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特集

2021年2月8日(月)掲載

北朝鮮の武器取り引き 潜入ドキュメンタリー

秘密裏に行われる北朝鮮の武器取り引き。デンマークに住む男性が、10年にわたって北朝鮮の闇のネットワークに潜入。隠しカメラによって、その一部始終を克明に記録していました。衝撃のドキュメンタリーの真相に、監督への独占インタビューで迫ります。


小林雄(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター)
「けさの特集ワールドアイズは、北朝鮮の武器取り引きの実態を描いたとされるドキュメンタリー作品をご紹介します。」

高橋彩(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター)
「タイトルは「ザ・モール」。英語でモグラという意味で、そこからスパイという意味にもなります。作品では、デンマークに住むある男性が、みずからスパイとなり、北朝鮮の武器取り引きの現場に潜入。国連の制裁をかいくぐって行われる闇取引を隠しカメラによって明らかにしていきます。」

デンマークに住む元料理人のウルリク。彼こそが北朝鮮の武器取り引きの現場に潜入する「ザ・モール」、もぐらです。
いまからおよそ10年前。ウルリクは、デンマークにある北朝鮮の友好団体のメンバーとなります。団体の中で信頼を勝ち取り、徐々に頭角を現すウルリク。友好団体の国際組織の幹部に登り詰めます。

そして、潜入から7年がたったある日。ウルリクは、団体のトップから北朝鮮に投資する資産家を見つけるよう依頼されます。北朝鮮が、大きなビジネスをする相手を探しているというのです。そこでウルリクたちは、偽の資産家を仕立て上げます。選んだのは、元傭兵で麻薬密輸の前科もある、危険をいとわない男。北欧の石油王・ミスター・ジェームズと名乗らせ、ウルリクは2人で北朝鮮に向かいます。

平壌郊外のスラム街へと連れて行かれた2人。古びたビルの地下に降りていくと、現れたのは、北朝鮮の武器工場の責任者や情報機関の幹部を名乗る人物たちでした。彼らが提示したのがミサイルや戦車など、あらゆる兵器を網羅した極秘のリスト。
2人は、武器取り引きに関する契約を結びます。

その後も、正体を隠したまま、世界各地で北朝鮮の当局者らと商談を重ねる2人。大量の武器をシリアなどの紛争地に売り込もうとする北朝鮮側の計画が、隠しカメラの前で進んでいきます。
北朝鮮による国家ぐるみの武器取り引きの闇。ウルリクたちはその最も深い部分に潜り込んでいきます。

高橋
「まるでスパイ映画のようですが、再現ではなく、すべて実際の取り引きの映像だということで、こんなところを見て大丈夫なのかと思ってしまいました。」

小林
「そうなんです。ドキュメンタリーを見た率直な感想は、あまりにもすべて映像に撮れすぎている。本当にノンフィクションなのか、ということでした。

潜入したのは、デンマークの元料理人、ウルリク・ラーセンさん。自ら進んでスパイになった彼は、まず地元にある北朝鮮の友好団体に入り込みます。これは北朝鮮の政治体制などを賛美する人々の集まりで、国際的な広がりを持つ組織もあるんです。そこを足がかりに次々に人脈を築き、信頼を得ていきます。そして、協力者である偽の『石油王』ミスタージェームズとともに北朝鮮にうその投資話を持ちかけ、武器ビジネスの関係者と接触を続けたわけです。」

高橋
「スパイのプロではない人が、なぜ潜入したのか。正体もばれずに10年間もどうやって続けられたのか。本当に信じられません。」

小林
「疑問がつきないですよね。そこで、この潜入プロジェクトを指揮した監督のマッツ・ブリュガーさんに話を聞きました。」

北朝鮮 武器取り引きの実態は

小林
「これがノンフィクションだとは、ちょっと信じられませんでした。視聴者の疑問にどう答えますか。」

マッツ・ブリュガー監督
「人々が疑ってしまうのは無理もありません。信じられない内容ですからね。しかし、これが10年以上、続いたということを分かってほしいです。時間をかけ、徐々に北朝鮮の人たちと信頼を築いてきた結果、できた作品なのです。北朝鮮の軍需産業に詳しい専門家たちに連絡をとり、入手したものの鑑定を行ってもらいました。国際的な学者や研究者といった人たちにです。」

