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2018年5月21日(月)

コンゴ民主共和国 高まる人道危機

深刻な人道危機に直面しているコンゴ民主共和国。
今月(5月)ユニセフ=国連児童基金は40万人の子どもが深刻な栄養失調で命の危険にさらされていると発表しました。
その背景にあるのは、1960年の独立以降繰り返される紛争と政治の混乱です。
なぜ悲劇が繰り返されるのか、専門家とともに読み解きます。

山澤
「特集ワールドアイズ。
けさは、アフリカのコンゴ民主共和国の現状についてお伝えします。」

丹野
「コンゴ民主共和国はアフリカ大陸の中部に位置し、アフリカで2番目に広い国です。
人口はおよそ7,700万人。

1960年の独立以降、30年以上にわたって独裁政権が続き、各地で繰り返された紛争は、1996年ごろから本格的な内戦となります。
2006年にはカビラ大統領が就任。
一昨年(2016年)12月に任期は終了していますが、選挙を延期して、現在も大統領職にとどまっています。」

山澤
「コンゴ民主共和国では今、大統領選挙が行われない不満が高まり、国民の半数が信者というカトリック教会が主導するデモが起きています。
そしてデモに対し、政府が治安部隊によって弾圧する異例の事態となっています。
まずは、その様子を伝えるイギリスBBCのリポートをご覧ください。」

コンゴ民主共和国 政府が教会を弾圧

広大な土地を、群雄が割拠する国で、カトリック教会が戦う時だと信者に訴えています。
神父は、ユダがキリストを敵に売り払ったことを例に挙げ、腐敗を警告します。
国民の半数近くがカトリック教徒のコンゴでは、教会が市民に強い影響力を持っています。

記者
「政治の腐敗が進むコンゴでは、教会が市民活動を担うようになってきました。」

しかし、その代償として、教会は弾圧を受けています。

キンシャサにある教会のデモ行進に、警察が発砲。
これにより24歳の修道女が死亡しました。

殺された修道女の母親
「事件のことを聞いて現場に駆けつけた時には、娘はすでに息絶えていました。
教会の敷地内で死んだのです。」

神父
「教会は決して黙ってはいません。
いかなる勢力も、我々を恐怖におとしいれることはできないのです。」

しかし、暴力が勝利を治めてきた国で、平和的なデモは成功するのでしょうか。
ベルギーから独立して以降、アフリカで悪名高きモブツ大統領による30年の独裁政権、そしてカビラ一族の権力闘争まで、コンゴでは紛争が続きました。
勝つのは、常に武器や富を持つ者でした。
歴史的瞬間を迎えようとしているコンゴ。
数百万人が家を追われ、子どもは飢餓で苦しみ、武装勢力は弱者を攻撃しています。
今回の取材で、教会が主張する政府の抑圧について、大統領の側近に話を聞くことが出来ました。

記者
「政権が道徳的にも腐敗しているため、神父たちが、市民の指導者的役割を果たしていると言えるのでしょうか?」

コミュニケーション・メディア相 ランベール・メンデ氏
「政治の腐敗が原因で、神父が指導者的な役割を持つようになったのか分かりません。
彼らにそんな役割はありません。
政治的な力を持ちたいのであれば、選挙に出て、国民に自分たちの主張を話すべきです。」

アフリカ第二の大国では、政治的転換には常に暴力が伴いました。
しかし、アフリカの民主主義の発展とコンゴの国民に、今、一番必要となるのは、平和的な変革なのです。

コンゴ民主共和国 カトリック教会の影響力

山澤
「スタジオには、ゲストをお招きしています。
アフリカ現代史に詳しい明治学院大学名誉教授の勝俣誠さんです。
よろしくお願いします。
今、VTRで、コンゴ民主共和国では、大きな影響力があるカトリック教会、この人たちが政権に対してデモをして、政権が攻撃を行ったというニュースだったんですけれども、この情勢はどう見たらいいでしょうか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「かなり深刻だと思います。
カトリックだけでなく、プロテスタントもこの国にはいますけども、カトリックの影響はすごく強い。
植民地支配っていうのはベルギーですけれども、やはり支配と同時に宣教師が行っているわけですから、そういう意味では、伝統的にカトリックというのは、社会的に信頼を受けているということですね。
これは1990年代初頭にも、やはり民主化がこじれた時、宗教、カトリック勢力が平和な、いわゆる民主化移行といってました。
だいたいご覧になる事件を見ていて、この国っていうのは1960年の独立以来、3つの大型PKOが入っているという意味では、今回の大統領3選阻止というのは、かなり深刻だと思っています。」

独立から約60年 繰り返す紛争の背景

山澤
「その多数派のカトリック教徒の人たちが、政府に対して反旗を翻すような動き、これはある意味、新たな段階に入ったのかなとも言えると思うんですけれども、

こちらにあるように、コンゴ民主共和国、ベルギーから独立して以来、内戦や紛争を繰り返しているということなんですよね。
独立から60年以上たっても、国が安定しない理由は何なのでしょうか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「これ、僕は歴史的な要因が大事だと思うんですね。
もともとベルギーの植民地時代に、新しい国づくりをするコンゴ人を育てなかったと思うんです。」

