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特集

2020年8月27日(木)掲載

コロナ禍の難民キャンプ ロヒンギャ70万人の帰還は

ミャンマーで、イスラム教徒の少数派ロヒンギャの人たちが隣国バングラデシュに避難するきっかけとなった武装勢力と軍との衝突から、8月25日で3年になります。しかし、焦点となっている70万人あまりの難民の帰還は、現在もいっこうに進んでいません。そうしたロヒンギャの人たちが暮らしている難民キャンプでは、いま、新型コロナウイルスの感染が広がっていて、支援も行き渡っていません。

(アジア総局 飯沼智記者、ニューデリー支局 太田雄造記者)

劣悪な環境で感染拡大の恐れ

バングラデシュ南部 コックスバザール

バングラデシュ南部コックスバザールにある難民キャンプ。ミャンマーから逃れてきたロヒンギャの人たちが身を寄せています。

キャンプ内では、5月に初めて新型コロナウイルスの感染が確認されて以降、これまでに79人が感染し、このうち6人が死亡しています。
キャンプは山の斜面を縫うように、竹とシートで作られた簡素なテントがひしめき合い、まさに「3密」の状態です。

UNHCRバングラデシュ事務所 細井麻衣さん
「4畳半とか7畳ほどの狭いところに5人、6人、7人くらいの家族が住んでいますので、もしもコロナが蔓延しだしたら感染が加速度的に増えると思います」

国連はキャンプの中におよそ200床のベッドがある治療施設を建設、ICUも整備しました。
手洗いや消毒の重要性などを啓発する難民のボランティアも育成しました。
しかし、バングラデシュ政府は感染対策として、支援関係者でもキャンプへの立ち入りを通常の2割ほどに制限。支援を十分に行き渡らせるのは難しいのが実情です。

劣悪な環境の難民キャンプから抜け出そうと密航業者を頼って船で東南アジアに渡ろうとする人たちも相次いでいます。しかし着岸を拒否され、数か月、海を漂った末、死亡するケースも出ています。

国連は新型コロナウイルスの影響で国際社会からの関心が薄れ、支援が先細ることに危機感を募らせています。

UNHCRバングラデシュ事務所 細井麻衣さん
「コロナで大変な中で国を追われ無国籍で帰る国もない、ロヒンギャという難民の人たちがいるということをまずは心に留めておいてくれればうれしいです」



ミャンマーで深刻化 “治安の悪化”

一方、帰還先であるミャンマーのラカイン州では、治安の悪化が深刻です。

現地では、ロヒンギャの武装勢力とは別の勢力が活動を活発化させています。
軍との激しい戦闘で家を追われた国内避難民は20万人近くに膨れあがっているという推計もあり、戦闘に巻き込まれて死亡する市民も相次いでいます。

支援団体マネージャー モー・チョウ・トゥさん
「ラカイン州全体としても経済的な打撃は深刻です。戦闘の激しい地域ではほとんどの経済活動が停止しています」

ミャンマーとバングラデシュの両政府は連携してロヒンギャの難民の人たちに帰還を促す試みをこれまで数回実施しましたが、難民たちは「安全が確保されていない」として拒否。この1年ほどは、こうした試みすら行われておらず、帰還はさらに遠のく状況となっています。

専門家は、バングラデシュの側は、問題の長期化を見据えた対応を具体的に検討せざるを得なくなっていると指摘しています。

立教大学 日下部尚徳准教授
「バングラデシュの政府関係者と話をしますと、帰還はなかなか難しいんじゃないかという意見も聞かれるようになってきました。長期化した際に国際社会のサポートのもとで、いかにその難民の命を守っていくのかということが、真剣に議論されているところでもあります」

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