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特集

2020年6月1日(月)掲載

新型コロナで“異変” 苦悩するアメリカの学生たち

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、アメリカの学生に“異変”が起きている。私立大学への進学を断念し公立大学を希望する学生や、大学の高額な授業料の返還を求める学生が相次いでいるのだ。いま、アメリカでは、例年とは異なる状況の中で、多くの学生が人生の大きな岐路に立たされている。

高校生の重い決断

アメリカでは、大学に進学する高校生にとって、5月1日は、「決断の日」とも呼ばれもっとも重要な日だ。この日までに、大学を訪問したり教授や学生から話を聞いたりし、どの大学に進学するのか決めなくてはならない。しかし、ことしは、新型コロナウイルスの影響で、多くの大学で「決断の日」が6月1日に先延ばしになった。

左:ジュリアン・ジョルダンさん 右:母親エリカさん

サンフランシスコの高校生、ジュリアン・ジョルダンさん(18)。地元の公立大学と、東部ボストンの私立大学に合格し、「決断の日」を前に大学を見学する予定だったというジョルダンさん。しかし、新型コロナウイルスの影響で、飛行機の移動ができず、ボストンの私立大学を見学することができなかった。

例年と比べて判断材料が限られるなか、ジョルダンさんにとって大学選びの決め手の1つが学費だ。地元の公立大学は年間10,000ドルに対して、第1志望のボストンの私立大学は70,000ドルになる。その差は、6万ドル、日本円で600万円にものぼる。先行きが不透明ななか、経済的な負担を考慮し、ジョルダンさんは、念願であったボストンの大学への進学をあきらめ、地元の公立大学に進むことを決めた。「現在の状況では学費が重くのしかかってくる。多額の借金を抱えないことがいつにも増して重要だ」(ジュリアン・ジョルダンさん)。

ジョルダンさんのように、第1志望の大学を諦めるケースは珍しくない。コンサルティング会社が、4月、卒業を控えた高校生、約1200人を対象に行ったアンケートによると新型コロナウイルスの影響で進路を変えたと答えた高校生は17%。第1志望の大学への進学に不安を抱いていると答えたのは65%になった。この65%の生徒たちは、不安の最大の理由として「自分の家族が学費を工面できなくなるかもしれない」と答えている。また、進学を決めても、向こう1年は事実上休学するなど、事態が落ち着くまで様子を見たいという学生も少なくないようだ。

           ロバート・フラネックさん

進学コンサルタントを約30年続けているロバート・フラネックさんは、今年の進路決定は、生徒にとって満足のいくものでなくなる可能性があると分析する。「高校生を取り巻く状況は、例年とは大きく異なる。経済的な不安にかられ、希望の進路を選べない高校生がいるだろう」(ロバート・フラネックさん)。

広がる授業料への不満

カリフォルニア大学アーバイン校

一方、大学では授業料のあり方をめぐり学生たちから疑問の声が上がっている。
カリフォルニア大学アーバイン校。3月以降、すべての授業がオンラインになっている。

ロージー・オガネシアンさん

この学校に通う大学1年生、ロージー・オガネシアンさん(18)。両親は旧ソビエトのアルメニアからの移民だ。家族に負担をかけてきたこともあり、オンライン授業にこれまでどおりの授業料を支払うのは、納得がいかなかった。「“感染拡大で授業は中止”というメールが大学から来て、1時間後には、減額を求める署名運動を始めた」(ロージー・オガネシアンさん)。オガネシアンさんのサイトには多くの学生から、「授業をやってくれないのに、これ以上の学生ローンはごめんだ」、「全額支払う必要はない」など共感の声が寄せられた。こうした署名運動は全米各地で広がり、署名の数はこれまでに8,000人以上にもなっている。
アメリカでは、経済活動が再開されたが、感染者も死者の数も世界で最も多く、いつ大学で通常授業が再開できるのかめどがたっていない。もし、このままオンライン授業が続けば、学生の反発はさらに強まることが予想される。

米大統領選の焦点“学生ローン問題”

アメリカの学生たちを悩ませている学生ローン問題。2017年、アメリカ国内で学生ローンを抱えた人は約5000万人。国民の6人の1人の割合だ。借金の金額も大きく、中高年になっても、返済に苦しんでいる人が多いという実態がある。

左:トランプ大統領 右:ジョー・バイデン氏

学生ローン問題は、11月の大統領選挙でも争点となっている。トランプ大統領は、これまで、教育費の削減など行ってきた。しかし、ことし3月になって、連邦政府機関が貸し付けている学生ローンについては、一定期間、利息を免除すると発表するなど、対応する姿勢を見せている。一方、民主党のバイデン氏は、公立大学の学費を免除するなどと訴えて、学費の高さに直面する若者らにアピール。一般的に学生たちの間では民主党支持が多いとされているが、秋の投票が近づくにつれて、両者がこの問題への取り組みでどう世論に訴えていくか、注目される。

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