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特集

2020年6月4日(木)掲載

南アフリカ コロナ禍で深刻化する密猟

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界各地で外出制限などが行われている影響は、動物たちにも及んでいる。世界的な野生動物の宝庫として知られる南アフリカでは、新型コロナウイルス対策で3月27日からロックダウンが続いているが、今月(6月)1日、外出制限などが大幅に緩和され、経済活動がいっそう再開された。しかし、このロックダウンの影響で南アフリカで深刻になっているのは、野生動物の密猟だ。なぜ密猟が横行しているのか、取材した。

観光客がいない自然公園 横行する密猟

南アフリカ リンポポ州

雄大な自然が広がる南アフリ力東部にはクルーガー国立公園や、モホロホロ野生動物リハビリテーションセンターなど個人が運営する自然公園や保護施設があり、希少な動物が数多く見られる。毎年、数百万人の観光客が国内外から訪れているが、今は事情が異なっている。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月下旬からロックダウンが行われ、外出制限のほか、国境も封鎖され、観光客がいなくなっているのだ。

クルーガー国立公園(2020年4月15日)

人けがなくなった自然公園で、レンジャーが撮影した写真には、めったに見られない光景が。普段は、サファリカーが行き交う道路で、悠々と昼寝をするライオンたちの姿が写っていた。「アスファルトは温かいので気に入ったのでしょう。ロックダウンで自然公園の道路を誰も利用していません」(写真を撮影したクルーガー国立公園のレンジャー リチャード・ソーリーさん)

密猟グループが潜伏していた村(南アフリカ ムプマランガ州2020年5月17日)

こうした状況につけこんでいるのが、野生動物を狙う密猟者たちだ。ことし(2020年)4月下旬には、サイを殺し、切り落とした角を隠していたとして2人の男が逮捕された。警察が、男たちが潜んでいた住宅を捜索したところ、サイの角6本が発見された。

捜索で見つかった角

サイの角は、中国などで薬の材料として珍重する風潮があり、密売価格は、日本円で1キロ600万円以上になるともいわれている。逮捕された男たちは、国外との行き来ができるようになってから密輸出する目的だったと見て、警察は捜査を続けている。これまでも高額な角を目当てに続発していたサイの密猟。おととし(2018年)、大規模な密猟組織が壊滅してからは、サイの角の取り引きは下火になっていた。

地元警察 ディネオ・セホトディ報道官

しかし、ロックダウン開始後に、新たな密猟グループに関する情報が寄せられるなど、地元警察は警戒を強めている。「密猟者は観光客が来られなくなり、人目が少なくなった状況につけ込んでいます。中国からの需要があるので、サイの角が狙われているんです。」(地元警察 ディネオ・セホトディ報道官)

下左:足跡 下右:レンジャーのコリン・パトリックさん(2020年5月15日)

各地の自然公園では、危機感を強め、レンジャーたちは密猟者の取り締まりに力を入れている。ある自然公園では2人一組のレンジャーチームが2頭の犬を連れてパトロールし、密猟者のわずかな痕跡も見逃さないための訓練を繰り返していた。この日も、不審な足跡を見つける訓練を続けていた。「犯罪者は現状を好機だと見ています。密猟者の脅威が高まっている今こそ、もっと警戒しないといけないのです」(レンジャー コリン・パトリックさん)



広がる密猟 “コロナによる貧困”と“活動費用の不足”

中央:モホロホロ野生動物リハビリテーションセンター 野生動物保護活動家 ブライアン・ジョーンズさん

警戒を強めているのにも関わらず、密猟者は後を絶たない。サイの角や象牙などを狙うのとは違う目的の密猟も増えはじめている。野生動物を食料にするための密猟だ。
モホロホロ野生動物リハビリテーションセンターで活動する、野生動物保護活動家のブライアン・ジョーンズさん(76)、30年以上、野生動物の保護に取り組んでいる。

食料として特に狙われているのはインパラなどの草食動物だという。

針金のわなを見せるブライアン・ジョーンズさん

最近、各地の自然公園のあちらこちらで、草食動物を捕まえるために針金で作った手製のわなが増えている。新型コロナウイルスの影響で仕事を失い収入をたたれた地元の人たちが、飢えをしのぐために違法に動物を捕獲しているのだ。「飢えた人たちが貴重な野生動物を食べてしまいます。新型コロナは密猟問題の火に油を注いでいます。野生動物の受難はいっそう深刻になっているのです」(野生動物保護活動家ブライアン・ジョーンズさん)。

左:野生動物保護活動家 ブライアン・ジョーンズさん 右:レンジャー コリン・パトリックさん

実はもう一つ、密猟が増えている背景にあるのが、野生動物保護活動のための費用がひっ迫していること。前出のジョーンズさんは、自然公園のガイドや密猟の実態について紹介する展示施設の入館料などを保護活動の資金にしてきた。しかし、新型コロナウイルスの影響で、こうした収入が途絶え、パトロールや、密猟者の侵入を防ぐフェンスの修繕などの費用捻出が困難に。新型コロナウイルスの影響が長引けば、保護活動が存続の危機に陥ると訴えている。南アフリ力では、今月1日以降、国内の外出制限は大幅に緩和されたが、国境の封鎖が解かれ、国外から観光客が来られるようになる時期のめどは見えていない。



求められる世界的な密猟防止対策

自然保護協会「Wildlife Conservation Society」ジョー・ウォルストンさん

ニューヨークに本部がある自然保護協会「WCS=Wildlife Conservation Society」で自然保護プログラムの責任をしているジョー・ウォルストンさんは、南アフリ力だけでなく、ほかの国でも同じように新型コロナウイルスの拡大で密猟が増えていると指摘する。「東南アジアやアマゾン流域、オーストラリアなど、世界中で起きています。これは南アフリ力に限った現象ではないのです」(自然保護協会「WSC」ジョー・ウォルストンさん)

密猟を防ぐ対策が難しくなる中、重要なのは、そもそも違法に野生動物を買い求める側の取り締まりだ。世界は新型コロナウイルスへの対策に追われているが、こうした中でも日本を含めた各国が、密輸を締め出す努力を、おざなりにせず、むしろ強化していくことが求められている。

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