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2020年3月16日(月)

サバクトビバッタの猛威

アフリカ東部を中心に大量に発生し、猛威をふるうサバクトビバッタ。

国連 ローコック事務次長
「1,300万人が深刻な食糧不足に直面している。」



国連は、対応が遅れれば、農作物に壊滅的な被害が出て、人道危機をもたらすおそれがあるとして各国に支援を求めています。
特集・ワールドEYES(アイズ)。
バッタが大量に発生した背景や世界に与える影響について、専門家とともに探ります。

サバクトビバッタ 被害の状況は

丹野
「スタジオには、農業生物資源研究所などで、バッタの生態を長年研究されてきた田中誠二(たなか・せいじ)さんにお越しいただいています。」

松田
「まず、サバクトビバッタによる被害状況は今、どのようになっているのでしょうか。」

田中誠二さん
「全体の被害というのはまだ分かっていませんが、特に東アフリカで被害が深刻だと聞いています。
ケニアでは、7万ヘクタールの農地が被害を受けており、エチオピアでは、穀物の40%くらいが、もうすでに食べられてしまっています。
ソマリアでは、家畜用の草がほとんどなくなってしまったというくらい深刻な状況です。」

松田
「食糧がバッタに食べられてしまうと、人間への影響が心配だと思いますが、どう見積もられているのでしょうか?」

田中誠二さん
「東アフリカは、今が栽培と収穫の時期なんです。
それがバッタに作物を食べられてしまうと深刻な状況に陥って、FAO=国連食糧農業機関は、さらに2,000万人に被害が及ぶと警告しています。」

驚きの生態

松田
「公園や草むらでバッタを数匹見かけることはありますが、サバクトビバッタは、とてつもなく大きな群れを作っています。
これは、どうしてなんですか?」

田中誠二さん
「サバクトビバッタは、日本でいうとトノサマバッタに相当するバッタなんですが、通常はひっそりと単独で生活しています。
こういうものを『孤独相』と呼んでいます。
しかし、好条件が重なって、エサがたくさんある状況で個体数が増えると、行動や体の色、そして形態まで変わってしまいます。」

丹野
「体の色や形態まで変わるというのは、生態が変わるということですか。」

田中誠二さん
「そうなんです。
『孤独相』の場合は、背景に溶け込むように、体色が緑や茶色なんですが、集団の中で育った『群生相』の場合は、黒や黄色に変わっていきます。
そして、群れを成してマーチングという大行進をし始め、目の前にある草をどんどん食べていくという行動をとります。」

丹野
「大発生するとどういう状況になるんですか?」

田中誠二さん
「集団によっては、幅が40キロ、長さが60キロ。
面積にすると、2400平方キロメートルくらいになって、神奈川県の面積に相当する大きな集団で動くと言われています。」

丹野
「人を襲ったりする危険性はないんですか?」

田中誠二さん
「人は大丈夫です。
かみついたりは、まずしません。」

バッタ大量発生 背景に異常気象

松田
「今回の大量発生はなぜ起こったのでしょうか?」

田中誠二さん
「バッタの成長・繁殖に欠かせないのはエサですから、エサとなる草が大量に繁茂することが、大発生のきっかけなんです。
今回の場合ですと、実は2年前、2018年のサイクロンによる大雨が引き金となって、アラビア半島のイエメンとオマーンの国境辺りにバッタが発生し、繁殖しました。
それが、翌年の2019年に、サウジアラビア、あるいは紅海沿岸の国々に飛んでいって繁殖したんです。

そして、東アフリカのエチオピア、ケニア、特にソマリアでは、サイクロンが頻発して、草が常にある状況が生まれて、バッタがさらに増殖してしまって、今回の大発生につながっているということです。」

松田
「イエメンやソマリアですと、政情も不安定ですから駆除も難しそうですね。」

田中誠二さん
「人が入り込めないような所で大発生した時には、もう何もできない状況だと思います。」

現地の対策は

丹野
「そういった中で、現地では今、どのような対策が行われているのでしょうか?」

田中誠二さん
「現地での対策は、殺虫剤をまくことです。
背中に殺虫剤をかついで人力でやる方法。
もしくは、車か飛行機でまく方法もありますが、いずれの場合も、資金や人員が必要です。
現地では、それらが十分ではなく、かなり厳しい状況のようです。」

松田
「殺虫剤の散布というと、環境への影響というのも気になりますね。」

田中誠二さん
「ケニアでは、安価で、残留性の強い殺虫剤がまかれています。
そのため、牧畜をやっている方などは、長期的な汚染を懸念しているようです。」

アジアへの影響は

松田
「終息の見込みはあるのでしょうか?」

田中誠二さん
「そうですね。
雨がやめば、エサとなる草が枯れますので、終息に向かうと思います。
ただ、これからしばらくの間は、雨が続くという予報です。
今までの傾向からしても、いったん大発生してしまうと、2~3年は続くのではないかと考えられます。」

松田
「こちらの地図を見ますと、今はアフリカ東部が中心ですが、インドやパキスタンまで影響が及んできています。
日本や中国などへの影響も心配ですが、どうでしょうか?」

田中誠二さん
「サバクトビバッタは、1,000メートル以上の山は越えられないと言われています。
それは、寒いからです。」

松田
「ちょっと安心しますね。」

田中誠二さん
「そして、パキスタンと中国の国境は、5,000メートル級の山が連なる山岳地帯ですので、サバクトビバッタが飛んで、中国のほうに行くというのは考えにくいですね。」

松田
「一方で日本はどうですか?
トノサマバッタも大量発生するということですが。」

田中誠二さん
「かなりの規模で発生することがあり、特に沖縄などでは、頻発しています。
サバクトビバッタが大発生する時期に、トノサマバッタが中国や日本で、大量までいかなくても、かなりの規模で発生するという傾向がありますので、注意が必要だと思います。」

松田
「日本政府からは、10日に8億円あまりの緊急支援が発表されました。
国際社会に求められている支援というのは何でしょうか。」

田中誠二さん
「まず、駆除などための資金です。
FAOが先導してやっているので、そのための資金を支援することがひとつ。
もうひとつは、すでに被害にあった方たちへの人道的な支援。
それと、サバクトビバッタの大発生に関する、われわれの知識はまだ十分ではないので、基礎研究への支援が大事だと思います。」

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