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特集

2020年1月8日(水)掲載

トランプ大統領 再選に向け狙うは若者と黒人

今年(2020年)は、4年に1度のアメリカ大統領選の年。再選を目指すトランプ大統領だが、ウクライナ疑惑を巡った弾劾裁判が近く議会上院で始まる見通しで、威信は大きく揺らぎかねない事態になっている。そうした逆風の中でもトランプ陣営は大統領選挙に向けて、したたかに攻めの姿勢を見せており、新たなターゲットは、なんとこれまで民主党の盤石な支持層とされてきた若者と黒人だ。いったいどんな戦略なのか。再選キャンペーンの最前線を追った。

若者を取り込む策略とは

トランプ大統領の別荘がある南部フロリダ州で先月(12月)、共和党陣営によるイベントが行われた。イベントを主催したのは、全米1000以上の大学に支部を置く共和党系の学生団体。4日間に及ぶイベントでは、トランプ大統領を支持する若者が全米各地から集結し、ライブ会場さながらの派手なパフォーマンスが繰り広げられた。

ジュリアーニ氏

さらにイベント初日にはウクライナ疑惑の中心人物で、トランプ大統領の顧問弁護士であるジュリアーニ氏が登場。この日は、トランプ大統領が弾劾訴追された翌日で、ジュリアーニ氏は弾劾への怒りをぶちまけた。「私は犯罪捜査の対象とされているが、罪を犯したことは決してない。弾劾は違法で道徳に反しそして憲法に違反する」(ジュリアーニ氏)。この発言に魅了され、ジュリアーニ氏をこぞって取り囲んだ若者たち。「弾劾は民主党の横暴だ」など、弾劾に対する批判的な意見を口にした。

そしてイベント3日目にトランプ大統領が姿を現すと、会場の盛り上がりは最高潮に。拳をあげて「USA」と叫び続ける若者を前に「アメリカは、再び勝利し再び世界で尊敬される。史上最高にだ。間違いない」と訴えるトランプ大統領。イベントに参加した10代の女性支持者からは、「2020年の選挙はトランプが勝つわ」と早くも“勝利宣言”が飛び出した。



声を上げ始めた保守系の若者たち

ジョン・リザックさん

フロリダ州のイベントに参加した1人、トランプ大統領を支持する団体に所属する、大学1年生のジョン・リザックさん(18)。ニューヨーク州の大学に通うリザックさんの周りには、リベラルな考え方の学生や教授が多く、これまで自分の居場所を見つけられずにいたという。
去年11月、それを決定づける出来事があった。キャンパス内でトランプ大統領への支持を呼びかけていたところ、リベラル系の学生たちに突如取り囲まれたのだ。銃を所持する権利を呼びかけていたリザックさんたち保守派の学生に対し罵声を浴びせかけ、激しく反発するリベラル系の学生たち。現場は一時騒然となり、まともな対話をすることはできなかったという。「保守派の学生は、皆恐れている。キャンパスで何をされるか分からず、声に出して自分は保守派だと言えなくなってしまうんだ」(ジョン・リザックさん)。

自分の主張を自由に表現できないことを理不尽だと感じたリザックさん。学内で定期的にミーティングを開き、自分と同じように不満や疎外感を抱く学生たちに、ともにトランプ大統領支持の声を上げていこうと訴えている。この日、ミーティングに参加した学生からは「リベラル派は人の話を聞かず僕のことをファシストだと言う」といった意見や「保守的なメッセージをどうやって女性やマイノリティーの人たちに広げていくか考える必要がある」といった意見が出された。リザックさんは、若者の間でトランプ支持が高まることに手応えを感じている。「保守の波は来る。愛国的なアメリカ・ファーストの波が我々の世代を飲み込むことになるだろう」(ジョン・リザックさん)。



次に狙う支持層は黒人

さらにトランプ陣営は、若者以外にも支持層を広げようとしている。最近、トランプ支持者の集会で目立つようになった「BLEXIT」の文字。BLACKとEXITを合わせた造語で、イギリスのEU離脱にかけて、これまで民主党の支持層だった黒人に民主党離脱を呼びかけるスローガンとして使われている。去年(2019年)11月にジョージア州で開かれたイベントでは、「2020年は黒人社会に変化をもたらす」と訴えたトランプ大統領。前回の大統領選挙で、8割以上がクリントン氏を支持したとされている黒人に向けてメッセージを発信し、民主党の支持基盤を切り崩そうとしているのだ。

トランプ大統領
「去年、民主党は不法移民を守るため、政府機関を閉鎖に追いやった。民主党は黒人社会のために闘ったことはない。そんな気もないのだ」

トランプ陣営は黒人向けの支援団体まで立ち上げ、草の根の活動を広げている。団体が訴えているのは、トランプ政権下での経済政策の成果。黒人の失業率はトランプ大統領就任時の7.7%から2ポイント以上も下がっているという。黒人の支持者は「トランプ大統領の政策のおかげで、黒人の失業率がかつてないほど改善した。人種は関係ない。アメリカがふたたび偉大になればいいのだ」とトランプ大統領に期待を寄せている。



どうなる?アメリカ大統領選

最新の世論調査では、10代20代の有権者の支持政党は、民主党が40%なのに対して、共和党は24%。若者全体の支持は民主党に向いている。それでもトランプ大統領は接戦州で勝つには若者の票を取り込むことが重要だと考えていて、支持を少しでも広げたい狙いがある。トランプ大統領の支持率は、おととし(2018年)春以降、40%を割り込むことはなく、いわゆる“岩盤支持層”は底堅さを見せている。今回の大統領選挙では、1980年代から1990年代に生まれた“ミレニアル世代”が、第2次世界大戦後の約20年間に生まれた“ベビーブーマー世代”を上回る。それだけに、若者の争奪戦が、選挙戦の行方を左右するとも言える。

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