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特集

2020年6月23日(火)掲載

中国 “露店復活”の兆し

中国が、いま経済回復への壁として直面しているのが「失業問題」だ。新型コロナウイルスの影響で仕事を失ったり、収入が途絶えてしまったりした人が増えているのだ。そうした中、新たに雇用を創出すると注目されているのが、道端で雑貨などを売る「露店」だ。中国ではかつて、こうした露店が多くの場所で見られたが、北京オリンピックなどの国際的なイベントや環境意識の高まりなどを受けて厳しく制限されるようになった。それが新型コロナの感染拡大をきっかけに“復活”の兆しを見せている。

“露店経済”を推進する李首相

中国 四川省成都(2020年6月8日)

中国内陸部の四川省成都。新型コロナウイルスの影響で多くの飲食店が売り上げを落とす中、ことし(2020年)3月頃から当局が露店の営業制限を大幅に緩和。これをきっかけに多くの人たちが露店の営業に参入を始めた。

中国 李克強首相(2020年5月28日北京)

露店の営業を推し進めているのは、李克強首相だ。5月28日に行われた中国の全人代=全国人民代表大会の閉幕後の会見で、成都を例に挙げ、「西部の都市で3万6000人分の露店スペースを設けたら、一夜にして10万人の雇用が創出された」と強調した。
さらに、6月1日に山東省の露店を視察した李首相は、誰でもすぐに始められ日銭を稼ぐことができる露店は「雇用の重要な源だ」として店主たちを激励。すでに国内30近くの都市で、露店の営業が推進されているという。



露店に活路を開く若者

蘇銭さん

露店の営業は、飲食業以外の分野でも注目されている。子ども服を販売する蘇銭(そ・せん)さん(29)。人通りの多い団地の入り口などで露店を構えている。

蘇銭さんの店

商品はなるべく乱雑に置くのが極意。客を長時間滞在させ、店が活気づくからだという。さらに、その様子をスマートフォンでライブ中継して、多くの客を呼び込んでいる。蘇銭さんの露店は「ネット通販で買うより安い」と評判だ。
多いときには数時間で、日本円で4万円以上の売り上げがあるという。
蘇さんは、こうしたノウハウをSNSを通じて、失業した若者たちにも伝授しようとしている。「露店経済は、庶民に割安な商品を提供するだけでなく、若者たちの事業立ち上げを後押しする。彼らの収入源となり、雇用問題の解決にもつながる」(蘇銭さん)。



取締り強化で悲嘆にくれる貧困層

露店を取り締まる監視員(中国 北京)

しかし、露店復活の動きは中国全土に広がっているわけではない。首都・北京では、感染拡大の影響でにわかに増加した露店を取り締まる監視員の姿が目立つようになっている。共産党北京市委員会の機関誌「北京日報」も、交通渋滞やごみの散乱などを引き起こすとして「露店経済は北京には似合わない」と指摘し、露店営業を批判した。
さらに、国営テレビも、「北京では違法な露店はこれまで通り取り締まる」とする当局のコメントを伝えるニュースを放送した。

70代の女性

そんな中でも、露店の営業に頼らなければ生きていけない人々もいる。道路わきに日用品を並べて店を出す70代の女性。年金だけでは暮らせないため、露店を続けているという。女性は「監視員が来たらすぐに撤収する。当局は、私たちみたいな生活が苦しい人に配慮してほしい」と嘆いた。

感染拡大をきっかけに中国で再び注目を集める露店。経済回復を下支えする切り札となり得るのか、模索が続いている。

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