BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2019年4月22日(月)

アートでスラム街を救いたい!

西アフリカ、ガーナの国旗がモチーフのこちらの作品。
世界中からガーナに運び込まれた電子機器などが大量に不法投棄されている街を表現。
実際に捨てられていたキーボードや携帯電話が貼りつけられています。
これを描いたのは、街からごみを減らし、環境を改善しようと活動する日本人、長坂真護さん。

アーティスト 長坂真護さん
「僕のアートを発表することによって、このスラム街を変えたい。」


ガーナの現状を訴える作品を相次いで発表。
今、世界が注目するアーティストです。
特集ワールドアイズ、作品に込められた長坂さんの思いにせまります。

松田
「けさご紹介するのはこちら、アーティストの長坂真護さん、34歳です。」

藤田
「長坂さんが支援活動を行っているのは、西アフリカに位置するガーナ、その首都アクラ近郊にある世界最大級の『電子廃棄物の墓』とも言われるアグボグブロシー地区です。
ここには、パソコンや家電製品などのごみが不法に投棄されていて、隣接するスラム街で暮らす人たちが、ごみの中から金属を集めてわずかな収入を得ています。」

松田
「これまで現地を4回訪れ、アートの力で環境や貧困の問題を解決したいと活動を続ける長坂さんにその思いを聞きました。

“スラム街を救いたい” アーティスト 長坂真護さん

訪れたのは、長坂さんが創作活動を行う東京・日本橋のアトリエです。

松田
「この一番大きな作品なんですけれども、タイトルは何ですか?」

アーティスト 長坂真護さん
「これはけさ完成したんですけど、タイトルは、燃やしたプラスチックが皮膚に結合して全部一緒になってしまうみたいなもので。
『プラスチック化する青年』というタイトルで描かせてもらいました。」

モデルは、長坂さんがガーナで実際に出会った人。

プラスチック製の電子機器を燃やして金属を取り出し、1日500円ほどの収入で暮らしています。
長坂さんが日本から持ってきたガスマスクをつけて作業する様子を描きました。

10年前から独学で絵を描き始めた長坂さん。

女性を題材にした作品を創作していました。
その後、活動の場を世界に広げますが、2015年、フランス滞在中に起きたパリでの同時テロ事件に衝撃を受け、転機を迎えます。
平和を新たなテーマに選んだものの、思うような絵が描けず葛藤する日々が続きました。
そんなとき、偶然、読んだ雑誌で取り上げられていたのが、先進国から途上国に運ばれる電子廃棄物によって引き起こされる環境汚染でした。
現実を自らの目で確かめたいと、向かったのがガーナ。

長坂さんは、2年前に初めて訪れたときの光景が今でも頭から離れないと言います。

松田
「初めて訪問して、どうでした?」

アーティスト 長坂真護さん
「行ってみたら、ごみの荒野というか海原みたいなものが、ずっと地平線の手前ぐらいまで続いていたんです。
これを見てしまって。
あの匂いが強くなるんです。
なんか嗅いだことのある独特のプラスチックの燃えた匂い。
あと、どんどん煙が濃くなっていく。
あるスラム街の路地というか工場の街を通っていくと、最後に行きつくところがゴミの大海原なんです。」

大気汚染などの影響で、スラム街の住民の多くが病気を患い、ほとんどの人が30代で亡くなると言われています。

アーティスト 長坂真護さん
「1日目、ガスマスクなしで、次の朝起きたらすごい頭痛がひどくて。
彼ら言っていたんです、毎日、頭痛薬を飲んで仕事してるって。
ああ、こういうことかって。
30代で亡くなるというのは僕も記事で読んでいて、でも、それは嘘じゃないなと思っています。
本当にいないです、中年の男性以降は。」

劣悪な環境で暮らす若者たちと一緒に作業するうちに、長坂さんの人生観は大きく変わったと言います。

アーティスト 長坂真護さん
「彼らは幸運なのか、そうじゃないのかわからないんですけど、一生は30代で終わる感覚が半分ちょっとあるんじゃないかな。
彼らを死なせるようなことをさせて、自分が長く生きられたり、富を形成することがくだらないなと思っちゃいました。」

アーティストとして何が出来るのか。

長坂さんは、ガーナの廃棄物を使った作品を発表することで、環境や貧困の問題を解決できるのではないかと考えました。

松田
「これはガーナから持ってきたもの?」

アーティスト 長坂真護さん
「これは持ってきました。
ガーナで実際に拾ってきたものです。

こういうものを置いて、何かに見えないかなって考え始める。
この曲線が歯に見えたりとかして。
この曲線が口のラインに見えて、こういうふうなものを描こうかなとか。」

『アートは人を救うためにある』と訴える長坂さんの作品は注目を集め、美術愛好家だけでなく、さまざまな企業からも支援の輪が広がっています。
これまでに400個のガスマスクを自らの手で届けることができました。

