをしておくことが必要です。

日本では、感染症が重要視されてこなかったため、感染症を専門にする医者が少ないという現状があります。
今後、今回と同じようなことが起きた場合に、検査や治療まで円滑にできる体制を作るべきだと思います。
現在、世界各国がワクチンや治療薬の開発をしていますが、日本ももっと積極的に国際協力に参加してほしいと思います。」

高橋
「國井さんが地震や台風と同じように新たな感染症に備えることの大切さを強調していましたが、これは今後のスタンダードになりそうですね。」

松田
「長年、感染症対策に携わってきた経験に裏打ちされた専門家ならではの言葉の重みを感じました。
私たちも国や自治体任せにせず、個人でも備えや対策にしっかり取り組んでいきたいと思います。
以上、特集ワールドアイズでした。」

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