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特集

2020年1月23日(木)掲載

“#AmInext?” SNSで性暴力の撲滅を!

『国際報道2020』では、世界を変えるうねりを起こしている若手リーダーに注目している。今回の主人公は、南アフリカ人の大学院生ナレディ・マポノポノさん(27)。南アフリカでは女性への性暴力、殺人が3時間に1人の頻度で発生していると見られ深刻な問題となっている。そうした状況に歯止めをかけようとマポノポノさんはSNSを使って性被害の実態を発信、南アフリカ全土を巻き込んだ運動となっている。運動では “Am I next?(次は私?)”という検索ワードを掲げて賛同者を広げる取り組みをしている。マポノポノさんに、#AmInext? に込めた思いを聞いた。

白昼のレイプ殺人事件 国民の怒り爆発

南アフリカのケープタウンで去年(2019年)8月、人々を震撼させる事件が起きた。19歳の女子学生が白昼、郵便局の中で42歳の男性局員にレイプされ殺害。遺体は焼かれ、捨てられるという痛ましい事件だった。この事件をきっかけに人々の不満が爆発。9月には、政府に性暴力への対応を求める数万人規模の抗議デモが相次いで行われた。デモはいまも各地で続いている。参加者は口々に「レイプ犯に処罰を!」と叫んでいる。参加者一人一人の思いとは…。

車いすに乗った中年黒人女性
「政府は私たち女性のことを話しません。私は今、この問題を提起するためここにいます」

参加者の中には、表だって声をあげづらい被害者の姿も。

白人女性
「すべての女性は何らかの形で暴力にさらされています。私自身18歳の時にレイプされました。相手は誰かが私に警告するような人物ではなく、生徒会長によるものでした」



性暴力の実態を伝え、闘い続ける女性

“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん

郵便局員にレイプされ殺害された女子学生と同じケープタウン大学に通うナレディ・マポノポノさん(27)。“#AmInext?”運動のリーダーの1人だ。

ケープタウン大学で演説するナレディ・マポノポノさん

マポノポノさんは、各地で小規模の集会を行いながら、SNSを使って性暴力に関する情報を積極的に発信。国内のみならず世界に運動を拡散させている。マポノポノさんは郵便局でのレイプ殺人事件の被害者の遺体が見つかった時の気持ちをこう語った。

“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん
「絶望しました。私が被害者になっていたかもしれないと感じました。打ちのめされました」

性暴力事件で、マポノポノさんが特に問題視しているのが、今回も見られた被害者へのバッシングだ。レイプ殺人が起きた現場は、街の誰もが訪れる昼間の郵便局。それにもかかわらず一部からは、あたかも女子学生に落ち度があったかのように言う心ない声が出たという。そうした偏見が、問題をさらに助長させているとマポノポノさんは訴える。

“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん
「郵便物が置かれている公共の場所で、誰も女性が殺害されるとは思いません。ジェンダーに基づく暴力はいつでもどこでも発生する可能性があります。『何を着ていたのか?どこにいたのか?』という被害者への非難はばかげています」

マポノポノさんは、性暴力がどこでも起こりうるものであると同時に、誰にでも起こりうると強調。それがネットの中で運動を広めるカギとなっている“#AmInext?”という検索ワードにつながっているといいう。

「女性全体として見ると性犯罪は誰にでも起こりうることを示しています。『次は私?』と問いかけることで、人々がそれを考えるきっかけとなるのです」(“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん)

今、SNSでは、この#AmInext?(次は私?)という検索ワードであふれている。



増え続ける性暴力事件の背景は

UNODC=国連薬物犯罪事務所の報告書(2019年)

UNODC=国連薬物犯罪事務所によると、2017年、性別を理由に殺害された女性は世界で約8万7000人に上る。背景には、伝統や宗教的価値観、さらに人種的な偏見もあると指摘されている。一部では、女性に対する暴力が正当化され、殺害まで行われているというのだ。

“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん

マポノポノさんは南アフリカにおける女性たちの厳しい立場をこう語る。

“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん
「優れた人種として認識される白人男性の声には皆、耳を傾けますが、黒人男性のさらに下にいるとみなされがちな黒人女性は、そうではありません。だから料理をし、掃除をする生活を社会的に強いられています。学業や運転免許の取得を求められることはありません。女性は、より低いジェンダーとして、社会で固定化されているのです」



不十分な当局の対応 今後も続く闘い

南アフリカ ラマポーザ大統領

マポノポノさんをはじめとした若者の声に押されて、ラマポーザ大統領は、対策の強化を表明した。「性暴力に対する緊急行動計画を進展させ、今後6か月の間に実施します」(南アフリカ ラマポーザ大統領)。

しかし、現実には具体的な動きはなく、人々の失望と怒りが高まっている。南アフリカ警察局の犯罪統計では、年々殺人件数が上がり、レイプなどの性犯罪は2016年から増加。当局に頼るだけでなく、女性はもちろん、若者が中心となって現状を打破するための努力を続けなければならないとマポノポノさんは話す。

“#AmInext?”運動のリーダー ナレディ・マポノポノさん
「家父長制は、社会のあらゆる所に存在しているので、教会や職場、そして家庭でも休むことなく、声を上げなければなりません。私たちには、抑圧を分析し、それを理解する力があり、SNSのような新しいツールもあります。未来は私たちのものです。だから若者には社会を変える義務があるのです」

#AmInext? (次は私?)が問いかける問題は南アフリカだけのものではない。遠い国の事としてとらえるのではなく、性差別などをなくすために、個人が、社会が、そして世界が何が出来るのか考えていかなければならない。

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