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特集

2019年12月26日(木)掲載

アメリカ大統領選 意外な焦点“電子たばこ”

来年、行われるアメリカ大統領選挙。いま焦点があたっているのが、外交や経済政策ではなく国内の極めてニッチな問題を投票の決め手にする人たち、「シングルイシューボーターズ」の存在だ。2016年の大統領選挙では、1万票の差で勝敗が決まった接戦州もあり、今回も、共和党と民主党の両陣営が、票の取り込みに躍起となっている。その例のひとつが「電子たばこ」だ。愛好者が急増している一方で、健康への配慮から規制すべきだという主張も極めて強く、そうした有権者にとって譲れない争点となっている。「電子たばこ」の是非に揺れるアメリカの現場を取材した。

“電子たばこ販売禁止”相次ぐ

アメリカで若者を中心に急速な広がりを見せる電子たばこ。しかし、保健当局には、電子たばこの使用と健康被害とのあいだに関連があるのではないかと疑う報告が相次いでいて、死亡者の存在も指摘されている。このため、ニューヨーク州など9つの州では、電子たばこの販売の禁止に乗り出している。

規制を行っていない州のひとつ、アメリカ中西部のミシガン州。前回の大統領選挙では、トランプ大統領が1万票あまりの差で勝利した。この州には、46万人の電子たばこ愛好家がいるといわれている。

マーク・スリスさん

そのひとり、電子たばこ店を営むマーク・スリスさんは、前回の選挙で、トランプ大統領に投票した。しかしいま、「トランプ大統領は、電子たばこには規制をかけようとしている」として、民主党候補に投票することを考えている。



トランプ大統領 決断できず…

共和党陣営は、“電子たばこの規制”にどう取り組むのか。当初、規制の姿勢を示していたトランプ大統領。きっかけは、メラニア夫人から「13歳の息子が電子たばこに興味を持ち始めて心配だ」と言われたことだったという。

トランプ大統領
「米国人が不健康になることは放置できない。若者が影響を受けている」

そこで、トランプ大統領は9月、電子たばこの販売を禁止する方針を打ち出した。ところが、その2か月後、方針を撤回し、販売禁止を法制化する覚え書きへの署名を見送った。電子たばこ愛好家の票が離れるのを懸念した共和党の陣営から進言を受けた結果だったと指摘されている。

11月22日、ホワイトハウスでは、業界団体とともに、規制を求める立場の人たちも招いて議論が行われた。規制派が、「懸念すべきは、従来のたばことは比べものにならないほどの依存性だ。こうした製品はより多量のニコチンを強力に放出する」と主張するのに対し、業界団体は「中小企業は倒産する。規制されると資本のない小さな商店はやっていけない」と反論した。トランプ大統領は板挟みになり、「非常に大きな問題で複雑だ」と述べるにとどまった。いまだ結論を決めあぐねている状況だ。



選挙のカギを握るのは、電子たばこ愛好家?

調査機関が10月に行った調査では、電子たばこの利用者のうち83%が1つの争点で投票先を決める「シングルイシューボーターズ」だというデータが示された。電子たばこの規制撤廃を訴える保守系ロビー団体の専門家は、「選挙戦は、ホームスクール支援や電子たばこへの対応といったニッチな課題がカギになる。5000〜1万票で勝敗が決まる接戦州で、1〜2万票の違いが出てくる政策課題だ」と語り、自分たちの影響力の大きさを誇示した。

12月18日、ミシガン州で開かれたトランプ大統領の大規模な集会。氷点下10度の寒さの中、会場周辺には電子たばこの愛好家が集まった。

マーク・スリスさん

その中には「シングルイシューボーターズ」のひとり、スリスさんも参加していた。スリスさんは、規制をかければトランプ大統領には投票しないと声を上げた。

マーク・スリスさん
「米国には1300万人の愛好者がおり約80%がシングルイシュー有権者だ。 特に接戦州では確実に影響を及ぼすだろう」

3年前、ここミシガン州を制して大統領の座をつかんだトランプ大統領。家庭の事情をよそに、「シングルイシューボーターズ」の存在は無視できないほど大きな存在となっている。

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