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特集

2020年2月13日(木)掲載

インド ゴミ問題解決のカギ “地域のゴミ回収人たち”

インドでは、人口の増加と急速な経済成長によってゴミの量が年々増加し深刻な社会問題になっている。ゴミの分別などリサイクルの仕組みが整っておらず、多くはそのまま埋め立て場所に運ばれ、高く積み上げられている。周辺では衛生環境が悪化し、処理場の不足も大きな課題になっている。
そんな中、インドのゴミ削減のカギを握ると期待されているのが、インド特有の昔ながらの職業の人たちだ。

組織化することでリサイクル率向上へ

インドには、ゴミを収集して生計を立てる“カバディワラ”と呼ばれる人たちがいる。彼らが集めるのは、家庭から出る紙やペットボトルなどの資源ゴミだ。これらのゴミを分別し、1キロあたり数十円でリサイクル業者に売り、日々の収入を得ている。しかし、自治体などが管理せず、個人に頼るシステムのため、収集にばらつきがあり、回収できる量も限られているという。そのため、回収の効率は非常に悪く、リサイクルされる割合は日本の半分以下、3割ほどにとどまっている。

マシュー・ジョセさん

こうしたカバディワラの人々のネットワークをつくり、リサイクルの効率を上げようと取り組む人がいる。南部の都市チェンナイで活動するマシュー・ジョセさん(32)。大学生のころから、ゴミ問題の解決を志してきたジョセさんは、これまで見過ごされてきたカバディワラの存在に着目。ばらばらに活動しているカバディワラを組織化する方法を考えた。地域ごとにリーダーとなるカバディワラを決め、そのリーダーを中心にグループを作り、担当する場所をメンバーに割りふってゴミを集めることにしたのだ。

マシュー・ジョセさん
「汚い場所も多いが、インドには強固なエコシステムがある。150万人のカバディワラと資源ゴミのある地域をうまくつなげられれば問題を解決できる」

カバディワラの活躍が不可欠

サミュエル・セルバラジさん

リーダーの1人、サミュエル・セルバラジさん(41)。メンバーが集めてきたゴミを一度セルバラジさんが買い取り、まとめてリサイクル業者に引き渡している。新たな仕組みによって各家庭をくまなく回れるようになり、資源ゴミの回収量は1.5倍に増えたという。セルバラジさんによると、かつて人々はゴミのリサイクルを考えずに捨てるだけだったが、カバディワラが回収することで人々の意識が高まり『ゴミは財産だ』と考えるようになったという。

ジョセさんは、カバディワラの待遇改善にも取り組んでいる。大手のリサイクル業者を説得し、資源ゴミの買い取り価格を上げることに成功。月に2万円ほどだったカバディワラの収入は、約2割増加したという。カバディワラは、ゴミを集めれば集めるほど、生活が向上し、良い循環が生まれている。セルバラジさんは「ジョセさんは私たちカバディワラによい影響を与えてくれた。カバディワラの仕事の量が増えて、私の収入も増えた」と笑顔で語った。
増え続けるゴミに、新たな価値を与えるジョセさんたちの取り組み。これまで注目されてこなかったカバディワラの活動にも光が当たりはじめている。

マシュー・ジョセさん
「カバディワラはリサイクルに欠かせない存在で、彼らに尊厳を与えることが不可欠。彼らは社会から疎外された存在だが、力を与え助けることが大切だ」

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