BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

池畑キャスターの視点 ポーランド首相に聞く
“ロシアとタンゴを踊る日”は来るのか

インタビューで本当に「問われる」のは、取材者、つまり質問をする側である。
もちろん、視聴者や読者にとって重要なのは、質問に答える側であるインタビュー対象の人たちだ。政治家、ミュージシャン、もしくは無名の市井の人物であれ、答える側がインタビューでは主役だ。だが、そうした主役たちが通りいっぺんでない、深みのある言葉を紡ぐか、理想をいえば普段は意識もしていなかった本音がインタビューで発せられるかは、ひとえに、取材者、もっと具体的にいえば取材者の下調べにかかっている。もうだいぶ長いこと質問をする側をなりわいとしてきたが、限られた時間内で行う、撮り直しのきかないインタビューは、今でも毎回緊張する。自分が「問われる」からだ。(インタビューの詳細は、後半に記載)。
(国際報道2020 池畑修平キャスター)

払拭されない“ロシアへの不信感”

モラウィエツキ首相

来日するポーランドのモラウィエツキ首相にインタビューできることになり、私は下調べの第一歩として、駐日ポーランド大使館のホームページを開いてみた。まず出てきたのが、今年の元日付けで掲載されたモラウィエツキ首相の声明。
長く、重かった。
内容の9割が、ロシア、そしてプーチン大統領の第2次世界大戦をめぐる歴史認識への批判であったためだ。出だしからして、こうだ。

「20世紀、世界には、病的な全体主義思想の名目で虐殺された、数億人もの人々の想像を絶する苦しみと死がもたらされました。
ナチズム、ファシズム、コミュニズムが原因の大量死は、私たちの世代の人間にとって自明の事柄です。
こうした犯罪の責任が誰にあるのか、そして、いかなる同盟が、第二次世界大戦という人類史上最も殺人的な対立の端緒となったのか、もまた自明の事柄です」
(駐日ポーランド大使館のホームページより)

当時、ポーランドは、秘密協定を結んだナチスドイツとソビエトによって攻め込まれて分割統治され、それが第2次世界大戦の引き金となった。地図からポーランドという国家は消えたのである。
そうした苛烈な歴史を背負っているポーランドの首脳であるだけに、モラウィエツキ首相としても歴史認識には鋭敏でいざるを得ない。声明では、プーチン大統領に対する名指しの批判も。

「プーチン大統領は、ポーランドについてたびたび虚偽の発言をしてきました。
それを常に、完全に意図的に行ってきました」
(駐日ポーランド大使館のホームページより)

手を取り“タンゴを踊る日”

ロシア プーチン大統領

事の発端は、プーチン大統領が昨年12月に“第2次世界大戦が勃発した責任の一端はポーランドにもある”という趣旨の発言をしたことだ。こうした主張は、ポーランドとしては断固として受け入れられないという。
ポーランドは、イギリスの離脱で揺れるEU(ヨーロッパ連合)にあって経済の成長ぶりが顕著であり、ドイツやフランスに次ぐ「第2集団」のランナーのように存在感を高めている。そうした伸び盛りといえるポーランドだが、今なお、隣接する大国との歴史認識をめぐる摩擦がなくならない。戦前、戦中の歴史をめぐる対立は東アジアだけではないのだ。
さらに、近年は、ロシアがウクライナのクリミア半島を併合するなど拡張主義とも受け止められる行動をとってきただけに、ポーランドは安全保障上の脅威も感じ、アメリカやNATO(北大西洋条約機構)への依存度を高めている。

「しかし」、とモラウィエツキ首相は、私とのインタビューでクギを刺した上で、深みを感じさせる言葉を紡いだ。

モラウィエツキ首相
「私たちは、本当はロシアを敵視したくはないのです。ロシアには、ヨーロッパのパートナーになってもらいたい。しかし、『タンゴを踊るには2人必要だ』とよく言うように、双方の協調が必要なのです」

ポーランドとロシアが「タンゴ」を踊る日が来るのか。
まずは、歴史認識をめぐるあつれきが解消されるかがポイントになりそうだ。

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