BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2020年3月2日(月)

世界で広がる「ソーシャルサーカス」

松田
「すばらしい!
ありがとうございます。
これは何という技なんでしょうか。」



金井さん
「これはジャグリングという技で、この道具はジャグリングクラブといいます。」

松田
「それは、何でできているんですか?」

金井さん
「実は私が竹で作ったんです。」

松田
「けさは、サーカスアーティストの金井ケイスケさんにお越し頂きました。
きょうはよろしくお願いします。
金井さんは、フランスでサーカスを学んだ後、アフリカや中東など30か国以上でサーカスの公演をするなど、海外で活躍されてきました。
現在は日本でさまざまな団体や企業と連携して、ソーシャルサーカスという活動を行っています。」

松田
「このソーシャルサーカスですが、どういった活動なのでしょうか?」

金井さん
「欧米で始まったもので、貧困や薬物問題、移民問題など、さまざまな社会的課題をサーカスで解決をしようという取り組みで、世界で注目を集めています。」

松田
「社会の課題を解決するから、ソーシャルサーカスということなんですね。
でも、サーカスって客席から見るものという印象なんですが、参加するというのは一般の人にとって難しいのではないでしょうか?」

金井さん
「それが、けっこう簡単にできるんです。
サーカスのプロの技をいきなりやらせたりはしないんですね。
非常に簡単なところからやっていきます。
例えばワークショップでは伝統的なアクロバットなどの要素も取り入れるんですが、ダンスなど現代的なさまざまな表現を取り入れて、誰もができる範囲で参加できる内容になっています。」

松田
「金井さんは、世界のソーシャルサーカスについて調査しているということですが、現状はどうなっているのでしょうか?」

金井さん
「20年以上前から、欧米を中心にたくさんの団体が活動していて、世界各地で毎年、ソーシャルサーカスの国際会議が開かれています。
また、4月の第1土曜日は『ソーシャルサーカスデー』といって、世界中の団体が、パフォーマンスやワークショップの映像などをインターネットにアップして、情報交換を活発にしています。

去年は南米で初めての国際会議があり、私たちも参加しました。」

松田
「具体的に南米ではどのような活動が行われているのでしょうか?」

金井さん
「熱心に社会貢献活動をしていました。
いま南米では、サーカスに注目が集まっていて、いろいろな国で行われています。

例えば、スラム街にサーカス学校を作って、子どもたちを貧困から救う活動をしていました。
サーカス学校で育った人がトレーナーになったりしています。
2018年には、アルゼンチンの団体がスラム街でフェスティバルを開催しました。」

松田
「スラム街の中でやるんですか?」

金井さん
「はい。
普通の人はなかなか入れない場所で、サーカスのフェスティバルを行ったりしています。
そもそもこの団体は、ブエノスアイレスの周辺に広がるスラム街でサーカス団体を立ち上げたという経緯もあり、ソーシャルサーカスのプログラムでは、スラム街で育ったトレーナーが、他のスラム街で子どもたちのためにワークショップを
行ったりしています。
子どもたちと信頼関係を築きながら、さらにスラム街を良くするための活動をしています。」

松田
「スラム街の人々をサーカスに取り込んでいくことで、社会問題を解決していくということですか?」

金井さん
「そうですね。
たくさん同じような人に出会ったんですが、スラム街出身のトレーナーのひとりは、『ソーシャルサーカスに出会っていなかったら、今頃ギャングをやっていて、自分は生きていなかった』とか、ソーシャルサーカスで助けられたという話を聞きました。」

松田
「都市部以外ではどうなんですか?」

金井さん
「アルゼンチンでは地方の最貧困地区でもソーシャルサーカスが盛んでした。
アルゼンチン北部のアンデス山脈の麓にある、フフイという非常に貧しい州では、10年くらい前からソーシャルサーカス団体や社会貢献団体が入ってきていました。
警察もなかなか介入できなかった場所で、サーカスによって子どもたちが学校に行くようになったり、ギャング組織がなくなったり、といった話を聞きました。」

松田
「ソーシャルサーカスでは、具体的にはどういった指導や工夫がされているのでしょうか?」

金井さん
「例えば、トライアングルフォーメーションというものがあります。」

松田
「三角形ということですか。」

金井さん
「でも、みんなで輪になることから始まります。
これは誰か1人だけが中心にならないようにということです。
そして、トレーナーがいて、トレーナーのアシスタント、ソーシャルワーカーがいます。
この3人がトライアングルを描くように参加者の中に混ざって進行していきます。
リーダーは1人ではなくて、3人でリーダー役を回していき、参加者と同じ目線、話し方や態度を意識して、オープンなやりとりで信頼関係を築くということをやっています。」

