BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2019年12月2日(月)

アフガニスタン 拡大する温暖化の影響

丹野
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは、地球温暖化対策を話し合う国際会議、COP25でも注目される気候変動の影響についてお伝えします。」


西海
「ことし(2019年)も、世界中で気候変動に伴う洪水や干ばつが相次いでいますが、国情が不安定なアフガニスタンでは、その影響が国の先行きに及びかねない状況になっているようです。
現地からの報告です。」

アフガニスタン 頻発する自然災害

アフガニスタン北東部の山岳地帯です。
毎年、冬に積もった雪が貴重な水源となっています。

ところが近年、気候変動に伴う気温の上昇のため、春から夏にかけてまとまった雪が溶けて、一気に川に流入しています。
こちらは雪解け水が原因で起きたとみられる洪水です。
アフガニスタンでは、かつてなかった規模の洪水が、各地で頻発するようになっています。
そうした洪水によって用水路や排水路など灌漑施設は荒廃。
さらに、草木も根こそぎ流されるため、農地は保水力を失い、すぐに乾燥してしまいます。

このため農地は年々、干上がり、干ばつによる被害が後を絶ちません。
今や国土の6割以上が干ばつの被害を受けています。

この男性は、3年ほど前まで小麦の栽培をしていました。
しかし干ばつで収穫が一切できず、今は収入がありません。
農家の中には生活に行き詰まり、村を捨てて逃げだす人も少なくないといいます。

農家の男性
「干ばつですべてを失いました。
被害を受けた住民たちは、村を捨てて逃げ出しています。」

気候変動 人々に広がる影響

アフガニスタン西部のヘラート州。
ここには、干ばつなどで被害を受けた住民のための大規模な避難キャンプがあります。
これまでにおよそ30万人以上が避難してきたと見られています。

避難民の1人、ホマールさん(40歳)です。
ことし4月、隣のバドギス州から5人の子どもと避難してきました。
ホマールさんは、かつて夫とともに特産のサフランを生産していました。
しかし、去年(2018年)住んでいた村が反政府武装勢力タリバンの襲撃を受け、夫は戦闘に巻き込まれて命を失ったといいます。

ホマールさん
「夫を殺され、干ばつにも襲われたので、避難を決めました。
子どもたちは餓死寸前でした。」

家族の大黒柱を失ったホマールさん一家。
キャンプでの生活も楽ではありません。
収入がないため、これまでの借金が返済できないのです。

思い悩んだ末に、ホマールさんが出した苦渋の決断は、5歳になる娘を嫁がせることでした。
結納金として相手の男性からは4,000ドル、日本円で40万円以上を受け取ることになっています。
娘は来月、嫁ぐことになっていますが、本人にはまだ伝えられずにいます。

ホマールさん
「子どもを売るのは嫌です。
ですが、家族が生きていくためにはしかたありません。」

そんなホマールさんが今、頼りにしているのが11歳になる長男です。
毎日キャンプから4キロ離れた地域で、プラスチックや空き缶を拾って売っています。
稼ぎは1日わずか1ドル程度ですが、家族を支える大事な収入となっています。

長男 アフマドさん
「父が殺されたあと、僕が家族を支えています。
弟や妹、家族全員が僕を頼りにしているのです。」

しかし、日に日に食料や水が不足し、末っ子の息子の体調が悪化しているといいます。

ホマールさん
「子どもの将来が不安です。
食料や避難所の提供などの支援を政府に強く求めます。」

一方、干ばつで農業をやめ、武装勢力に加わるケースも相次いでいます。

父親
「こちらに置いてあるのが、私と息子が使っていた農具です。」

この男性の息子は、一緒に農業を営んでいましたが、干ばつで収穫量が激減し、去年、離職しました。
自分の妻と子どもを村に残し、仕事を探しに都市部に出たまま帰ってきません。

父親
「息子は農業で支えてくれていました。
できれば戻ってほしいです。」

実は、息子のアブドル・カユームさんは今、北部の山岳地帯にいます。
仕事を見つけられずにいたところ、反政府武装勢力タリバンに給料がもらえると誘われ、去年、メンバーになっていたのです。

アブドル・カユームさん
「失業して絶望の中、タリバンに加わりました。
戦闘員として得た収入で、妻や子どもを養っています。」

タリバンは麻薬の密売や寄付金のほか、支配地域で住民に課している税金を主な資金源としています。
アブドルさんは、司令官に政府の治安部隊などへのテロや襲撃の計画へ加わるように命じられ、武器の管理を担わされています。
それでも、故郷で干ばつがおさまって農業ができるのなら、ふたたび戻ることも考えているといいます。

アブドル・カユームさん
「愛する故郷が平穏な場所に戻れば、帰りたいです。」

気候変動の甚大な影響

西海
「さきほど、取材にあたったイスラマバード支局・山香支局長に話を聞きました。」

「アフガニスタンでは、干ばつで生計を立てられなくなった人が武装勢力に加わるなど、負の連鎖が広がっていますね。」

山香道隆支局長(イスラマバード支局)
「アフガニスタンでは人口の8割が農業に従事しているといわれ、農業は国を支える主幹産業です。
しかし、去年から続く大規模な干ばつは、アフガニスタン全土の6割以上にまで拡大し、人々の生活の基盤を根こそぎ奪っています。
アフガニスタン政府の担当者はこうした干ばつは気候変動による影響と明確に指摘し、懸念を強めています。

政府担当者
「気候変動により、ことしも大規模な干ばつがありました。
雪も早く降るなど、農業に深刻な影響を及ぼしています。」

また、VTRでお伝えしたケースでは、干ばつの被害が児童結婚や児童労働といった子どもの人道的な問題に発展するだけでなく、仕事につけないことで過激な思想に染まり、テロを実行するなど国家の安全保障の問題にもつながっています。

西海
「アフガニスタン政府は、どのように対応しているのでしょうか?」

山香支局長
「政府は、国連やNGOと連携して、洪水や干ばつの被害を監視しようと対策を進めていますが、なかなか思うようには進んでいません。
といいますのは、アフガニスタンではタリバンや過激派組織IS=イスラミック・ステートといった武装勢力が攻勢を強めており、治安の安定が確保できない中での活動は、困難を伴うからなんです。
また、ことし9月に大統領選挙が行われましたが、結果はいまだに出ておらず、新政権は発足していません。
気候変動に取り組む新たな戦略や方針も十分に示されておらず、政府による対策は後手にまわっています。
現地では、本格的な冬を迎えようとする中、きょうも避難キャンプには多くの人たちが到着しています。
今後、状況は厳しさを増すとみられ、子どもや女性といった社会的な弱者を1人でも多く救えるよう、さらなる国際的な支援が今、強く求められています。」

ページの先頭へ