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特集

2020年7月1日(水)掲載

トランプ大統領 VS ソーシャルメディア「言論の自由を守る」

「ツイッター大統領」の異名をもつアメリカのトランプ大統領は、科学的根拠を示さない情報をたびたび投稿し、物議を醸してきた。こうした中、ツイッター社が、「根拠がない」として事実確認を促す注釈をつけるなど、立て続けに警告。トランプ大統領も、「アメリカ史上最大の危機にさらされている。言論の自由を守る」と強く反発し、5月28日には、ソーシャルメディアを対象に「オンライン上の検閲の防止」と題された大統領令に署名した。これまでは、ソーシャルメディアの運営会社は、利用者の投稿した内容が不適切だと判断した場合、閲覧を制限したり削除したりしても、そのことで利用者から訴えられて法的責任が問われないように法律で保護されてきた。しかし、今回の大統領令では、こうした保護を見直し、制限や削除をした運営会社に対して、法的責任を問えるようになる。運営会社は、ソーシャルメディアの管理や運営の方法に政府が介入してくることこそが「表現の自由」の侵害だとして反発を強めている。

トランプ大統領“強硬姿勢を鮮明に”

トランプ大統領は、これまで新たな政策や重要な人事などの多くをツイッターへの投稿で発信してきた。しかし、アメリカの有力紙の調査では、就任以来、事実誤認や誤解を招く発言は1万8000回を超えていて、その2割がツイッターを通じたものだと指摘している。
トランプ大統領は、全米で広がる人種差別への抗議デモをめぐっては、一部過激化した人たちを「悪党だ」とツイート。軍による鎮圧を示唆した上で、「略奪が始まれば銃撃も始まる」と投稿した。

トランプ大統領にツイッター社から警告メッセージ

これに対し、ツイッター社は「暴力をたたえる内容が含まれる」と警告メッセージを表示し、投稿が自動的には表示されない措置をとった。
さらに、新型コロナウイルスの感染対策についてホワイトハウスで行われた会見では、トランプ大統領は、「消毒液を体内に注射する方法はないか?面白いと思う」と発言。ツイッター上では消毒液を注射すると予防効果があるかのような誤解が広がり、全米の保健当局には問い合わせが殺到したという。ツイッター社は健康被害のおそれがあるとして、関連する投稿を削除したが、トランプ大統領は、運営会社による投稿への干渉に強く反発した。ウィスコンシン中毒センターのマシュー・スタントン医師は「ソーシャルメディアなどは、情報を増幅させてしまう。これまでに経験してきた情報の伝わり方とは比較にならない」と指摘する。


共和党支持者からも反発の声が

ラジオパーソナリティー オースティン・ピーターセンさん

トランプ大統領の自由な投稿は、自身の支持者からも批判を招く事態にもなっている。ラジオパーソナリティーのオースティン・ピーターセンさん。共和党を支持する保守派の論客として、ツイッターでは6万7000人のフォロワーを抱えている。ピーターセンさんは、今回の大統領令は、政府の介入を嫌う伝統的な保守派の考えとは相入れないものだとして、自身のラジオ番組で「ツイッター社にばかにされた大統領が、かんしゃくを起こしている」と大統領を批判した。「政府の介入こそ表現の自由の侵害だ。大統領は、ツイッター上で雄弁だが、ツイッターとは何かを理解していない。彼は自分の理解が及んでいない領域に踏み込んでしまったようだ」(オースティン・ピーターセンさん)
保守系WEBメディア、ナショナル・レビューは、トランプ大統領を「独裁者」と表現。トランプ大統領の投稿への懸念は、民主党支持者だけでなく保守系メディアを通じて共和党の支持者にも広がっている。

元連邦放送委員会 ロバート・マクドウェルさん

今回の大統領令について、専門家は警鐘を鳴らしている。メディアに関する法律を管轄する政府機関の元委員は、アメリカの民主主義の根幹を揺るがす恐れがあると指摘する。「たとえソーシャルメディアが政治的にどちらに傾こうが、アメリカ政府が彼らに介入することは憲法上許されていない」(元連邦放送委員会ロバート・マクドウェルさん)


運営会社側の対応は

大統領令についてツイッター社は、「インターネット上の言論の自由を脅かす」として批判したが、フェイスブックのザッカーバーグCEOは、これまで投稿内容の真偽などを判断することに慎重な立場を示してきた。しかし、6月に入って、この対応に反発する社員がストライキを起こしたほか、対立や憎悪をあおる投稿への対応を放置しているなどとして広告を取りやめる大手企業が相次いだ。ザッカーバーグCEOは、6月26日、今後、内容が規定に違反すると判断した場合、政治家でも例外なく注意喚起のラベルをつけるほか、暴力を誘発したり選挙の投票行動を阻害したりするものは削除すると発表。投稿へのチェックを強化する考えを示した。


選挙戦への影響は

米大統領選挙 世論調査(日本時間 7月1日現在)

11月に行われる大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領だが、世論調査では、対立候補のバイデン前副大統領との差が拡大。最新の世論調査では約10ポイント引き離されている。

アメリカ トランプ大統領(アメリカ オクラホマ州 6月20日)

トランプ大統領は6月20日、3か月ぶりに支持者の集会をオクラホマ州タルサで開いた。しかし、新型コロナウイルスの影響もあり、思うように人を集められなかった。これまでの選挙戦には戻れないのだという現実を突きつけられた形だ。ウィズコロナ時代には、ソーシャルメディアは支持者に語りかけるツールとしてますます重要になってくる。投稿内容をめぐるツイッター社との衝突は今後も続く可能性があるが、トランプ大統領がこのソーシャルメディアを適切に活用できなければ、支持者の思わぬ離反を招くこともあるだろう。

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