BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

特集

2019年11月29日(金)掲載

ブラジル “爆買い”中国へ熱視線

中国による農産物の“爆買い”で、ブラジル経済が潤っている。貿易摩擦の影響でアメリカからの農産物の輸入を制限している中国が、調達先をブラジルに切り替えているのだ。就任当初から中国批判を繰り返してきたボルソナロ大統領も、経済の立て直しを迫られ、中国からの投資を歓迎している。
急速に進むブラジルの“中国シフト”を追った。

ブラジルにあふれる「メイドイン中国」

ことし6月。中国の大手スマートフォンメーカー「シャオミ」が、ブラジル最大の経済都市サンパウロに1号店をオープン。店の前には、開店の1日前から長蛇の列ができた。中国製のスマートフォンは、アメリカなどのメーカーと同じような機能でも、値段は2割から3割程度安く、ブラジル人の人気が高い。

インフラにも中国企業が進出している。
去年までに大手タクシー会社3社を中国企業が買収し、タクシーアプリの運用を始めた。アプリは、いまブラジルで最も使われているタクシーアプリの一つで、都市部での利用者のシェアは、約3割に上ると見られている。
ブラジルには、「メイド・イン・チャイナ」があふれているのだ。

BRICS首脳会議(2019年11月14日)

こうした中、今月(11月)、ブラジルの首都ブラジリアで開かれたBRICS首脳会議。ブラジルのボルソナロ大統領は満面の笑みで中国の習近平国家主席を迎えた。両国は、関税を免除し合う仕組みを作ることで一致。中国側が、ブラジルの大手石油会社に投資する約束も交わした。

ボルソナロ大統領
「習主席がブラジルを訪れて下さり、大変光栄だ。中国は最高のパートナーだ」

習近平国家主席
「ブラジルとの緊密な関係をより深めて、両国の利益と発展を進めていきたい」

ブラジルにとってこの10年間、中国は最大の貿易相手国となっている。去年の輸出額に占める割合は、26.7%と、2位のアメリカの2倍以上に上っている。



米中貿易摩擦が“渡りに船”に

ボルソナロ大統領は、就任前の去年、台湾を訪問した際、台湾を1つの国と認めるような発言をするなど、中国への警戒をあらわにしていた。

ボルソナロ大統領
「日本や韓国に続き、訪問先に選んだのが台湾だ。これは神様が導いてくれたものだ」

さらに中国企業が、ブラジルの資源やインフラ関連の会社を買収していることを批判。国民に「中国は、ブラジルを買い占めようとしている」と訴えた。
ところが、就任から3カ月。中国に対する姿勢が一変する。
経済の立て直しに有効な手だてを打てずにいたボルソナロ政権に対し、賃上げを求める労働団体などがデモを繰り返し、批判が高まったのだ。そこに、貿易摩擦が激しくなるアメリカに代わり、農作物や資源を確保できる相手を探していた中国から、声をかけられた。ボルソナロ大統領にとって、まさに「渡りに船」だった。

先月(10月)には、ボルソナロ大統領みずから中国を訪問。習主席と会談し、ブラジルとの取り引きの拡大を訴えた。経済成長に向けたお互いの思惑が一致したことで、両国間の取り引きが加速し始めたのだ。



“中国の爆買い”で経済潤う

“中国の爆買い”によって、最も活性化しているのが農業だ。特に大豆は中国への輸出量が増え、いまや輸出全体の6割に上る。

エミリオ・ケンジさん

大豆農家のエミリオ・ケンジさん(60)。米中貿易摩擦の影響で、去年からことしにかけてブラジル産の大豆取り引きが拡大。そのおかげで、価格が約15%上昇したという。エミリオさんは、需要が今後も伸びると見て、1台3000万円の機械を2台購入。大豆の栽培面積をさらに増やす計画だ。「中国人がよく買ってくれてとても助かっている。中国が安定的に大豆を買ってくれると、私たちも機械などを購入する投資ができる」(エミリオ・ケンジさん)。
中国がブラジルから買い占めようとしているのは、大豆だけでない。これまでほとんど中国に輸出してこなかった主要産業のコーヒーも、来年から大規模に輸出することになった。背景には、中国でし好品としてコーヒーの人気が高まり、消費量がこの5年でほぼ2倍に増えていることがある。ことし8月には、ブラジルの6つの州の知事と、コーヒーメーカー30社の代表が北京を訪問。サンパウロ州は、中国に月500トン以上のコーヒーを輸出することで合意した。訪問団に参加したメーカーの一つは、ことしから月に100トンの輸出が決まった。いまや中国は、アメリカを抜いて売り上げの30%を占める最大のビジネス相手になっているという。「中国は有望な市場だ。今後もどんどん伸びていくだろう」(コーヒーメーカー社長)。



中国の思惑は

中国には、アメリカとの貿易摩擦が続く中、「アメリカの裏庭」ともいわれる南米で一定の影響力を持ち続ける狙いがあると見られる。南米では、中国が支援するベネズエラやボリビアなどが政情不安に陥る一方で、アルゼンチンでは、親中派の政権が誕生するなど、情勢がめまぐるしく変わっている。中国としては、南米の大国ブラジルとの経済的な結びつきが、アメリカに対する大きなけん制になるとして重視しているのである。ボルソナロ大統領も、ブラジル国内の景気が冷え込む中、中国が内政に干渉してこない限り、関係を強化し、投資を歓迎し続ける姿勢をとるとされている。

ページの先頭へ