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特集

2020年3月12日(木)掲載

新型ウイルス 台湾 “満足度80%”感染対策

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、各国が対応を迫られている中、「先手」の対策で世界に注目されるのが台湾だ。中国とのつながりがとても深いにも関わらず、感染者数が非常に低く抑えられ、予防対策に関しても市民の「満足度」が80%を超えている。台湾の“先手”の感染対策を取材すると、若き閣僚の活躍と、SARSの経験をいかした徹底的な対策の実態が見えてきた。

迅速な対応で“マスク混乱”回避

世界各地で相次ぐマスクの品不足。しかし、台湾では、様々な対策を打ち出しマスク品切れの混乱を防いでいる。

台湾当局は、機械メーカーなどに協力を要請し、新たに60のマスク生産ラインを増設。この1か月で、1日に生産できる枚数をこれまでの倍を超える900万枚に増やし、輸入に頼っていたマスクを自給できるようにした。今後、さらに、30の生産ラインを増やす計画だ。

そして、増産するだけでなく、マスクが多くの人々に行き渡るための方策も行っている。生産されたマスクをすべて当局が管理。実名制によるマスクの販売が行われている。市民は、薬局などで健康保険カードを提示すれば、枚数は限られるが7日間に1度、購入できるようになったのだ。「公平さから考えると、資源(マスク)が不足する状況で、実名制で管理するのはとてもいいことだと思う」(男性市民)。買い占めの防止につながっている。



アプリを駆使して最新情報を発信

台湾 IT担当閣僚 唐鳳氏

どこに行けばマスクが手に入るのか、在庫が一目でわかるサイトも登場した。サイトの構築で欠かせないマスクの販売データの公開を推進したのが、台湾の若きIT担当閣僚、唐鳳(とう・ほう)氏(38)だ。
唐氏は、独自でプログラミング技術を習得し、16歳でソフトウェア会社を起業。4年前、台湾史上最年少で閣僚に就任した。
今回の危機に際しては、唐氏が当局と民間の橋渡しになり、当局のデータを積極的に公開している。すでに、このデータをもとにした100種類以上のサイトやアプリが登場している。「アプリを使えば、皆にこれまで伝えられなかった情報を一気に伝えることができる」(台湾IT担当閣僚 唐鳳氏)



“感染の抜け穴は作らない” 徹底対策の背景は

さらに、感染しても症状のない人たちによる感染拡大を食い止める新たな対策にも乗り出している。中国などから帰ってきた人で症状がないことから自宅隔離の対象となる人は、3月11日以降、空港から鉄道やバスに乗らず、消毒が行われた専用タクシーに乗ることが義務づけられるようになった。従わない場合は、最高で100万台湾元(日本円にして約350万円)が科されるという。

当局による迅速で厳しい対策。背景にあるのが、17年前の新型肺炎「SARS」の
苦い経験だ。当時、台湾では、中国や香港に次いで多い346人が感染。関連死を含めると73人が亡くなった。

台湾 蔡英文総統

当時の政権で閣僚の1人だったのが、蔡英文総統だ。蔡総統はいま、感染拡大を最小限に抑えるとともに市民の不安を解消しようと、「情報公開」に力を入れている。

蔡英文総統
「情報を公開すればするほど、人々は安心する。気を許してはならず、各部局は協力して、指揮官の指示に従うように」

台湾 保健当局 陳時中衛生福利部長

現場を指揮するのは保健当局のトップ・陳時中(ちん・じちゅう)衛生福利部長だ。SARSの教訓から、マスクの販売、渡航制限、隔離方針など、部局の垣根を越えて指示し、先手の対策を打ち出している。1月下旬からは、毎日欠かさず、時には1時間半にわたる記者会見を開き、YouTubeでも中継。学校現場や職場、交通機関の対策など、その時々の話題にあわせて担当者を同席させ、すべての質問に答えている。陳部長は歯科医出身。かかりつけ医のような、市民に目線をあわせた分かりやすく優しい語り口が市民から広く支持を得ていて、不安解消につながっている。
蔡政権の副総統も実は公衆衛生の専門家で、SARSの対応にあたった中心人物。閣僚メンバーには感染症対策にも詳しい公衆衛生の医師もいて、まさにチームプレーでスピーディーな対応につなげている。「民主主義の体制のもとで効率よく対応できることを世界に示そう」(台湾 保健当局 陳時中衛生福利部長)

現場での柔軟な対応を実現させ、これまでのところ、見えないウイルスの制圧と、人々の不安解消で成果をあげている台湾。その手法が世界から注目されている。

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