アーティスト 長坂真護さん
「アートの持つ力で彼らを救えるんだったら、彼らのために努力したいなって。
僕のアートスキルを彼らのために使いたいなって、すごく思うようになりました。」


藤田
「『アートは人を救うためにある』という言葉がとても印象的でした。
アーティストとして訴えかける力で、この現状を変えようという強い思いも感じました。」

松田
「ガーナから持ち帰った廃棄物を使った長坂さんの作品には、なんと1,000万円以上の値がつくこともあるということで、国内外で高い評価を得ているんです。
持ち前の『行動力』でガーナにマスクを届けるだけではなくて、さらに活動の幅を広げようとしている長坂さんに、これからの目標などを聞きました。」


子どもたちを題材にした作品も多い長坂さん。
ガーナの未来を担う子どもたちの声に気づかされたことがあると言います。

アーティスト 長坂真護さん
「子どもたちが、ブラウン管の昔のテレビを投げつけて割っているんです。
“何やってるの?”と聞いたら、割って、素手で分厚いブラウン管のテレビから金属をとって、中の金属パネルを抜いて、それを売るらしいんです。
“なんで?どうするの?”と聞いたら、“学校行きたいからお金貯めてる”と言うんです。
それを見て、小学生の時、学校に行きたいなんて思ったこと一回もなかったし、“生まれた場所だけでそういうことが起こっていいのかな”って。
“日本人に生まれたらラッキーなの?”みたいな。」

去年(2018年)、長坂さんがスラム街に作った小学校。

作品の売り上げを運営費に充てることで、子どもたちは授業料やノートなどの費用を気にせず、無料で勉強することができます。
開校した日は子どもたちにとって、そして、長坂さんにとっても忘れられない一日になりました。

アーティスト 長坂真護さん
「初めて先生が立って、“創設者のマゴさんがこの学校始めてくれました”と言って、授業を始めたんです。
途中で、彼らが英語でしあわせなら手をたたこうって歌をやり始めた瞬間を見て、こんなって言ったら失礼なんですけど、ありえないスラム街の劣悪なすべての貧困、人権、いろいろな問題がつまっているこの場所で、生き生きと、ニコニコ幸せそうに手をたたいてる彼らの姿を見て、やってよかったなと思いました。」

今年(2019年)は、ガーナに自身の作品を展示する美術館を建設予定だと語る長坂さん。

将来は、現地に最先端のリサイクル工場をつくるのが目標です。

アーティスト 長坂真護さん
「今まで彼らは焼き場でプラスチックを燃やして、毒ガスを吸いながら環境も壊しながら、中の金属を売る仕事だったんですけど、これからはその工場があれば、落ちているものすべてがお金なんです。
みんな掃除し始めるんです。
それを工場に持っていくことができる。」

松田
「そういった意味では、今後もやっぱりゴミを使った作品を作り続けなきゃいけない?」

アーティスト 長坂真護さん
「ある意味、ごみを使った作品が作れなくなったら、僕のミッションはゴールなんです。
こういう作品を見て、何十年後に“え?プラスチックのゴミ?”“プラスチックって捨ててたの?”みたいな。
“変なの”と言われる時代を目指していきたいし、そこは絶対来るんです、そういう明るい未来は。
そこまで行くプロセスの間で努力した人間の1人の一部になりたい、アーティストとしてなりたいなと心から願っていて、そういうミッションで僕の人生を全うしたいなと思っています。」


藤田
「『ごみを使った作品が作れなくなったら目標達成』というメッセージ、究極ですよね。
そこに、自分の人生を賭けようという覚悟が伝わってきました。」

松田
「世界を変えたいという覚悟がすごい伝わってきました。
非常に行動力のある方で、『行動こそ真実』と話していたのがとても印象に残っています。
長坂さんは『問題解決型のアーティストになりたい』ということで、アーティストとして持っている発想力と発信力で、現地の人たちとともに問題を1つずつ解決していこうという非常に前向きな姿勢を感じました。
長坂さんは、今年の夏もガーナに滞在して活動する予定だということです。
日本では今年8月、TICAD=アフリカ開発会議が横浜市で開かれ、アフリカの開発や支援について話し合われる予定です。
私も草の根レベルで何ができるのか、何かしたいなと思わせるような取材でした。」

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