BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2019年5月20日(月)

地球温暖化 対策への試み

西海
「特集ワールドアイズ。
けさは地球温暖化対策についてお伝えします。
地球温暖化対策の国際的な枠組み『パリ協定』。
世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度を十分に下回るように保ち、1.5度に抑える努力をするというものです。
そのために温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにする目標を掲げています。」

丹野
「日本政府はこれを受けて、先月(4月)まとめた、『長期戦略』案で今世紀後半のできるだけ早期に『脱炭素社会』の実現を目指すことを明示しました。
しかし、国連の専門機関では温室効果ガスの排出が今のペースで進めば、世界の平均気温が早ければ2030年に産業革命前より1.5度上昇してしまうという予測も出されています。」

西海
「そうした中、これまでとは全く違う方法で温暖化を防ぐ研究に注目が集まってきています。
アメリカPBSのリポートをご覧ください。」

地球温暖化対策 研究の最前線

エンジニアのデイビッド・キースさんは気候変動に関する試算を行った結果、その現実にがく然としました。

ハーバード大学 デイビッド・キース教授
「たとえ、すべての温室効果ガスの排出をやめても状況は改善しません。」

記者
「地球はすでに問題を抱えています。
大気中の多すぎる二酸化炭素に対して、人類はほとんど何もしていません。
悪化の勢いが強すぎます。
たとえ明日、すべての化石燃料の使用をやめたとしても、すでに大量の二酸化炭素が大気中にあるため、問題は何十年も続くのです。」

ハーバード大学 デイビッド・キース教授
「排出をゼロにするだけなく、大気中の二酸化炭素を減らす必要があります。」

そこでキースさんは、大気中の二酸化炭素を吸収できないかと考えています。
突拍子もないアイデアのようですが、すでにいくつかの実証もしています。
カナダにある、キースさんが設立した会社が作った実験的な工場です。
ここで大気中から二酸化炭素を取り出します。
そして、水素と結合させ、用途に合わせて、ガソリン車やディーゼルエンジン、航空機などの燃料を作っています。

ハーバード大学 デイビッド・キース教授
「新たに掘削した燃料ではなく大気中の二酸化炭素から作ったものなので、排出量は増やしません。
これは温室効果ガスの削減につながります。」

キースさんは地球の平均気温を下げるための画期的な方法も研究しています。
「ソーラー・ジオエンジニアリング」と呼ばれる考え方です。
その仕組みは、成層圏に二酸化硫黄などの微粒子を大量に散布し、太陽光を反射させることで遮り、地球の気温上昇を防ぐというものです。
映画『007』に出てくる悪役が、考えつきそうな方法ですが、キースさんは真剣です。

ハーバード大学 デイビッド・キース教授
「ジオエンジニアリングなんて無茶だとタブー視されていました。
でもやってみないと、どれだけ無茶か分かりません。」

彼は1989年からこのアイデアを研究していて、科学界ではちょっとした異端児扱いでした。

ハーバード大学 デイビッド・キース教授
「先輩の研究者から、キャリアが台無しになると言われたり、距離を取られたり。
当時の主な科学者は、私の研究を話題にしようとはしませんでした。」

彼の理論は、科学界の賛同は得られませんでしたが、自然界では何百年も前から行われてきました。
それは火山の噴火です。
大噴火が起きると、上空10キロから50キロほどの成層圏に二酸化硫黄が放出されます。

ハーバード大学 デイビッド・キース教授
「二酸化硫黄の微粒子は、やがて小さな水滴になります。
そして、その水滴が太陽光を跳ね返して気温を下げるのです。
大規模な噴火後は、実際に起きています。」

1991年、ピナツボ火山の噴火で、15か月間、世界の平均気温がおよそ0.5度下がりました。
キースさんは、同じことができると考えています。
しかし、常に課題はあります。
最大の問題は、別の場所の気候に悪影響を与えないかということです。
これは「ソーラー・ジオエンジニアリング」の数ある懸念の1つに過ぎません。
他にも農業への影響や、すでに成層圏に存在する気体にどう作用するのか。
また、好ましくない副産物を生む可能性も払拭(ふっしょく)されていません。

奇抜な温暖化対策 注目集まる背景は

丹野
「ここからは、地球温暖化対策に詳しい東京大学教授の高村ゆかりさんにお話を伺います。
高村さん、よろしくお願いいたします。」

東京大学教授 高村ゆかりさん
「よろしくお願いします。」

西海
「高村さん、先ほどリポートで紹介していましたけど、研究についてどうご覧になりましたか?」

東京大学教授 高村ゆかりさん
「実はこうした研究が最近、大変関心を集めるようになってきています。
その背景というのが、やはり温暖化の影響への危機というのが大変、最近高まっているということがあると思います。
今すぐ排出をゼロにしても影響を避けられないということで、こうした技術というのは将来の影響を小さくする選択肢となるので、こうした研究、開発をするというのは大変、大事だというふうに思います。
他方で、こうした技術だけに頼るというそうしたかたちですと、排出が増えてしまって影響が避けられないものですから、やはり今ある、例えばエネルギー効率改善、あるいは再生可能エネルギーの拡大といった、今ある技術で対策をとりながらこうした技術開発を進めていくということになるかと思います。
そういう意味では、これまでになくこうした技術に関心が集まっているというのは、やはり大きな温暖化の影響への懸念というのがあると思います。」

