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2018年2月5日(月)

米政権に影響力 「福音派」とは

塩﨑
「2年目の政権運営をスタートさせ、11月には中間選挙を控えるトランプ大統領。
けさの特集・ワールドEYES(アイズ)は、今後のトランプ政権の行方を左右する“ある支持層”についてお伝えします。」

藤田
「トランプ大統領の支持率は、現在、およそ40%で推移していますが、その強固な支持を背景に政権の政策決定に影響を与えているとされているのが、『キリスト教福音派』と呼ばれる人たちです。
聖書を重んじるプロテスタントの一派で、人口の4分の1を占め、アメリカ最大の宗教勢力ともいわれています。」

塩﨑
「去年(2017年)12月、世界に衝撃を与えた、トランプ大統領による『エルサレムのイスラエル首都宣言』を後押ししたとされる『福音派』。
どんな人たちで、政権に対し、どれほどの影響力を持っているのか。
ワシントン支局・西河篤俊記者の報告です。」

トランプ政権支える キリスト教福音派

リポート:西河篤俊記者(ワシントン支局)

先月(1月)、首都ワシントンで開かれた大規模な集会。
人工妊娠中絶に反対する人たち数千人が全米から集まりました。
その多くが、「福音派」の人たちです。

大型スクリーンに映し出されたトランプ大統領の演説に聞き入っていました。

トランプ大統領 支持者
「今までの政権は『福音派』の人々を無視していましたが、トランプ氏は違います。」

「福音派」とはどのような人々なのか。
バージニア州南部にある福音派の教会を訪ねました。

まるでコンサートのようですが、これが一般的な福音派の礼拝の様子です。
この教会に通う信者はおよそ2万人。
こうした大規模な教会は「メガチャーチ」と呼ばれ、全米各地に広がっています。
「福音派」が重視しているのは、聖書の内容を忠実に守ることです。
「福音派」は聖書の一節を「神がイスラエルをユダヤ人に与えた。世界が終末を迎える時、エルサレムの地にキリストが再来する」と解釈しています。

父親がこの教会を創設し、福音派の代表的な指導者の、ジェリー・ファルウェル・ジュニア氏です。
トランプ大統領から教育長官のポストを打診されたこともあります。
トランプ大統領は当初、福音派の支持を得ようとしていたものの、福音派のことをあまり理解していなかったといいます。

福音派指導者 ジェリー・ファルウェルJr.氏
「トランプ氏に『神にゆるしを求めたことがあるか』と聞いたら『何のために?』と言いました。
福音派は、すべての人は罪人であり、神のゆるしを必要としていると考えています。
トランプ氏はその質問をそのようには受け取りませんでした。
過去の罪を認めさせようとしていると受け取ったのです。」

しかし、トランプ大統領は、福音派が重視するアメリカ大使館のエルサレムへの移転などの公約を掲げることで、福音派の8割以上から支持を得ることに成功しました。

福音派指導者 ジェリー・ファルウェルJr.氏
「トランプ氏は福音派に好かれるための発言をするようになりました。
福音派も自分が助けるべき人々だと気づき、われわれの考え方を学んだのです。」

トランプ政権は福音派のことをどのように見ているのか。
みずからも福音派だというホワイトハウスの副報道官は、トランプ大統領を支えているのは福音派だと明言しました。

ホワイトハウス ギドリー副報道官
「福音派は大統領にとって生命線であり、トランプ氏を大統領にしたと言えるのです。
彼は歴代の大統領とは違い、福音派が望む政策を実現しています。」

影響力を高める福音派。
今回、アメリカ最大の福音派テレビ局内での撮影が許可されました。
世界中に福音派の教えを広めることが目的で、全米各地のほか、58の原語で世界150以上の国に情報を発信。
世界で、3億5,000万人が視聴しているといいます。

このテレビ局を立ち上げた、会長のパット・ロバートソン氏。
もともと牧師で、歴代のアメリカ大統領とも交流がある、福音派の大物です。

福音派のテレビ局 会長 パット・ロバートソン氏
「トランプ大統領は、わが国が直面する重要案件に注視しています。」

トランプ氏とも長年の友人で、大統領就任後もたびたびインタビューしています。

福音派のテレビ局 会長 パット・ロバートソン氏
「福音派の83%があなたに投票しましたね。」

トランプ大統領
「福音派の意見を聞かせてほしい。
今後はもっと主張できるようになる。」

トランプ大統領は、歴代のアメリカ大統領と異なり、福音派の要望に真剣に耳を傾けてくれていると感じています。

福音派のテレビ局 会長 パット・ロバートソン氏
「歴代の大統領は、福音派が信仰する自由な精神を受け入れるのに消極的でした。
トランプ氏はそれを理解した初の大統領です。
彼のDNAがそうさせているのでしょう。」

