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2017年5月15日(月)

宇宙戦争2.0~攻撃対象となる人工衛星

アメリカ軍が、シリアの軍事施設へ向けて発射したミサイル。
その精密な攻撃を可能にするのが、人工衛星です。
GPSやデジタル通信を担い、交通機関や金融システムなどを支える人工衛星は、いまや、私たちの社会にとって欠かせない重要な情報インフラです。
しかし、各国の弾道ミサイル開発が進む中、人工衛星は攻撃に対して余りにぜい弱であるため、関係国は懸念を強めています。

アメリカ戦略軍 ハイテン司令官
「宇宙開発が進めば、衝突に備える必要がある。」

衝突の危機は迫っているのか?
特集・ワールドEYES(アイズ)、けさは人工衛星をめぐる攻防について、最新の情勢をお伝えします。

攻撃対象となる重要な人工衛星

塩﨑
「けさは人工衛星の課題について、専門家と共に掘り下げます。」

藤田
「スタジオには、アメリカの軍需産業や人工衛星について詳しい立命館大学教授の藤岡惇さんをお迎えしました。」

塩﨑
「アメリカ軍の司令官は『衝突に備える必要がある』と言っていましたが、昨日(14日)も北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。
こうしたなかで、人工衛星への脅威はどれほど迫っているのでしょうか?」

立命館大学 教授 藤岡惇さん
「人工衛星は、我々の日常生活でとても使うことが多いです。
カーナビ、気象衛星、気象情報、全部そうなんです。
それから戦争システムでも重要な役割を果たします。
しかし、防衛するのは難しい代物で、攻撃の対象になりやすいと思っています。」

藤田
「もし、人工衛星が攻撃されて機能が停止したらどうなってしまうのか?
専門家の研究を基にしたアメリカCNNの想定映像をご覧下さい。」

人口衛星が無力化 悪夢のシナリオ

ニューヨーク、午前10時。
ロサンゼルス、午前7時。
朝のラッシュで活気ある街が、突然停止します。
テレビが消え、インターネット接続は遅くなり、ATMが誤作動を始めます。
街が混乱しはじめたころ、光の速さで、サイバー攻撃がひそかに行われます。

ニューヨークの正午。
ロサンゼルスの午前9時には、GPSからの正確な時間が頼りの金融市場が凍結。
途切れていた携帯電話は不通に。
コンピューターの不調でないと分かると、混乱は恐怖に変わります。
GPSの時間で切り替わる信号機は、初期設定の赤になり、交通は完全にストップ。
航空機は、ナビゲーションや気象データが失われ、飛べません。
発電所や水処理施設も、機能を停止し始めます。
国が何らかの攻撃を受けていることが明らかとなり、国民は軍の素早い行動を期待します。

しかし、世界で最も偉大なアメリカ軍でさえ、対応は困難です。
軍用機もドローンも地上との通信が遮断され、GPSが誘導するスマート爆弾は使用不能に。
軍艦は、司令官との連絡が取れません。
悪夢のシナリオに地上は大混乱。
敵は主なインフラに大規模なサイバー攻撃を仕掛け、我々の人工衛星を無力化し、破壊します。
これが、初めての宇宙戦争です。

これは空想ではありません。
アメリカが今、緊急に備えるべき、ごく近い将来の話です。
2015年、国防総省は「宇宙戦の準備は整っていない」と懸念を表明。
数か月後、それが証明されます。
アメリカ軍は、衛星が狙われた机上演習で惨敗したのです。

アメリカ戦略軍 ジョン・ハイテン司令官
「すぐ負けました。
ミサイル攻撃があれば、さらに悲惨です。」



宇宙に向けて発射されるミサイルは、地球上の私たちの生活を管理する繊細な人工衛星に、修復できないほどのダメージを与えるかもしれません。」

攻撃対象となる重要な人工衛星

塩﨑
「人工衛星を攻撃されると、まさに手も足もでない状態になりますね。
どのような人工衛星が攻撃対象になるのでしょうか?」

藤岡惇さん
「GPS衛星と通信衛星が大事だと思います。

GPS衛星は米軍が開発したのですが、1日に地球を1周するように回り、特に軍事面では非常に重要な役割を果たしています。
それから、証券取引所などもコンピューターの時間をGPS衛星によって一致させています。
そこが狂うとコンピューターは停止してしまう。
もう1つは通信衛星です。

