BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2020年4月20日(月)

新型コロナウイルス 感染拡大で亀裂深まるEU

フランス マクロン大統領
「私たちは戦争のさなかにある。
新型コロナウイルスと闘わなければならない。」


新型コロナウイルスの感染拡大が続くヨーロッパ。
EUは連帯して対処することを強調していますが、経済対策をめぐってイタリアやスペインなどと、ドイツやオランダなどが激しく対立。
EUの結束が揺らぐなか、中国とロシアが急接近。
イタリアなどにマスクを送ったり、支援要員を派遣するなど存在感を高めています。
EUはどこへ向かうのか。
専門家とひもときます。

新型コロナ感染拡大 揺れるEU

西海
「特集ワールドアイズ。
きょう(20日)は、新型コロナウイルスの感染拡大に対するEU(ヨーロッパ連合)の対応についてお伝えします。
EUの政治が専門の慶應義塾大学・准教授、鶴岡路人さんに話を伺いました。」

西海
「鶴岡さん、今回の新型コロナウイルスがもたらしたインパクトは、これまでの数々の危機と比較して、どの程度のものだとお考えですか?」

慶應義塾大学 准教授 鶴岡路人さん
「これまでもEUはさまざまな危機を経験してきたわけです。
ただ今回の危機は、ヨーロッパの中で死者がたくさん出ています。
その危機が大きいだけに、より結束しなければいけないという方向になることもありえますが、危機が起きたのにもかかわらず、EUの対応がなかなか進まないということになりますと、EUに対する反発や幻滅が広がっていってしまいます。
とにかくEUがどこに向かうのかわからない瀬戸際の危機になっているというのは事実だと思います。」

EUに接近する中国とロシア

西海
「なるほど、瀬戸際ですか。
スペインやイタリアでは感染が拡大し、もはや一国だけ対処するのは難しいところまで来ているのかもしれませんが、EUは加盟国の窮状に対して、十分な支援、できているのでしょうか?」

鶴岡路人さん
「最初は、非常につまずいてしまったというのが現実だと思います。
2月の終わりから3月の頭にかけて、イタリアで感染者が増え、急激に死者が増えました。
そのような事態になったわけですけれども、EUからの支援は全くありませんでした。
この時にイタリアでは、EUに対する批判やさらに言えば幻滅といったものが広がってしまいました。
それを受けてEUとしてもこのままではまずいということで、さまざまな対策を始めたわけですが、その前に、中国がさまざまな形で支援の手を差し伸べました。
マスクを送ったり、あるいは医療チームをイタリアに派遣したりということがありました。
まさにこのウイルスの震源地だったわけですから、その汚名返上とばかりに、さまざまな外交攻勢をかけているということです。
ですから一部の論調としては、EUは助けてくれないけど中国は助けてくれるという、そういった瞬間があったのは事実だと思います。
ただこの外交攻勢があまりに露骨なので、かえってヨーロッパ側の警戒や反発を招いているということもあると思います。」

西海
「そこにまたロシアも支援を積極的に行っていますよね?」

鶴岡路人さん
「ロシアのイタリアに対する支援というのは、かなり大規模なものでした。
3月末には、ロシア軍の輸送機が十数機、イタリアにやってきて、支援物資や医療チームを病院に届けることをやってのけました。 
イタリアはNATO(北大西洋条約機構)の加盟国ですから、これはかなり衝撃的な光景だったわけです。

もちろんロシアにも、狙いというものがありまして、その第1は、やはり2014年のクリミア併合以降にEUがロシアに対して行っている経済制裁、これを緩和させたいということです。
もうひとつは、フェイクニュースやさまざまな偽情報を流すことで、まるで、ロシアは支援しているけれど、アメリカは支援していないかのように印象づけることです。
アメリカは信用できないという声を高めていくということで、アメリカとヨーロッパの関係を離間させるということですね。
これはロシアにとってはまさに狙うところだと思います。」

