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特集

2020年3月26日(木)掲載

ロシア政界 またプーチン大統領?

新型コロナウイルスのニュースに世界が包まれている中、ロシアでは、プーチン大統領が「ちゃぶ台返し」を着々とすすめている。ことし1月、プーチン大統領が突然打ち出した憲法改正。その中で柱となったのが「大統領の任期」だ。大統領には同じ人が「2期を超えて就くことはできない」とされていた。ところが、その2か月後に議会が可決した憲法改正案では、「憲法改正時点で就任している人物の過去または現在の任期を考慮しない」とされ、プーチン氏が再び大統領選挙に立候補する可能性を残す内容となったのだ。2000年に就任して以降、ロシア政界の実権を握り続けるプーチン大統領。いまの任期は4年後の2024年までだが、新たな憲法改正が実現すると、プーチン氏はその後も大統領から退くことなく、再選をめざすこともできる。憲法改正を巡ってめまぐるしい展開が続くロシアで何が起きているのか。

憲法改正 採決直前の提案

今月(3月)、憲法改正について審議を行ったロシア議会。粛々と議論が進み、まもなく採決かという土壇場で、突如、ある提案が出された。ベテラン議員のテレシコワ氏が「プーチン大統領が再選できるよう改正案に盛り込むべきだ」と発言し、現職の大統領には任期の制限は適用せず、プーチン氏に今後も大統領選挙に立候補してほしいと求めたのだ。テレシコワ氏は、60年近く前に女性として世界で初めて宇宙飛行を行ったロシアの英雄的存在。プーチン氏の続投を求めた理由について、テレシコワ氏は、新型コロナウイルスの感染拡大などで世界が不安定になるなか、「プーチン氏の存在は必要だ」と訴えた。
その後ほどなくして、プーチン大統領も議会に登場。最終的な判断は、今後行われる憲法改正を巡る国民による投票の結果にゆだねたいとしたが、次のように述べ、提案を基本的には了承した。

プーチン大統領
「そのような提案は、改正案の是非を問う投票で、国民が賛成すれば可能になるだろう」

そして結局、議会はその数時間後に、この案を含む改正案を賛成多数で可決した。



プーチン氏続投 これまでの見方は…

これまでは、任期の制限があるため、今後プーチン氏が大統領選挙に出ることはないだろうという見方が大勢だった。退任後は、大統領の諮問機関「国家評議会」のトップに就任するのではないか。そんな憶測も上がっていた。
それを裏付けるかのようにプーチン氏は、1月の年次教書演説で「国家評議会」の地位を高めると提案。
(参照https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/01/0130.html)。そしてこの直後、こんな発言もしている。「以前の国家指導者は、人生最後の日まで権力の座にとどまり、権力移行の条件を定めずに去って行った。80年代半ばのようなことになるのは悲劇だろう」。



国民の反応は

しかし、このような発言に逆行するとも言える憲法改正の動きにより、大統領続投の可能性がでてきたプーチン氏。
国民の反応は2つに割れている。

女性市民
「私が生まれた時からプーチン氏と一緒。それっておかしいでしょ」

男性市民
「モノがなかった90年代に比べていまは何でもある。是非、続けて欲しい」

アレクサンドル・アパルホフさん

モスクワ市で家族3人と暮らす会社員のアレクサンドル・アパルホフさん(36)。プーチン政権の経済政策などは支持しないものの、「安定」を求めるうえでプーチン氏の存在は必要だと考えている。「プーチン氏の急な退任は心配だ。何が起きてしまうかわからない」(アレクサンドル・アパルホフさん)
アパルホフさんの幼い頃の記憶は、1991年のソビエト崩壊したあとの混乱した国の姿だ。金融危機やモノ不足の中、苦しい生活を約10年にわたり強いられた。

その時の経験を2度としたくない。アパルホフさんは、子どもの将来のためにも、強いリーダーシップで国の経済を立て直したプーチン氏には何らかの形で政界にとどまってほしいと考えている。「プーチン氏がいるから国が揺らがないのだ。完全に去るのはまだ早いと思う」(アレクサンドル・アパルホフさん)



プーチン氏の真意は

ロシア プーチン大統領

プーチン氏は、現時点で「立候補する」とは言っていない。国営の通信社に語ったインタビューでも「私にはまだ4年ある。今は答えがない。もっとも大事なことは、国民がどう考えているかだ」と述べるにとどまった。プーチン氏にとって大事なことは、国家の崩壊にもつながりかねない政権移行期の混乱を避けること。そのためには、今回の憲法改正案の可決で「大統領続投も」という強力なカードを手に入れたことが重要で、任期が切れるぎりぎりまで周囲ににらみをきかせことができ、自らの求心力が低下することを防ぐことも可能になった。
「大統領を続ける」のか、「ほかの政府機関のトップに就任する」のか、身の処し方についてはこれから最終的に判断するとみられる。
突如持ち上がったプーチン大統領続投の可能性。この先もプーチン時代が続くのか、今後の出方に注目される。

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