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特集

2020年3月18日(水)掲載

韓国総選挙まで約1か月 新型ウイルスの影響も懸念

2020年4月15日に行われる4年に1度の韓国総選挙まで1か月を切った。総選挙では、任期が残り2年余りのムン・ジェイン(文在寅)大統領への「中間評価」が下されることになる。与党が勝てば、ムン大統領は求心力を維持できる一方、負ければ一気にレームダック化が進むことになり、今後の政権運営を占う上で重要な政治決戦だ。







韓国の国会は、一院制で定数は300議席。小選挙区で253議席、比例で47議席を争う。議席数は、3月16日現在、ムン・ジェイン政権を支える革新系の与党「共に民主党」が第1党で129議席。第2党の保守系の最大野党「未来統合党」は117議席。


与野党の顔 前首相と元首相が激突!

韓国政治を大きく動かしてきた保守と革新の激しい対立。今回の両陣営の勝負で最も注目を集めているのが、首都ソウル中心部の選挙区「チョンノ区(鍾路)」から立候補する2人、与党の候補者、イ・ナギョン(李洛淵)前首相と最大野党の候補者、ファン・ギョアン(黄教安)元首相だ。両氏ともに首相経験者で、次期大統領の有力候補ともされている。

2020年3月12日ソウル チョンノ区

ちなみに、「チョンノ区」はこれまで、ノ・ムヒョン(盧武鉉)氏やイ・ミョンバク(李明博)氏といった大統領経験者を輩出している「政治の一番地」で、選挙戦の象徴となる地区だ。



与党「共に民主党」イ・ナギョン前首相とは

与党の候補者、イ・ナギョン前首相は、ムン・ジェイン政権発足当初から首相を務め、約2年7か月の在任期間は、歴代の首相の中でも最長だ。

イ・ナギョン前首相
「歴史ある韓国の政治の一番地であるチョンノで戦えることは大変光栄です。
信頼と品格を持ち、謙虚に選挙へ臨みたいと思います」

北朝鮮との関係強化や、検察改革を進めるムン政権を、ナンバー2の立場で支えてきたイ・ナギョン氏。豊富な政治経験に裏打ちされた行政手腕は、国民に評価されている。ことし1月、韓国の公共放送KBSのインタビューでイ・ナギョン氏は次のように答えていた。

イ・ナギョン前首相
「私はムン政権に半分以上いた者です。政権のこれまでの政策に対し共同責任がありますので、建設的な政策提案をすることが自分のやるべき仕事だと考えています」



最大野党「未来統合党」ファン・ギョアン元首相とは

一方、最大野党が送り込むのが、パク・クネ(朴槿恵)前大統領の右腕として、首相を務めたファン・ギョアン元首相だ。パク前大統領の職務が停止した際には、大統領の職務を代行した。現在は、保守系の最大野党の代表として、ムン大統領と対峙している。ムン大統領が、疑惑が取りざたされていた側近のチョ・グク氏を法相に任命した際には、「独裁だ」と強く批判した。また、反政府集会で坊主頭にするというパフォーマンスを行うなど、ムン政権への抗議の意思を、度々、強い形で示してきた。

ファン・ギョアン元首相
「ムン政権の暴挙を食い止めるため、すべてをかけて私が先頭に立つ」

総選挙を前に、パク前大統領の弾劾をめぐって分裂した保守勢力の再結集を図るため、ファン・ギョアン氏は先月(2月)17日、2つの小政党を吸収する形で「未来統合党」を新たに立ち上げた。会見でファン氏は次のように宣言した。

「未来統合党」代表 ファン・ギョアン元首相
「過去や違いを乗り越え、未来に向かって、ひとつに結集しました。
ムン政権の暴政を審判することに心を結集し、国民の切実な願いを必ず成し遂げなければなりません」



韓国総選挙 最新世論調査

韓国の世論調査機関「韓国ギャラップ」が3月13日に発表した世論調査では、「次期大統領として期待する人」としてイ・ナギョン氏が最も多くの支持を集めている。注目のチョンノ区の選挙では、与党のイ・ナギョン氏が優勢だという見方が支配的だ。

各政党の支持率では、与党「共に民主党」が39%、最大野党の「未来統合党」が22%で、与党側が大きくリードしている。ただ、無党派だという人も28%をいるほか、選挙の結果については、「政府を支援するため与党の勝利」を望む人と、「政府をけん制するために野党の勝利」を期待する人が、どちらも43%で同率となっている。こうしたギャップから見えてくるのは、与党支持であってもムン政権には歯止めが必要という世論だ。

政権発足当初は、ムン・ジェイン大統領の支持率は80%超だったが、最近では40%台と厳しい目が向けられている。看板政策の1つ、北朝鮮との関係改善はこう着状態着で、検察改革についても、側近のチョ・グク氏の就任直後の失脚による任命責任も追及された。さらに、多くの国民が期待する経済面での政策でも具体的な成果があがっているとは言えず、こうしたことが、「支持しない理由」の上位に挙がっている。ただ、一方の野党側も、パク前大統領の弾劾で失った国民からの信頼を取り戻せておらず、ムン政権を攻め切れていないのが実情だ。



韓国総選挙にも新型コロナウイルスの影響が

2020年3月12日ソウル チョンノ区

そうした中でも気がかりなのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。韓国では、感染者が8,300人を超えている(3月17日現在)。この影響で、総選挙の候補者たちも戦略の練り直しを迫られている。大規模な集会を開くことができなくなったいま、与野党の顔の両氏はどう戦うのか。

イ・ナギョン氏はインターネット上での活動を強化し、自らの活動動画を投稿するなど、有権者とのつながりを模索している。実際に薬局を訪ねて状況を確認する動画を配信した。

左:イ・ナギョン前首相

イ・ナギョン前首相
「ひとまず自治体が確保したマスクの量を薬局に流通するよう政府に伝えます。
政府にも現場の状況を伝えて、流通方法の改善を提案していきます」

一方、ファン・ギョアン氏もみずからのフェイスブックで、街で消毒活動を行う様子をたびたびアップ。こちらもネットを使って地元の人たちに寄り添う姿勢をアピールしている。また、先月には、新型コロナウイルスの感染拡大に対するムン大統領の対応を次のように非難した。

ファン・ギョアン元首相

「未来統合党」代表 ファン・ギョアン元首相
「現在の危機の背景には政府の対応失敗が影響を及ぼしました。
何よりも初期対策が失敗でした。 大統領は国民へ謝罪すべきです」

感染拡大を食い止めることができれば、与党への支持が強まることも見込まれるため、ムン政権や与党側は連日、対応に全力をあげる姿勢を強調している。一方、野党側は、ムン政権の対応が不十分だと攻勢を強めている。感染が拡大する中でも、選挙を延期すべきとの声は、ほとんど出ていないが、各候補とも思うような選挙活動ができず、このままでは投票率にも影響が出ることが予想される。新型ウイルスの感染拡大という、かつてない状況の中で、各政党とも手探りの選挙戦が続くことになりそうだ。

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