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2018年8月27日(月)

変わりゆくバンコクの屋台通り

山澤
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
観光地として日本人にも人気のあるタイの首都・バンコクですが、けさは、その観光スポットがこの夏、様変わりしたという話題です。」


丹野
「『世界で最もおいしいストリートフードが食べられる都市』とも言われているバンコク。
街のいたる所にある屋台は多くの観光客で賑わっていますが、バンコク中心部の都市開発の影響で2016年におよそ16,000あった屋台は、今月(8月)の調査で9,000余りと、その数が急速に減っているようです。」

山澤
「そして今月、『バックパッカーの聖地』として有名な屋台の通り、『カオサン通り』でも規制が始まりました。
アジア総局の海津悠紀カメラマンの報告です。」

規制に揺れる バンコク屋台通り

リポート:海津悠紀カメラマン(アジア総局)

深夜、バンコクの通りで、あわてて屋台の撤去を始める人たち。
今月に入り、許可された場所以外で営業する屋台に対する当局の取り締まりが強化されています。

バンコク都庁 サコンティ副知事
「ここでは屋台の営業は禁止で、販売行為は違法です。
もし何か起これば、都庁は規制もせず営業を許した責任を負ってしまいます。」

バンコクのカオサン通り。
街の観光スポットが近いことから、1980年代に若い旅行者向けの安い宿や店が増え始めました。
近年は300メートルほどの通りに300以上もの屋台が並ぶ、観光客に人気の場所となっていました。

それが今月。
通行の妨げや火災の危険性を理由に、屋台の営業が厳しく規制されることになったのです。
規制の影響で観光客は減り、屋台目当ての団体客も見られなくなりました。

タクシー運転手
「観光客はここに来ても、すぐに別の場所に行ってしまいます。」

日本人観光客
「屋台とか東南アジアにありそうなマーケットがいっぱいあるのかなと思って期待して来たんですけど、なかったのでびっくりしました。」

バンコク当局は、当初、全面的に屋台を禁止する方針でしたが、屋台側からの反発もあり、現在は暫定的に夜6時から12時までに限り営業を許可。
しかし、営業場所は歩道のみに限定されています。

観光客
「ベリーグッド・パッタイ。
バンコクで一番うまいよ。」

カオサンで20年近く麺料理の屋台を営んできた、ソムデイ・ポンマリンさんです。
利益を出すため、先月(7月)までは1日20時間以上営業をしていましたが、今、許されるのはわずか6時間。
収入は半分以下に減り、ソムデイさんは、ここを離れることも考えています。

屋台 経営 ソムデイ・ポンマリンさん
「日々を生きるのに精いっぱいです。
当局には、この通りの屋台がなくなると観光客も来なくなることを理解してほしい。」

カオサンのシンボル、屋台。
その規制に、屋台を経営する人たちは危機感を強めています。
15歳のころからカオサンの屋台で働く、チョンナパー・ティエンソワンさんもそのひとりです。
歩道での営業が禁止されている昼間から、駐車場を借りて屋台の営業を続けています。

屋台 経営 チョンナパー・ティエンソワンさん
「私が生まれたのはあそこです。
屋台は“第2の家”なんです。」

現在、200を超える屋台からなる組合の運営もしているチョンナパーさん。
屋台の規制に関心を持ってもらおうと、人出が少なくなった通りの様子をソーシャルメディアを使って毎日発信しています。

屋台 経営 チョンナパー・ティエンソワンさん
「屋台はカオサンの象徴です。
ここで屋台をするのは、私たちの自由です。」

規制が始まって3週間がたったこの日、チョンナパーさんら組合メンバーが抗議の行進を行いました。
向かった先は、バンコクの屋台を監督するバンコク都庁です。

組合側は営業時間の拡大を求めましたが、当局は「規制について住民や観光客から理解を得ている」とし、要求は認められませんでした。
実際、国内では歩道や道路を占有する屋台への不満も多く、ネット上には当局の規制強化を支持する書き込みが目立ちます。

この屋台をめぐる対立を、冷静に見つめる人がいます。
カオサンで旅行会社を経営する、丸山和広(まるやま・かずひろ)さんです。
20年ほど前に通りを初めて訪れて以来、その移り変わりを見守ってきました。

かつては旅の情報を交換する場所でもあったカオサン。
スマートフォンで情報がすぐ手に入るようになり、その役割も失われつつあります。
安い宿の代わりに増えたのが、外国人向けのバーやクラブです。
丸山さんはカオサンに繰り返し訪れる旅行者が、街の変ぼうに驚く姿をよく見かけるといいます。

旅行会社 経営 丸山和広さん
「8年前だと、全然雰囲気が…。」

日本人観光客
「にぎやかで、すごい楽しかったんですけど。」

旅行会社 経営 丸山和広さん
「今、見ました?カオサン。」

日本人観光客
「がっかり。」

旅行会社 経営 丸山和広さん
「ちょっとね、全然、雰囲気変わっちゃいましたね。」

日本人観光客
「さみしいですね。」

屋台に対する規制は強化されていますが、丸山さんは、街の開発が進む中ではやむをえないことだと考えています。

旅行会社 経営 丸山和広さん
「時代の流れでしかたがない、受け入れなくてはならないのかなと。
それぞれの時代に合わせたカオサンを目に焼き付けて、それぞれの時代のカオサンを楽しんでいけばいいのかなとは思っています。
やはり屋台はあったほうが、カオサンらしいですよね。」

カオサン通りを照らし続けた屋台。
時代の移ろいとともに、この夏、苦境に立たされています。

カオサン通りの規制 当局の狙いは

山澤
「ここからは、取材したアジア総局の海津カメラマンに聞きます。
世界でも有名なバンコクのカオサン通り、今回そこに大胆なメスを入れた当局の狙いは何なのでしょうか?」

海津悠紀カメラマン(アジア総局)
「2014年に発足した軍主導の現政権は、渋滞などの社会問題を解決することにより、バンコク中心部の再開発を速やかに進めようとしています。
バンコクでは、道路や歩道で営業する屋台が渋滞を引き起こす要因にもなっていて、交通量が多い通りを中心に取り締まりが強化され、屋台が集まる場所が次々になくなっています。

カオサン通りは観光客に人気があるため、今まで大規模な規制を受けてきませんでしたが、これまで進めてきた屋台を規制する方針に例外はないという当局の強い姿勢を示したと言えます。」

どうなる カオサン通りの屋台

山澤
「屋台側の反対もあり、厳しい規制は暫定的に緩和されたようですが、カオサン通りの屋台、今後、どうなっていくのでしょうか?」

海津カメラマン
「屋台の規制が始まり1か月がたとうとしていますが、屋台側と当局の話し合いはまだ続いています。
タイが国として重視している観光政策の1つに、外国人観光客の誘致が挙げられます。
カオサン通りは外国人観光客からの知名度も高く、通りにならぶ屋台は貴重な観光資源になってきました。
バンコク当局は、ほかの屋台と同じように強制的に排除することも視野に入れていましたが、屋台側との対立という悪いイメージを避けるため、譲歩する姿勢を見せているようです。
今後は再開発した場所に屋台を集め、午前から営業を認めるなど、屋台側と妥協点を探りたいとしています。
近い将来、人気の観光スポットカオサン通りから名物の屋台が消え、昔ながらのバンコクの風情はなくなってしまうのか。
東南アジア有数の観光地は、大きな転換点を迎えています。」

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