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特集

2019年11月18日(月)掲載

パリ同時テロから4年 新たなテロで深まる苦悩

130人が犠牲になったフランス・パリの同時テロから4年。イスラム過激派の影響を受けて武装した若者たちが、コンサートホールやレストランなどを襲撃した事件は、世界に大きな衝撃を与えた。このテロの後、フランスでは、警察の権限を大幅に強化するテロ対策法を導入するなど取り組みを進めてきた。
しかし先月、市民を守るはずの警察職員自身がテロを起こすという、想定外の事態が発生した。社会に潜むテロの脅威にどう向き合うか。揺れるフランス社会の現状を取材した。

「想定外」だった警察内部のテロ

10月、パリの中心部にある警視庁の庁舎内で、警察職員の男が、突然同僚の4人をナイフで殺害した。その後の捜査で、男は、約10年前にイスラム教に改宗し、過激な思想に染まっていたことがわかった。そして、過去にテロを支持するような発言を周囲にもらしていたことや、ここ数か月は、普段、洋服ではなく、イスラム教徒がモスクに行くときの伝統的な服を着ていたことも明らかになっている。

フランス議会では、事件の調査委員会を設立。治安維持の中枢である警察でのテロを防げなかったことに、議員からは厳しい意見が相次いだ。極右政党「国民連合」のルペン党首は「あなたたち警察は、ちゃんと機能していない。容疑者は、テロを容認する発言をしたのだから、危険な兆候として報告できた」と怒りをあらわにした。これに対し、パリ警視庁のラルマン総監は、「これまで我々は警察の外を見て、過激派の監視や治安対策を行ってきた。私自身、テロの知らせを受けたとき、外部から攻撃されたと思った」と想定外の事件だったことを認めた。

マクロン大統領

マクロン大統領は、これまで以上に厳しい過激派対策を進める考えだ。10月に国内のイスラム教の指導者らと面会し、過激な思想に染まっている人物の洗い出しへの協力を要請。過激化するときにどのような兆候をみせるかなどの情報を共有するよう求めた。

マクロン大統領
「イスラム過激派とその死の思想に対しわれわれは容赦しない」

“過激化の兆候”見極めは

過激派対策を行う企業 メデリック・シャピト代表

過激な思想に染まった人物を見つけ出そうという動きも始まっている。3年前から、自治体や企業などに過激派対策の訓練を行っている民間企業には、警視庁での事件を受けて、問い合わせが相次いでいるという。シャピト代表は、パリ警視庁での事件後、企業のトップたちが『警察で起きるなら、自分の企業でも起きるのではないか』と懸念を強めているという。

シャピト代表は、各地で講習会を開催。「過激化しているか見極めるには、行動や服装、言葉の変化に注意を払うことが重要だ」と、参加者に説明している。「ある人物が、これまでひげを生やしてなかったのに、宗教的な理由で生やしたら、過激化の兆候だといえる」(過激派対策を行う企業 シャピト代表)。

しかし、こうした動きに対しては、見た目で過激派と決めつけ、イスラム教徒への偏見を助長するものだと反発の声も上がっている。10月末には、パリ市内に約1000人が集まり抗議集会を行った。18歳の女性参加者は「習慣・文化・服装で人を判断するなんて、非人道的でばかげている」と怒りをあらわにした。
長年、過激派を取材してきたジャーナリストは、フランス社会で深まる分断がテロ対策を進めるのを難しくしていると指摘する。「極左は、イスラム過激派やテロに沈黙し、極右は、イスラム教徒はすべてテロ容疑者だと言う。フランスは、国の安全に関わることですら、一致できなくなっている」(モハメド・シファウィ氏)。
差別や偏見にとらわれないようにしながらも、人の命や生活を脅かすテロを防がなければならない。過激な思想がどこに潜むか分からないという新たな恐怖の中、フランス社会は重い課題を背負っている。

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