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特集

2019年11月26日(火)掲載

香港ウォッチ第9回 香港民主派 区議会議員選挙で歴史的な勝利

「よくて五分五分」という事前の予想を覆し、香港の区議会議員選挙で政府に批判的な立場をとる民主派が8割以上にあたる385議席を獲得し、圧勝した。選挙前は政府寄りの親中派が7割を占めていた勢力図を一気にひっくり返すことができたのはなぜか。11月中旬に現地を取材した前香港支局長の松田キャスターが分析する。

専門家も予想できなかった民主派の圧勝

11月24日に行われた香港の地方議会にあたる区議会議員選挙。香港メディア「香港01」は452議席のうち、民主派が8割以上にあたる385議席を獲得した一方、親中派は59議席、その他は8議席で民主派が圧勝したと大きく伝えた。

2019年11月25日 当選を喜ぶ民主派候補者

有権者が、市民の要求を拒む政府や激しい取り締まりを続ける警察にノーを突きつけた形で、これまでの民主派3割、親中派7割だった勢力図が一気にひっくり返った。民主派の勝利で政府トップの行政長官を決める選挙委員1200人のうち、区議会議員に割り当てられている1割近い117人を民主派が親中派から総取りできるため、大きな影響力を握ることになる。今回の選挙では、過去最多の1090人が立候補したほか、有権者登録した413万人のうち、新たに登録した人がおよそ40万人と1割を占めるなど、これまでにない動きがみられたうえ、政府トップの林鄭月娥行政長官の支持率は11%と過去最低水準に低迷していたことから、選挙前から民主派が議席を伸ばすという見方が大勢だった。

2019年11月12日 金融街での抗議活動

しかし、激しい抗議活動で交通網がマヒし、市民生活に大きな影響が出たほか、組織力と資金力が豊富な親中派に若者が中心の民主派がどこまで戦えるのか不安視する声もあった。

2019年11月14日 左:香港中文大学の馬獄准教授

香港の政治を長年研究してきた香港中文大学の馬嶽准教授でさえ「民主派は楽観できない。よくて五分五分だろう。もし、民主派が200議席とったら大勝利だ」と指摘していたほどだ。

民主派圧勝の要因は?

なぜ、民主派がここまで圧勝したのか。その要因として、市民の関心の高さと選挙制度の2つが挙げられる。1つ目のポイントは、市民の選挙への関心の高さを示すバロメーター、投票率だ。今回71.2%と過去最高だった前回4年前の47.01%を24ポイント以上も上回る結果となった。

2019年11月24日 投票所前の行列

これは、1997年に香港が中国に返還されてから行われた選挙の中でも過去最高だった2016年の議会にあたる立法会選挙の投票率58.28%も大きく上回る歴史的な数字だ。どの投票所でも抗議活動を警戒する警察官の監視のもと、有権者が投票のため長い列を作り、民主主義を求める人々の思いが強く伝わってきた。2つ目のポイントが選挙制度だ。香港では、地方議会にあたる区議会の選挙にもかかわらず、選挙区ごとに1人が選出される小選挙区制が採用されている。有権者登録をした413万人が、18の区議会のあわせて452議席を選ぶので、1議席あたりの有権者は1万人強だ。

2019年11月24日 民主派の候補者を応援する周庭氏と黄之鋒氏

小選挙区制は、政権交代が起きやすいとされ、民主派はすべての選挙区で親中派の対立候補を立て、政府に対して抗議の意思を示そうと呼びかける戦略をとった。前回の4年前の選挙では、68議席が親中派の無投票当選となったのとは対照的で、今回の選挙がいわば抗議活動への「住民投票」だと訴える民主派の声に、多くの市民が1票で応えたともいえよう。この結果、総得票数の割合は民主派6割、親中派4割だったにもかかわらず、民主派が8割以上の議席を占める歴史的な勝利につながったのだ。

選挙が終わり 今後はどうなる?

そもそも区議会は地元の開発計画や福祉など生活に関わる身近な問題を扱うことが多く権限は大きくない。しかし、今回の選挙結果が、香港政府にとって大きなプレッシャーとなるのは間違いない。民主派の候補の多くが抗議活動を通じて求めてきた「民主的な選挙の実現」や警察による取り締まりの対応などを検証する「独立調査委員会の設置」などの要求を訴えに掲げて当選しただけに、民意を背景に政府への要求を強めていくだろう。さらに、来年秋には、立法会の選挙が予定され、今回示された政府への反発が再び民主派の伸長に結びつく可能性もある。

2019年11月24日 投票する林鄭月娥行政長官

その一方で、香港政府の背後には中国・習近平指導部が控える。板挟みとなった香港政府が、民主的な選挙の実現など、市民が抗議活動で訴えてきた要求を簡単にのむとも思えない。民意がどこまで政治に反映されるのか、今後の動きを注視していく必要がある。

<月曜~金曜 午前8時00分~午前8時50分(再放送:午前11時00分~午前11時50分)BS1「キャッチ!世界のトップニュース」で放送したキャスター解説の内容に加筆して掲載します>

経歴

国際部を経て広州支局、香港支局で勤務。香港が中国に返還されてから20年を迎えた記念式典で習近平国家主席の演説や林鄭月娥行政長官の就任式を取材したほか、5年前の民主的な選挙を求めた抗議活動「雨傘運動」の参加者たちのその後を追ったリポートを放送。このほか、香港の議会にあたる立法会選挙や中国の共産党大会と全国人民代表大会、台湾総統選挙など中華圏の政治、経済、社会の最前線を見つめてきた。

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