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特集

2020年11月12日(木)掲載

軍政下から検閲残るミャンマー 自由な表現を求める映画監督の挑戦

軍事政権が長年続いたミャンマーでは、11月、民主的な選挙によってスー・チー政権を生まれた歴史的な総選挙から5年がたちました。
民主化に伴って、自由な表現を追い求める監督が続々と登場して活気に満ちているのが映画界です。しかしその一方で、軍政下で行われてきた映画内容に対する検閲が依然として存在している現実もあります。そうした壁に直面しつつも、より自由な表現を模索し続ける映画監督の挑戦を取材しました。

(山口大純 国際放送局)
(インドネシア 谷澤壮一郎)

立ちはだかる検閲の壁

ミャンマーの映画監督で作家のアウンミンさんは、「映画とは世の中を変えるのではなく、人々に考えさせるものでなければならない」との信念から、自由な表現での作品を追い求めてきました。

映画「ザ・モンク」より

アウンミンさんが原案と脚本を手がけた2014年発表の映画「ザ・モンク」は地方の小さな寺で修行に励む若い僧侶の成長物語です。この作品では、主人公が女性との接触を試みたり、村人の酒盛りに顔を出したりするなど、仏教徒が多数を占めるミャンマーでは、これまでタブーとされてきた僧侶の人間らしい側面をありのままに描きました。映画作りで大切なのは社会で起きている現実に基づいて物語をつむぎだすというアウンミンさんの姿勢が反映されています。

しかし、「ザ・モンク」はアジアやヨーロッパなどの数々の映画祭に出品され評判となりながらも、ミャンマー国内では発表から6年たったいまも一般公開されていません。その理由が軍事政権時代から続く「検閲」です。民主化により少しずつ緩和されてはいるものの、アウンミンさんは自身の作品が無事に通る見込みはないとして、検閲を受けていません。



海外からの評価で“変化”を目指す

アウンミンさんは、検閲のほかにも直面している問題があります。それが民主化後も変わらない一般の人々の意識です。

映画「ひげの男」より

ミャンマーで迫害されているイスラム教徒の少数派、ロヒンギャをテーマに製作中の新作「ひげの男」。主人公の役者の男性がロヒンギャを演じるためひげを生やしたことから徐々に疎外されていく様子を描きました。
ミャンマーの人々の中に根強く残るロヒンギャの人たちへの差別や偏見から、アウンミンさんは映画が受け入れられず、上映は難しいと考えています。そこで、まずは海外の人々に見てもらおうと、ヨーロッパ在住のプロデューサーとともに国際映画祭への出品を目指しています。

ヨーロッパ在住のプロデューサー
「いつかミャンマーでも危険なく公開できることを願います。これらの映画がミャンマー社会でも価値あるものだと信じています」

さまざまな制約と向き合いながら、アウンミンさんはこれからもミャンマーの新たな映画作りをけん引していきたい、今後も問題を恐れず自分の表現を最大限に取り組んでいくと考えています。

アウンミンさん
「自己表現する人生の中で経験してきた悔しさや不満、怒り、忘れたくても忘れられないことなどが映画の中から出てきます。映画は人々を考えさせることができると信じています」

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