世界に広がる温暖化への危機感

西海
「高まっている危機感、海外ではどれだけ深刻に受け止められているのでしょうか?」

東京大学教授 高村ゆかりさん
「最近、温暖化の影響というのが私たちの生存に関わる次元の危機というふうに受け止められて、実際にいろんな行動が行われているケースが多くみられます。

1つの例ですけど、気候緊急事態宣言という宣言をしている国、自治体、州というのが、この間、増えています。
特にオーストラリア、欧州、北米で増えているんですけど、数百という規模です。
5月1日にはイギリス議会が、気候緊急事態宣言というのを行いました。
気候緊急事態宣言、イギリスのこうした動きの背景には、温暖化対策を求める生存のための反抗といったデモ活動もあり、さらに子どもたちの間で温暖化の影響で自分たちの将来がどうなるんだろうかというふうに心配する声が広がってきていることがあります。

スウェーデンのグレタさんという子どもが始めて、これは週一回、金曜日に学校を休んでスウェーデン議会の前で、温暖化対策の強化を求めるという活動をしたわけですけれども、これに多くの若者が賛同して活動が世界的に広がっています。
気候のための学校ストライキとか未来のための金曜日、フライデー・フォー・フューチャーと言われる運動ですけれども、3月には約120か国、日本も含めて、若者が参加しています。

深刻化する温暖化 その実情は

丹野
「そういった動きのその背景には、どういったことがあるでしょうか?」

東京大学教授 高村ゆかりさん
「例えば、昨年(2018年)、私たちも非常に今までにないような異常気象を経験しましたけれども、これまでに経験したことのない気候の変化というのが見られているということだと思います。

昨年夏、熱波を私たちは経験しましたけれども、1981年から2010年、30年間の平均と比べても、日本を見ていただいても分かるように、かなり高い気温を昨年は記録をしています。
日本ではご存じのとおり、西日本豪雨、台風21号といったような非常に大きな洪水被害というのがありましたし、世界的には干ばつ、大規模な森林火災、サイクロン、ハリケーンといったような異常気象が頻発しました。

もちろんすべて温暖化の影響と説明をするということではないですけれども、やはり確実に気温が上昇していて、気温が上昇すれば大気中の水分量が増えて、雨の量が増えてきますので、そういう意味ではヒトが排出をしなかった工業化前と比べて確実に気温は1度ぐらい、それから雨の降り方というのは少なくとも7%以上、温暖化の影響でかさ上げされているというふうに言うこともできます。
今、産業革命前と比べて1度、気温が上昇してこうした状況ですので、もし温暖化がこのまま進んでいきますと、このかさ上げの幅というのが大きくなって豪雨ですとか猛暑といった異常気象というのが増える、大きくなるということが懸念されるわけです。」

温室効果ガスの削減 経済成長との両立は

西海
「やはり温室効果ガスを削減しなければならないというのは分かってはいるんですけれども、やはり各国の、われわれ人間の経済活動と密接に関わる問題ですよね。
やはり難しいのではないのでしょうか?」

東京大学教授 高村ゆかりさん
「今、西海さんがおっしゃったように、確かにこれまでは経済が成長するとエネルギーの消費量が増えて、その結果、排出が増えるというのを繰り返してきました。

ただ2014年から3年間、世界経済が年平均で3パーセント以上増えたにもかかわらず、この3年間というのは実は排出量が増えなかった3年間であります。
これは排出量が多いアメリカ、中国も排出が減ったんですけれども、エネルギーの効率が改善し、あるいは世界的に再生可能エネルギーが大変安くなってきたことで、その導入が加速をして、経済は成長するけれども温室効果ガスを増やさないという道筋、可能性というのが見えてきたということかと思います。

残念なことに2017年、2018年、増えているんですけれども、これはやはり中国、インド、そしてアメリカなどの排出量の伸びが大きくて、再生可能エネルギーなどの導入は進んでいるんですけれども、なかなかそのエネルギーの消費の増加に追いついていない。
その分、化石燃料を使っているということであります。
温暖化の影響をできるだけ小さく抑えるというためには、やはり2030年に十分先駆けて排出を減らしていかなければならないということが、国連のIPCCでも言われておりますので、そういう意味では対策の速度を上げていくということが必要になると思います。」

温暖化対策へ 求められることは

西海
「そうしますと、最後に改めて温暖化対策。
各国にはどのようなことが求められていると思いますでしょうか?」

東京大学教授 高村ゆかりさん
「現在のパリ協定が合意されたのをきっかけにして、企業や自治体などの取り組みが加速しています。
この企業や自治体の取り組みをできるだけ進めるための国の対策というのが必要だと思います。
排出実質ゼロに向かう明確な目標というのを示して、あるいはエネルギー効率の悪い製品の販売や使用規制をしたり、再生可能エネルギーへの投資環境というのを整備をしていくといったような現在できる対策、たくさんあるわけですけれども、これを加速化していくということを国が責任を持って進めていくということが必要だと思います。
何よりも若い人たちの将来の選択肢を狭めないように、やはり国が責任を持った対応をしていく必要があると思います。」

西海
「ありがとうございました。
温暖化対策の現状について、東京大学教授の高村ゆかりさんにお話を伺いました。」

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