金融支援めぐりEUに亀裂

そしていま、最も影響が深刻なのが経済です。
EUは今月(4月)、ユーロ圏財務相会議を開き、支援策を協議。
被害が深刻なイタリアやフランスなどが、既存の金融支援の枠組みに加え、「ユーロ共同債」の発行を求めましたが、加盟国間で意見が対立、EUの亀裂が浮き彫りとなりました。

西海
「鶴岡さん。
このユーロ共同債については、イタリアやスペイン、それにフランスが賛成なのに対して、オランダやフィンランド、それにドイツが反対しています。
最も求めているのはイタリアですが、これはどうしてなんでしょうか?」

鶴岡路人さん
「やはりイタリアが今回のダメージが大きいということだと思います。
それと同時に、反EUといったような動きが高まっています。
こういう状況ですからイタリア政府としては、EUからこれだけの支援を引き出すことが出来たというのを、国内的にもアピールしないといけないという事情もあります。」

西海
「これに対してオランダ、ドイツが反対していますが、これはどうしてなんでしょうか?」

鶴岡路人さん
「EUで何かをするというときに、どうしても負担が大きくなるというのがドイツとかオランダであります。
今回の共同債のような案に対しても規模が大きくなればなるほど、結局負担はドイツやオランダにいくということです。
もうひとつは、オランダ、フィンランドのようなヨーロッパ北部の国では、犠牲者、感染者が、ヨーロッパ南部の国に比べると少ないということで危機意識という点でも格差が若干あるというのは事実だと思います。」

西海
「なるほど、格差があるというお話でしたが、そんな中で今週、EUの首脳会議が予定されています。
このまま加盟国の間で不信感が深まると、どんなことが懸念されますか?」

鶴岡路人さん
「はい、まさに南北対立という状況で、交渉が妥結しなければ、政治的にずっとお互いを批判するような状況が、続いてしまうと思います。
ただ、合意が出来なければそのままでいいのかというと、そうではないわけで、やはり、どこかしらで何かの妥協はする。

具体的には、フランスとドイツがどこまで歩み寄れるかというのが問われているんだと思います。」

“強権化”するハンガリー その狙いとは

一方、EUの理念である「自由」や「民主主義」が損なわれる懸念がでています。
ハンガリーのオルバン首相は、感染拡大防止のために発表した非常事態宣言を延長。
新しい法律を成立させ、期限なく政府の権限強化が可能となりました。

西海
「新型コロナウイルスへの対応を理由に、政府の権限が強化されたわけですが、オルバン首相の狙いはどこにあるのでしょうか?」

鶴岡路人さん
「オルバン政権は、コロナウイルスが広がる前から『イリベラル・デモクラシー』ということを言っていまして、“自由でない民主主義”ということで、例えば、選挙はやるけれども、やり方が自由で公平と言い難いという状況であったり、野党に対して様々な締めつけをしたりということをしています。
しかし、EUの理念としては、自由とか民主主義というのは重要ですので、コロナウイルス対策に乗じて、EUの理念を否定する勢力が出てくるというのは、非常に良くない状況です。
懸念が高まっているということだと思います。」

どうなるEU?

西海
「EUの中で様々な不協和音が表面化してきたわけですが、この危機は、ヨーロッパに何をもたらすことになると思いますか?」

鶴岡路人さん
「どうやってこの感染症の拡大を押し留めるのかということで、各国は、国境を閉鎖したり、外出制限を出したりしています。
その国民の自由を、かなり制約するような措置をとっています。
この動きが広がり、移動の制限や排外主義的な動きが出てくると非常に困る。
しかし最終的に、EUが出来ることは、経済対策ということなので、コロナ債の話もそうですし、様々な経済対策を、いかに進めて行くことができるか。
まさにこれにEUの将来がかかっているということです。」

西海
「ありがとうございました。
ここまで慶応義塾大学准教授、鶴岡路人さんに新型コロナウイルスへの対応をめぐり亀裂が深まるEUについて聞きました。」

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