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特集

2020年6月19日(金)掲載

“親米中国人”でも広がる米への失望

新型コロナウイルスへの対応をめぐって対立が激化するアメリカと中国。中国に強硬な姿勢をとるトランプ大統領に対し、中国では、政府だけでなく、アメリカに親近感を持ってきた人たちの間でさえも失望が広がり始めている。

アメリカを目標にしてきた親子

右:劉暁暉さん 左:妻 秀梅さん

北京市内に住む、劉暁暉(りゅう・ぎょうき)さんと妻の秀梅(しゅうばい)さん。娘の羽涵(うかん)さんは、アメリカの名門大学院に通っている。娘は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で帰国出来ず、最近はビデオ電話で会話をするのが親子の日課だ。劉さん夫妻は、新型コロナウイルスの感染が広がっているうえ、全米各地で抗議デモが相次いでいることも心配の種だ。

母「そっちの状況はどうなの?」
娘「最近は大丈夫よ、あまり外に出ていないし」
父「どの航空会社でもいいから、チケットを予約して、
8月前には必ず北京に帰ってこられるようにしたいね」

アメリカで働いていた頃の劉暁暉さん

国営の石油会社に勤めていた劉さんは、1990年代からたびたびアメリカで勤務し、技術を学んできた。アメリカへの思いは人並み以上だ。

娘 羽涵さんの部屋

その思いを象徴するものが、北京にある娘の部屋に今も残されている。バービー人形だ。アメリカに行く度に、娘へのお土産にと買ってきていたのだという。「大げさではなく、アメリカは天国だと思っていた。中国が発展したければ、アメリカの高い技術だけでなく技術の元になる思想も学ばなければならない」(劉暁暉さん) 。アメリカの高い技術と自由な空気に尊敬の念を抱き続けてきた劉さん。娘の羽涵さんにもそのことを伝え、次第に娘もアメリカにあこがれを抱くようになったという。

娘 羽涵さん

そして羽涵さんは、念願がかなって、おととしからアメリカの名門大学院に進学。先月には生命医学の修士号を取得し、アメリカでの就職を目指していた。


トランプ“反中国”姿勢が打撃

アメリカ トランプ大統領(2020年5月29日ワシントン)

しかし、その状況を一変させたのが、トランプ大統領だった。新型コロナの感染が広がったのは、中国のせいだと繰り返し主張し、「反中国」の姿勢を強めている。

トランプ大統領

「中国が武漢ウイルスを隠したせいで、全世界にまき散らされた」

さらに5月末、長年産業スパイ行為をしてきたとして、中国からの留学生の入国制限を命じたのだ。

トランプ大統領

「我が国の大学での重要な研究を守るため、安全保障上の危険があると判断した中国からの留学生を止める」

娘 羽涵さん

アメリカでの就職を諦めざるを得なかった羽涵さん。「トランプ大統領の政策で、中国人は就職のチャンスをもらえないだろう。周りの人も中国のことをどう思っているか分らない。私に危害を加えようとしているかもしれず心配だ」と嘆く。

劉暁暉さん

かつてアメリカの民主主義を尊敬していた父親の劉暁暉さんも、トランプ大統領の態度に大きく失望している。「私はこれまで、民主主義はすばらしい体制だと思っていた。しかし、トランプ大統領が現れたことで、民主主義の欠陥に気づかされた」(劉暁暉さん)

環球時報 胡錫進編集長

中国共産党系のメディア・環球時報の胡錫進編集(こ・しゃくしん)編集長は、米中の民間レベルの交流も、アメリカへの反感から今後減っていく可能性があると指摘する。「ウイルスへの対策で、中国人はより自信を持つようになった。中国の親たちにとって、子どもをアメリカに送る魅力も下がり、双方の交流には影響がでるだろう」(環球時報 胡錫進編集長)

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