山澤
「ベルギーが?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「ですから、初代の首相のルムンバというのは、最後は殺された方なんですけども、彼自身ももともと郵便局員で、その後はビール会社のマネージャーやっていたんですね。
ということは人手不足のまま、独立をさせたけども、経済的な権益はベルギーは渡したくなかったということがあります。
また、冷戦時代は、やはり米ソに翻弄されたということで、国がそのまま、建国以来、政情不安を引きずっているのが現状です。」

コンゴ民主共和国 人道危機の背景

山澤
「コンゴ民主共和国の情勢を見る上で、3つのポイントを挙げてもらいました。
1つ目が『広大な国土』。
国の広さが混乱の原因となっているのでしょうか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「そうですね。
コンゴという国は、アフリカで2番目に面積が大きいんですね。
1番目がアルジェリアです。
ほとんどサハラ砂漠ですけれども、そういう意味で、領域支配ってのは、我々日本人には分かりにくいですが、十分な行政が、末端まで、国境まで行き渡ってないと。」

山澤
「広いからですね。」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「川が、ナイル川についで、コンゴ川という2番目の川ですけどね、非常に広大な。
また、ご覧の通り、9つの国に囲まれているわけですね。
ということは、9つの国のどれかが政情不安だと影響を受けるし、コンゴが政情不安だと周りの国に波及すると。
国境があってないような部分があると思います。
カナンガってありますけども、私も行ったことがありますが、今はもう普通の人は行けません。
これは、やはり地域の紛争が悪化して、警察との対立もあって、ここはもともと日本の軽井沢みたいなところですけれども、今、その辺が政情不安で行けないと。
ということで、勘ぐれば、選挙を延ばすための1つの口実で、政府も必ずしも無関係ではないと、僕は思っています。」

山澤
「そして、次のポイントですが『鉱物資源』。
コンゴ民主共和国と言いますと、レアメタルが豊富で、銅やダイヤモンドも取れるということですけれども、こういう鉱物資源も争いの種になっているということですか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「コンゴ人自身が、こんなに鉱物資源があるからこそ紛争があるんじゃないかっていうくらいで、やはり地図をご覧になると分かりますけど、主にさっきのカナンガですか、南部と東部に紛争が集中しているのは、そこはダイヤモンドとかウラニウムとか、ウラニウムは広島の原子爆弾の材料にも使われたんですけれども、あとはコルタン、タンタル、これはスマートフォンの部品になるというような形で、紛争地域と、いわゆる資源地図が一致しているというのが、コンゴの紛争地域の特徴だと思います。」

山澤
「やはり争いになるということは、こういった資源の恩恵が還元されていない、住民に行き渡っていないということなんでしょうか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「僕はそう思います。
大体一般論ですけどね、資源というのは原料のまま輸出してしまうと、雇用効果とか、経済効果とかがないわけですよね。
その意味では、国民が透明なお金の使い方をチェックしにくいんですね。
原料のまま輸入してしまうと。
コンゴはもともと豊かな国なんですね、農業的に、雨も多いし森もあるし。
それが国民に行き渡らない。
家族農業が発達して伸ばせれば、十分に所得効果はありますけど、鉱物資源というのは紛争地域で違法に取り引きしたり、国家が横流ししているというのが現状です。」

山澤
「そして3点目は『国際社会の関与』ということですけれども、先月(4月)には、50か国あまりが参加して支援国会合も開かれまして、560億円あまりの支援が決まったということなんです。
それでも不十分だということなんですけど、国際社会の関与があまり見えてはこないんですが、なぜ関与が薄いんでしょうか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「これは一般論で、僕ら先進国は、シリア問題とか次から次へと北半球の問題を見てしまいます。
僕は欧米自身が本気で3選を阻止するという力があるかどうかというのは疑問な部分があります。
それは、中国というのが2000年代以来すごく進出していますから、中国は内政干渉しません。
その意味では、ある程度、現政権は強いことを言っても本気で私たちの民主化を追及する力はないだろうと、足もとを見てる部分はあると思います。」

山澤
「コンゴ民主共和国は、冒頭でもお伝えしました、子どもたちの飢餓の問題、そして最近ではエボラ出血熱の発生も報告されていて、混乱が収束するメドが立っていないように思えるんですけど、今後何が必要でしょうか?」

明治学院大学 名誉教授 勝俣誠さん
「まず一番大事なことですけど、コンゴの人たちは独立以来、自分たちの歴史を作っていないっていうのが、第1の強調したいことなんですね。
その意味では、今の民主化運動というのは、自分たちは国づくりをやりたいんだという強烈な、自分たちの国は自分たちが管理するということで、3選阻止の力っていうのは、やはり大事にしなければいけない。
2番目はAU、アフリカ連盟も頑張らなければいけない。
3番目は一番大切な点かもしれないけど、さっき申し上げたスマートフォンの材料というのは違法に使われたかもしれない。
ですから、私たちは倫理的な消費という意味では、アフリカのわれわれが使っている原料の中に、倫理的な物かどうかということを考えながらユーザーとして、消費者として国際問題に向かい合う、それが私は必要だと思っています。」

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