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特集

2019年12月23日(月)掲載

パリ発 クリスマスごみゼロ作戦!

クリスマスムード漂うフランスのパリ。ルーブル美術館に隣接するチュイルリー公園の一部では、クリスマスマーケットが開かれている。立ち並ぶ白い小屋と、イルミネーションのコントラストが美しい。
この季節、パリは一段と華やかになり、買い物や外食が増えるなど、1年でもっとも消費が活発になる。しかし、その一方で問題となっているのが、使い終わった飾りや、大量の食べ残し、使い捨ての容器などのごみの処理だ。これを解決し、『ごみの出ないクリスマスを目指そう』とパリ市民が動き始めている。

安さの秘密はリサイクル

クリスマスシーズンを迎え、いま、パリ市内のおもちゃ屋さんは大盛況だ。プレゼントを選ぶ親子の会話も弾む。中でも、この店では通常価格の半額程度でおもちゃが買えるとあって、連日、人でごった返している。

なぜ半額という安さなのか。理由は、市民から寄せられた中古のおもちゃを販売しているからだ。運営しているのは環境保護に取り組むNGO。店を息子と訪れた母親は、「他の店より安いし、リサイクルのおもちゃを買って、世の中に役立てるので、よく来てます」。娘のプレゼントを買いに来た男性は、「コンセプトも働いている人たちも素晴らしいし、おもちゃもとてもきれいです」と満足気だった。

パリ近郊 おもちゃ屋の工房

パリ近郊にある、このおもちゃ屋の工房では、寄付された多くのおもちゃが棚に並んでいる。取材で訪れたとき、従業員たちが、そうしたおもちゃの部品を、ひとつひとつ、きれいにしていた。

左:綿棒で磨き上げる作業 右:煮沸消毒の作業

その仕事は、とても緻密かつ丁寧だ。綿棒で細かい部分を磨き上げ、煮沸消毒をして衛生面にも気を配っていた。

部品が欠けていれば、膨大な数のストックの中からパーツを補って、元の姿に戻す。寄付されるおもちゃの量は年々増え続け、ことしは75トンと6年前の7倍になる見込みだ。取り組みに賛同する40社あまりの企業では、社員に呼びかけておもちゃの回収や販売に協力するなど、支援の輪が広がっている。

おもちゃの再利用の背景には“プラごみ”問題

なぜ、おもちゃの再利用が増えているのか。その理由のひとつが、多くのおもちゃにプラスチックが使われていることだ。プラスチックごみは、海洋汚染の原因と指摘されるなど、その処理は国際的にも問題視され、パリ市民の目も厳しくなっている。このNGOのひとり、クレール・トーヌフィエさんは、「おもちゃのごみをなくすにはリサイクルが一番だという意識を消費者が広めてくれています。プラスチックの使用をやめるように促しているのは消費者自身なんです」と、活動の背景を説明してくれた。

子どもにもリサイクル方法を伝授

2019年11月30日 市民グループ開催の工作イベント

ごみを減らす取り組みはこれだけではない。先月、クリスマスをきっかけに子どもたちにリサイクルに関心を持ってもらおうと、市民グループが、工作イベントを開催した。参加した子どもたちは、ワインのコルクやボトルのキャップなどでクリスマスの飾りを作ることに夢中になって取り組んでいた。

主催者は、「ごみを減らすために、個人でも、職場でも取り組めることはたくさんあります。リサイクルの方法を教わり、実際にこうしてやってみると簡単だと分かります」と、イベントの意義を語った。

容器持参で!飲食店でごみ減らす取り組み

イタリア料理の惣菜店経営者ビクトリア・ロマンさん

飲食店でも、ごみを減らす取り組みが始まっている。町で人気のイタリア総菜店を経営するビクトリア・ロマンさんは、毎年、この時期、使い捨て容器のごみが増えることに頭を悩ませてきた。

保存容器を持参する客

そのビクトリアさんが思いついたのが、客に保存容器を持ってきてもらうこと。「サービスを変えずにごみを減らすことができます」とビクトリアさん。容器を持参した客に5%の値引きを実施したところ、効果はてきめんだった。容器持参について、客は―

「とても良い試みだと思います。 膨大なごみのことを私たちは意識すべき社会に生きてますから」(20代男性)。「プラスチックや使い捨てのものを使わずに済むので地球にとっていいことです」(40代男性)とおおむね好評だ。しかし、もう一つ心配事がある、食べ残しだ。

クリスマスの時期、店側は量を多く作り、客側もいつもより多くの総菜を買いがちで、その結果、「売れ残り」や「食べ残し」が増えるという。そこで、ビクトリアさんの惣菜店では、仕込む量を調節。客に対しては、普段から適度な総菜の量を提案するよう心がけているという。「お客さんの話を聞いて、料理の量を提案するようにしています。買いたい欲求と食欲のバランスをとってもらうように、ちょうど良い適量を選んでもらいます」(総菜店の経営者ビクトリア・ロマンさん)。

市民意識の高さが動かしたマクロン政権

市民レベルでの自主的な取り組みが進んでいるフランス。こうした意識の高まりは、政府も動かし始めている。フランスのマクロン政権は、ことしプラスチックの再利用やリサイクルを進める取り組みを、おもちゃメーカーにも義務づけることを決めた。今、そのための法案が議会で審議されていて、近く可決する見込みだ。政権幹部は、社会を大きく変革すると意気込みを示している。

2019年11月20日フランス議会 ポワルソン副環境連帯移行担当相

「法案の狙いは、より少なく生産し、資源を守ることです。過剰生産との闘い、浪費との闘いなんです。すべてを使い捨てにする社会から、すべてのものを再利用する社会へと移行するのです」(ポワルソン副環境連帯移行担当相)。現在、審議中の法案では、服や雑貨など食品以外の売れ残りを廃棄することを禁じている。盛り上がるクリスマスムードとともに高まるパリ市民のごみゼロへの意識、今後、我々のお手本になるのかどうか、見守りたい。

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