BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

特集

2020年4月2日(木)掲載

オリンピック・パラリンピック延期を受けて / 難民アスリートからTOKYOへのメッセージ

国際報道2020では、紛争や迫害など、様々な事情で難民となったアスリートの姿を、一年を通し世界各地で取材してきた。世界中で7000万人を超える難民の希望になろうと、東京オリンピック・パラリンピックを目指してきた難民アスリートたち。東京大会の一年延期を受けて、3人の難民アスリートが、今の思いとTOKYOへのメッセージを番組に寄せてくれた。




イブラヒム・フセイン選手(シリア出身・パラ競泳)

イブラヒム・フセイン選手(シリア出身・パラ競泳)
みなさんがご無事でありますように。そしてみなさんに平安を。世界の人々が予想もできない災難に見舞われている状況について、簡単に言葉にすることができません。感染症やその恐怖、そのほかの危険にも人類の命がさらされています。ですから、あらゆるところで、いつ何時も、命を守らなければなりません。
いま、経済的、社会的、文化的困難に直面する中で、人々に喜んだり、楽しんでもらったりするために、私たちが持てる時間を費やしてきたスポーツの業界でも、大会などが延期されたり、中止されていますが、IOCやIPC(国際パラリンピック委員会)による大会延期の決定は適切だと思います。
スポーツ界の活気は、東京やその他の国々においても、また前のように戻ってくるという希望はあります。私たちは人類、そして未来を信じています。私たちみんなにとって、スポーツの仲間たちにとって、より良い明日が来ることを信じています。


イブラヒム選手は、シリア内戦で友人を助けようとして砲撃を受け右足を失うも、リオデジャネイロパラリンピックに出場、難民選手団の旗手を務めた。難民の障害者の希望になろうと東京大会を目指している。難民の車いすバスケチームを結成することも大きな夢だ。現在暮らすギリシャでは、時々難民キャンプを訪れ、子どもたちを励まし続けている。

ヨナス・キンデ選手(エチオピア出身・マラソン)

ヨナス・キンデ選手(エチオピア出身・マラソン)
オリンピックを迎え入れることを楽しみに、そのすべてを準備されてきたでしょうから、日本のみなさんには残念なことでしょう。私はことし(2020年)3月1日の東京マラソンに参加し、オリンピックの東京に向けた空気を目にする機会もあったので、そう思います。どうか、そのオリンピックに向けた空気や力強さが来年2021年まで続き、日本の社会が、「難民選手団」、そしてすべての選手を温かく迎えてくれることを願います。
オリンピック・パラリンピックの延期は、コロナウイルスのために、全世界で様々なイベントが中止されたり、延期されたりする状況の中では、最も良い選択だと思います。トレーニングの環境もアスリートにとって十分な状況とは言えません。グループでの練習ができず、公共のスポーツ施設も閉鎖され、アスリートの“チームスピリット”にも大きな影響が出ています。
こんな中、日本のみなさん、IOC初め、アスリートの安全のために努力してくださっているみなさんに感謝したいと思います。健康と安全が第一です。未来の「難民選手団」の夢は変わっていません。私たちは希望を持ち続けています。なぜなら、「難民選手団」そのものが希望の象徴だからです。


政治的迫害を受け、ルクセンブルクに逃れたヨナス選手は、現在IOCの奨学金を受けて、トレーニングを続けている。ことし3月、国連UNHCR協会の招へいで来日、東京マラソンに参加した。トップから20分遅れの2時間24分34秒で完走を果たした。東京の沿道から、自分の名前を呼ぶ声や、母国語で“がんばれ”と言った声援が聞こえてきたことが心からうれしかったと言う。

ローズ・ナティケ・ロコニエン選手(南スーダン出身・陸上800M)

ローズ・ナティケ・ロコニエン選手(南スーダン出身・陸上800M)
もちろん、大会延期は悲しいニュースです。しかし、パンデミックが起こっている中、ウイルスが早く去るよう、ただただ神様にお祈りしています。私たち難民アスリートはどんな競技においても様々な挑戦に向かっていますが、とりわけ健康は重要です。
私たちは、カクマ難民キャンプでも練習をする予定です。大会が延期されたとしても、スポーツ精神を保ち、人生における希望はけして失いません。私たちにとってスポーツの持つ意味は大きいです。スポーツは、結束や、愛、平和への思いを世界中で生み出すものだからです。


ローズ選手は、ケニアにあるカクマ難民キャンプの陸上競技会で才能を見い出されて、リオデジャネイロオリンピックに出場した。毎年キャンプでは競技会が開催され、ローズ選手の背中を追いかけ、スポーツで人生を切り開こうという若者も少なくない。去年(2019年)8月に来日した際は、被災地、岩手県陸前高田市を訪れ、地元の中学生たちと交流。「心が折れそうになっても夢をあきらめないことが大事」と講演で語りかけた。

ページの先頭へ