小林
「そうした検証を経て、監督は、入手したビデオや音声は100%本物だと確信を持っているのですね。」

ブリュガー監督
「はい、確信しています。100%です。」



北朝鮮を欺いた 元料理人のスパイ

ウルリクさんが潜入の提案を持ちかけてきた時、ブリュガー監督は、このプロジェクトが、まさか10年も続くとは思わなかったといいます。

ブリュガー監督
「ウルリクさんは、そのうち、スパイに飽きてしまったり、ほかに興味が移ると、最初、思っていました。しかし、驚いたことに、彼はずっと関わり続けたんです。そして突然、何と言うか、本当にすごいことになったんです。」

小林
「監督は、恐怖とか不安は感じなかったのですか?」

ブリュガー監督
「そうですね、北朝鮮に関わる時は、いつでも注意深くなくてはいけません。しかし北朝鮮がウルリクさんの素性を詳しく調べようとしても、分かることは、彼がコペンハーゲン郊外に住む元料理人ということだけです。」

なぜウルリクさんは10年ものあいだ、正体を暴かれることなく北朝鮮の当局者らをだまし続けることができたのか。ブリュガー監督は、見た目と中身のギャップが潜入を成功に導いたといいます。

ブリュガー監督
「人は見かけに騙されます。あなたが彼に会うと、最初、至って普通だと思うでしょう。しかし、実際の彼は、非常に頭がキレて、すぐれた記憶力を持っています。社交のスキルもとても高いと思います。」



武器の取り引きに執着する北朝鮮

ドキュメンタリーの中で北朝鮮側は、偽の投資家、ミスター・ジェームズと必死に取り引きをしようとしています。ブリュガー監督は、その姿から北朝鮮の困窮ぶりがよくわかると指摘。同時に、大きな危険性をはらんでいると考えています。

ブリュガー監督
「ジェームズは怪しげな人物であり、あくまで一般人です。国家や政府の代表ではありません。彼は北朝鮮に金も渡していません。なのに彼らはジェームズとの取り引きに執着し続けました。つまり制裁は効いていると、思います。それはこの作品からもあきらかです。北朝鮮は武器を誰かれ構わず、個人に対してでさえ、何ら詮索することなく売ろうとしていたからです。私たちは、北朝鮮に生物兵器や化学兵器、核兵器を要求しませんでした。しかし、もし、ウルリクやジェームズのような人が北朝鮮に接触して、そういった兵器を入手できるか尋ねたら、北朝鮮はきっと『ええ、大丈夫です』と答えるでしょう。」

ドキュメンタリーの内容は、デンマーク政府などによって国連にも報告されています。監督は国際的な調査が進むことに期待を示しています。

ブリュガー監督
「国連には北朝鮮に対する制裁についての委員会があり、その専門家たちは、まもなく北朝鮮の軍需産業や武器の拡散行為に関する新たな報告書を発表する予定です。すべてのパネルメンバーがこの作品を見られるので、私たちが暴き出したことがその報告書に加えられるのではと期待しています。」

高橋
「どんなことが暴かれたのか、詳しくみたくなりますね。」

小林
「そうですよね。北朝鮮の武器が本当にこうして売られているとしたら怖いことですが、このドキュメンタリーに対してスウェーデンにある北朝鮮大使館は『すべてねつ造だ』と主張しています。スパイとして潜入したウルリクさんらに対しては、現在、警備をつけるなど身の安全を確保する措置がとられているということです。このドキュメンタリーの全容は、今月21日、BS1スペシャルで放送されます。ぜひご覧ください。」

BS1スペシャル「潜入10年 北朝鮮・武器ビジネスの闇」
[NHK BS1]2021年2月21日(日)【前編】午後10時~【後編】午後11時~

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