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特集

2020年4月13日(月)掲載

新型コロナ 外出制限長期化でDV増加

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、世界各国で外出制限の措置が取られている。自宅での長時間の生活を強いられる中、深刻な問題になっているのがDV=ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)だ。イギリスでは、DVに関する電話相談が65%増加し、フランスでも配偶者間の暴力が36%も増加している。こうした状況に国連も警鐘を鳴らし、各国政府に対応を求めている。感染の死者数が多いイタリアと国境を接しているオーストリアでは、ヨーロッパの中でも早い段階から外出制限が行われた。そして、DV増加の懸念をうけ、いち早く対策に乗り出している。DVが増加する実情とその対策を取材した。

自宅が“無法地帯” ストレスからDVへ

イタリア北部と国境を接する西部チロル州では、緊急時の食品や薬品の買い出し以外は、外出を禁止するとしたオーストリアで最も厳しい外出禁止令が出されている。(注:4月7日からチロル州の外出禁止令は緩和)

バウムガルトナーさん一家

ここに住むバウムガルトナーさん夫婦。1歳半のアルベルトちゃんの育児をしながら、3週間にわたり、自宅での仕事を余儀なくされている。外出はごく近所に限られ、ジョギングすら認められず、1日中、自宅に閉じこもっているという。妻のユリアさんは「ついつい感情的になってしまう時がある」と嘆き、夫のフロリアンさんも「一人の時間をとるのが難しくなっている」と、日頃にはないストレスを感じているという。

こうしたなか増えているのが、女性や子どもたちに対する暴力、 DV=ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)だ。オーストリア最大の被害者支援団体への相談件数は、7割以上増加した。先月(3月)下旬には、ウィーン郊外で、在宅勤務中の夫がストレスから妻を殴り殺そうとしたとして逮捕される事件も発生している。危機感を募らせたオーストリア政府は、急遽DV対策の予算を1.5倍に増額。24時間DVの相談ができる窓口を増設し、被害相談を受ける対策を強化している。

スザンネ・ラーブ女性担当相

NHKのインタビューに応じたスザンネ・ラーブ女性担当相は、今後さらにDVが増える恐れがあると懸念を強めた。「私たちは今、非常事態にある。隔離された自宅が無法地帯になってはいけない。外出制限や隔離生活が、長引くほど、DVの件数が増えてしまう恐れがある」(スザンネ・ラーブ女性担当相)

外出制限で逃げ場を失った女性たち

DVは、どのように深刻化してしまうのか。
外出制限が始まり2週間たった先月(3月)下旬。ウィーン市内にある女性の支援団体に寄せられた相談から、女性へのDV被害の実態が明らかになった。

夫と幼い娘と3人暮らしという女性。以前から暴言を放つ傾向があった夫に悩まされていた。今は四六時中、夫と一緒にいることを余儀なくされ、DVがエスカレートしているという。夫からは「料理がへただ」、「ゴミを早く捨てろ」そして「本当にだめな母親だ」などと絶え間なく暴言を浴びせられる日々だと訴えた。

逃げ場を失った女性は追い詰められ、パニックに陥り、胸に強い痛みを訴えるなど身体に不調が出ているという。

女性支援団体 ベティーナ・ツェヘトナ代表

ベティーナ・ツェヘトナ代表は、相談できる人は、氷山の一角だと懸念する。「相談するすべのない女性たちが心配だ。『夫が四六時中監視していて話ができない』と言われたケースもあった。今は感染のリスクが高いので、『子どもを連れシェルターへ』とのアドバイスが難しい。被害女性の安全を確保することが大きな課題だ」

男性が抱える“将来への不安”

一方、DV加害者側の更正を支援する団体に寄せられる相談も大幅に増えているという。相談所には、外出制限のストレスに加え失業など将来への不安から、暴力への衝動が抑えられないといった男性からの相談が倍増しているという。

DV加害者更正支援団体 アレクサンダー・ハイドン代表

アレクサンダー・ハイドン代表は、DVにつながらないように、自分のストレスのレベルを把握するよう努めるべきだという。「ストレスを感じたら、別の部屋に行って1人になり気持ちを静める。散歩は許されているため、近所への散歩もいい。もう1つは、パートナーと今日の予定について、できるだけ会話すること。半年先のことはわからないので、毎朝その日1日の予定を話せばいい」

各国の対策は

各国政府は、どのような対策をしているのか。
ヨーロッパでは、フランスのパリで市内のシェルターを増設することが決まっている。また、スペインやフランスでは薬剤師の団体と連携し、全国の薬局で被害者が薬を買いに行く際に通報できる仕組みを立ち上げた。女性が店員に特定の「合い言葉」を伝えると、店員が警察に通報するというもので、加害者が横にいた場合でも気付かれることなく助けを求める事ができるようになったという。
外出制限は、助けを求めている人と、社会との接点をも閉ざすことになりかねない。今後、支援団体だけでなく、国が責任ある対策を打ち出す必要がある。

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