イタリア北部と国境を接する西部チロル州では、緊急時の食品や薬品の買い出し以外は、外出を禁止するとしたオーストリアで最も厳しい外出禁止令が出されている。(注:4月7日からチロル州の外出禁止令は緩和)
バウムガルトナーさん一家
ここに住むバウムガルトナーさん夫婦。1歳半のアルベルトちゃんの育児をしながら、3週間にわたり、自宅での仕事を余儀なくされている。外出はごく近所に限られ、ジョギングすら認められず、1日中、自宅に閉じこもっているという。妻のユリアさんは「ついつい感情的になってしまう時がある」と嘆き、夫のフロリアンさんも「一人の時間をとるのが難しくなっている」と、日頃にはないストレスを感じているという。
こうしたなか増えているのが、女性や子どもたちに対する暴力、 DV=ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)だ。オーストリア最大の被害者支援団体への相談件数は、7割以上増加した。先月(3月)下旬には、ウィーン郊外で、在宅勤務中の夫がストレスから妻を殴り殺そうとしたとして逮捕される事件も発生している。危機感を募らせたオーストリア政府は、急遽DV対策の予算を1.5倍に増額。24時間DVの相談ができる窓口を増設し、被害相談を受ける対策を強化している。
スザンネ・ラーブ女性担当相
NHKのインタビューに応じたスザンネ・ラーブ女性担当相は、今後さらにDVが増える恐れがあると懸念を強めた。「私たちは今、非常事態にある。隔離された自宅が無法地帯になってはいけない。外出制限や隔離生活が、長引くほど、DVの件数が増えてしまう恐れがある」(スザンネ・ラーブ女性担当相)