松田
「誰かが上から『やりなさい』というのではなく、みんなが自然と参加できる雰囲気を作っていくということですか?」

金井さん
「はい。
トライアングルになることで、この輪の中で、参加者全員に目くばせができるという効果もあるんです。」

松田
「ダンスや音楽など、いろんなやり方があると思うんですが、なぜ『サーカス』なのでしょうか?」

金井さん
「サーカスは、非常に危険な技もあるんですが、楽しい技もあるんです。
お互いに信頼し合いながらやることで、自己肯定力や協調性を身に付けたりという効果があります。」

松田
「サーカスって見ていてワクワクしますよね。」

金井さん
「そうなんですよね。
ソーシャルサーカスは、サーカスのプロを育てるわけではなくて、ソーシャルサーカスのテクニックを学びながら、遊びながら、みんなでお互いに協調性を育んだり、楽しんでやっていくプログラムになっています。」

松田
「なるほど。
私もやってみたいんですが、いいですか?」

金井さん
「やってみましょう。
まずは、こちらの『羽のバランス』をやってみたいと思います。
1本持っていただいて、これを手のひらに立てます。
そして、この羽の一番先端の部分を見ながら、手のひらでバランスをとります。」

松田
「これはけっこう集中力がいりますね。」

金井さん
「あれ?ハンドパワーですか?
完璧じゃないですか。」

松田
「できましたね。」

金井さん
「これは卒業です。
それでは次に、ジャグリングなんですけど。」

松田
「無理だと思います。」

金井さん
「こうすれば、ジャグリングを簡単に学ぶことができるんです。
まず、右のボールを私にください。」

松田
「はい。」

金井さん
「では、渡します。
次に、このボールください。
今、何をやっているかというと、ジャグリングの軌跡を再現しているんです。
では、そのボールを投げてもらっていいですか?」

松田
「はい。」

金井さん
「いいですね。
こうやって簡単にジャグリングの技を学ぶことができるんですね。」

松田
「これはもう、自分の気持ちが、かなり高まりますね。
自己肯定力と先ほど言っていたのが分かるような気がします。」

金井さん
「こういう道具とかを使って、みんなで協力し合いながらやっていく、というのがソーシャルサーカスの特徴のひとつです。」

松田
「私でもできたので、みんなで楽しむことができるということですね。
今、日本でも本格的なソーシャルサーカスの試みが始まっているということですが、ご紹介いただけるでしょうか。」

金井さん
「はい。
私たちのソーシャルサーカスの活動は、障害がある人もない人も参加できるプログラム内容になっています。」

松田
「みんなで踊っていますね。」

金井さん
「これは、私たちが演出を手がけている『スローサーカスプロジェクト』の初めての公演の練習風景なんです。」

松田
「初公演が楽しみですね。」

金井さん
「私たちの活動は、世界でもめずらしくて、去年の国際会議でも注目されました。
ソーシャルスキルの向上だけでなく、障害のある方にはリハビリ効果があったり、障害がない方も多様性を体感できるような活動になっています。
多くの人に見てもらうため、障害の有無にかかわらず、アーティストと一般市民が一緒にパフォーマンスを作り上げているのが特徴なんです。」

松田
「この白いベストを着た方たちは、どういった役割なんでしょうか。」

金井さん
「だいたい障害がある方っていうのは、アクセスの問題が悩みの種になることが多いんです。
どうやって会場に来るのかとか、障害者用トイレがあるのかなど、私たちが気づけない環境の問題が多いんですが、アクセスコーディネーターという役割に看護師資格のある人が入って、安心して皆さんが参加できるように調整しています。」

松田
「風船も難しそうですね。」

金井さん
「そうなんです。
非常に危険でして、息が苦しくなったりします。
体調管理したり、恐怖心をなくすように、お互いに協力し合ってやることで、安心してできるようにしています。」

松田
「なるほど。
この日参加した方々に、感想を伺っていますので、ご覧下さい。」

バルーンに入っていた少女
「みんなが支えてくれてるのが、いちばん楽しいです。」


手話で話す少年
「障害あるなしに関係なく、一緒に一生懸命努力することによって、盲ろう者でもできることが、たくさんあります。
いろいろな経験ができて、すごくうれしいです。」


車いすの女性
「私でもできるというのを、私以外の障害がある人に見てもらって、自分もやってみようという人が増えればいいなと思います。」


松田
「みなさん、満足感が表情に出ていたと思いますけれども、今後どのようにソーシャルサーカスの活動を広げていきたいと考えていますか?」

金井さん
「例えば、単にサーカスのトレーナーを育てるのではなく、ソーシャルスキルを持った人材育成やチームビルディング、障害者雇用を見据えた多様なチーム作りを可能にするプログラムを企業や教育機関向けに研究しています。
そして、日本独自のノウハウを今後は世界にも発信していきたいと思っています。
また公演も行う予定なので、ぜひ多くの方に知ってもらい、サーカスの魅力を体感してもらいたいと思っています。」

松田
「金井さん、ありがとうございました。
ソーシャルサーカスについて、サーカスアーティストの金井ケイスケさんにお話を伺いました。」

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