多いのは上空100キロから1,000キロくらいのところです。
それから3万6,000キロ。
ここに密集しているわけです。

これが地球上の通信を、軍事通信も含めてコントロールしています。
3万6,000キロというのは、月までがおよそ38万キロですから、だいたい10分の1くらいです。
ここまでの空域におよそ1,500機の人工衛星が密集しているんです。」

塩﨑
「これらの衛星を具体的にどのように攻撃するのでしょうか?」

藤岡惇さん
「攻撃する方法は5つあります。

容易なものから破壊力が高いものまでありますが、まずは『サイバー攻撃』。
サイバー攻撃を受けると衛星との通信ができなくなり、衛星からの情報が伝わらなくなる。
2つめは『弾道ミサイル』を直接当てる方法です。
これは中国なども強化していて、2007年には860キロくらいの通信衛星を、自国のものだったんですがミサイルを当ててデブリを増やしました。
最近では、通信衛星が飛んでいる3万6,000キロの静止軌道までミサイルを飛ばすという実験をしました。
ただ、もちろんまだアメリカが圧倒的に強いわけです。
アメリカの弾道ミサイルの方が力を持っているのは間違いないです。
3つめは『レーザー兵器』です。
これは光の速さで飛ぶので、弾道ミサイルよりはるかに早く、長時間当てることが出来ます。
そして、物理的破壊をするわけではないので、デブリも少ないという利点もあります。
レーザー兵器がこのために開発されています。
4つめは『キラー衛星』。
最近はミニ衛星といって、サッカーボールくらいの大きさのものも開発されています。
これをひそかに打ち上げておいて、いざという時には敵の衛星の近くで爆発させ、重要な軍事衛星を停止させるというものです。
5つめは『核兵器』です。
実際に宇宙空間で核兵器を使ったら、強い破壊力を持つということが分かっています。
1962年ころに米ソ共に何度も実験していて、それを1,000キロくらいのところで爆発させると、まず電磁パルス波が広がって、赤いオーロラが広がって、周囲を飛んでいる衛星がダウンしていくということが分かった。
それだけではなく、そこに放射能の帯が生まれることが分かった。
放射能の帯は半年から1年ほどその場に残り、そこへ衛星が動くと、ゆっくりとダウンしていきます。
こういう核兵器を使う方法もあります。」

塩﨑
「こうした攻撃から、どうやって人工衛星を守ることができるのでしょうか?」

藤岡惇さん
「これに、アメリカ軍は3つの対抗策を考えています。

1つめは『衛星の表面を強化すること』です。
戦車のように装甲を厚くしていくということですが、経済的には割に合わないです。
2つめは『衛星が逃げる』。
敵のミサイルが来た場合に軌道を変えて逃げるということですが、たくさんのミサイルが来ればうまくいかないだろう。
3つめは、仮に衛星が破壊された場合には、すぐに『代わりの衛星を打ち上げる』。
もしくは民間用の衛星を代用するということです。
これも、お金はとてもたくさんかかりますが、実際にはなかなかうまくいかない。」

塩﨑
「そうなると、根本的な問題解決には何が必要なのでしょうか?」

藤岡惇さん
「こういうやり方を維持していくと、攻撃する側が有利なんです。
コストが安くて、軍事的な効果が高い。
そういう意味でも軍拡はどんどん進んでいく一方であるということなんです。
ですからやはり、前の考え方を変える、宇宙衛星に兵器をのせるとか、宇宙の軍事化を制限する方向に持っていく以外にはないというふうに思います。」

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