複数の離婚歴など、福音派が重んじるキリスト教の保守的な価値観とは異なるようにも見えるトランプ大統領を支持する理由。
それは、忘れられた存在だった福音派が求める公約を実現しようとする姿勢にあるようです。

「あなたは100%トランプ大統領を支持しますか?」

福音派のテレビ局 会長 パット・ロバートソン氏
「トランプ氏には欠点がありますし、われわれもそれを理解しています。
重要なのは長所が短所を上回るかで、その答えは“YES”です。」

支持固めを図りたいトランプ大統領と、キリスト教的価値観に基づく政策を求める福音派。
政治と宗教に詳しい専門家は、両者の利害が一致していると指摘しています。

ジョージメイソン大学 マーク・ロゼル教授
「共通の宗教観や理解に基づいた密接な関係とは思いません。
お互いを好きではないかもしれないが、お互いに必要としています。
いわば“政略結婚”のような関係です。」

米政権に影響力 福音派の存在

塩﨑
「取材にあたったワシントン支局・西河記者に話を聞きます。
トランプ大統領を下支えしているともいえる『キリスト教福音派』ですが、政権はその支持がなければ、もたないということなのでしょうか?」

西河篤俊記者(ワシントン支局)
「そういえると思います。
今やトランプ政権にとって福音派の支持は不可欠です。
ホワイトハウスの副報道官がそれをはっきりと認めたのは、正直、驚きました。
福音派というのは、聖書を重んじるという点では共通しています。
ただし政治的な考え方はさまざまで、住む地域や年齢・階級も幅広く、白人が大多数ですが、最近では白人以外の人種の人数が増えているともいわれています。
つまり、それだけアメリカ社会に草の根的に浸透しているということだと思います。
ですから、その影響力というのはトランプ政権になって始まったことではなく、歴代の大統領にとっても重要な存在であったことは間違いありません。
その証拠に歴代の大統領も、選挙期間中はエルサレムを首都と認めたり、大使館を移転すると表明するなどして、福音派を強く意識していたとみられます。」

トランプ政権に不可欠 福音派からの支持

藤田
「とはいっても、歴代の大統領は、就任後、結局、大使館の移転を見送る判断をしてきましたよね。
トランプ大統領はなぜ、歴代の大統領と異なる判断をしたのでしょうか?」

西河記者
「トランプ大統領にとっては、国際社会からの猛反発よりも、国内の重要な支持基盤を優先したということだと思います。
トランプ大統領としては、福音派と、アメリカ社会に強い影響力を持つユダヤ系の富裕層の支持をつなぎとめる必要があったのだと思います。
就任から1年がたったトランプ大統領ですが、支持率は40%前後で推移しています。
トランプ大統領は、新たな支持層を開拓するよりも、この今ある40%の支持層を手放さないことを重要視していると思います。
今年(2018年)は中間選挙の年で、大統領としての初めての審判を迎えます。
中間選挙は投票率が低くなる傾向にあり、その中で福音派という強い支持基盤はカギとなります。
トランプ大統領としては、『自分は歴代の大統領とは違う。福音派のことを重視している』とアピールするためには、エルサレムを首都と認める判断は格好の機会だったといえます。」

今後の政権運営 福音派寄りか

塩﨑
「トランプ大統領とキリスト教福音派との関係は、今後、政権運営においてどのような影響を与えると考えられますか?」

西河記者
「トランプ大統領としては、福音派の支持をつなぎとめておくために、より福音派にアピールするような政策を打ち出す可能性があると思います。
ポイントは2つあります。
1つ目は、イスラエルのアメリカ大使館の移転についてです。
先月、ペンス副大統領は、初めて移転の時期に言及し、来年(2019年)末までに移転すると明らかにしました。
今後、移転に向けた動きを加速させればパレスチナ側が反発するのは確実で、中東和平の実現はいっそう遠のくことになります。

2つ目は、イランの核合意をめぐる判断です。
先週の一般教書演説でも、トランプ大統領は、イラン政府を強く非難し、核合意についても、『欠陥がある』とあらためて言及しました。
イランは福音派が支持するイスラエルと敵対関係にあり、福音派の中では核合意の破棄を求める声が根強くあります。
早ければ4月にも、再び核合意を維持するかどうかトランプ大統領は判断することになります。

先月には、渋々維持した上で『これが最後だ』と表明していました。
しかし次の判断では、福音派などの支持基盤にアピールするため、『破棄』という選択肢を取る可能性もあります。
しかし、そうした内向きの判断は、イランの反発、中東のいっそうの混乱という危険性をはらむことになります。
そして、国際社会でのアメリカの存在感、影響力の低下につながることは避けられません。
今後のトランプ大統領の内政・外交の両面を見ていく上で、福音派との関係はこれからも注視していく必要があると思います。」

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