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特集

2019年11月15日(金)掲載

ペルシャ湾で世界最大規模の合同軍事演習

アメリカとイランの間で緊張が続く、中東のペルシャ湾。アメリカは11月7日、ホルムズ海峡などを通過する船舶の安全を確保するための有志連合の司令部を立ち上げた。その直前にペルシャ湾などで行われたアメリカと各国との国際軍事演習に日本のメディアで唯一取材をする機会を得た。有志連合とは別の枠組みのため、「イラン」を名指しこそしないものの、緊迫するイラン情勢を強く意識したものと感じさせる内容だった。(吉永智哉ドバイ支局長)

アメリカが主催 50か国あまりが参加

NHKなど一部メディアに公開された演習の実施場所は、中東のバーレーン沖のペルシャ湾だ。バーレーンには、中東地域を管轄するアメリカ第5艦隊の司令部があり、アメリカにとっても、同盟関係にあるサウジアラビアやバーレーンなどのアラブ湾岸諸国にとっても地域の防衛の要となっている。私たちは、バーレーン国際空港の片隅にあるアメリカ軍の航空基地に集められ、アメリカ軍のヘリに乗り、沖合へと向かった。

吉永智哉ドバイ支局長

演習が行われたペルシャ湾付近の海域では、ことし、タンカーに対する攻撃が相次いでる。6月には、日本の海運会社のタンカーも攻撃を受けた。アメリカは、これらの攻撃の背後には、イランの関与があると主張しているが一方の、イランは、完全に否定している。結局真相は、今になっても明らかになっていない。ただ、攻撃の結果、地域の緊張が高まったことは事実だ。

今回、取材したアメリカ軍が主催する国際海事演習「IMX」は、10月下旬から緊迫が続く情勢下で実施されてきた。50あまりの国が参加し、6回目の開催になる。参加国の数では、世界最大規模の演習だという。参加しているのは、アメリカ主導の有志連合に加わっているサウジアラビアやバーレーン、イギリスなどもいれば、日本やフランスなど有志連合への参加を見合わせている国も含まれている。

日本は、海上自衛隊の掃海母艦と掃海艇の2隻が参加。当初の予定では、自衛隊の艦艇での取材となるはずが、取材日当日になって移動手段である軍用ヘリの運用の問題で海上自衛隊の艦艇にいくことはできないとキャンセルになった。ただ、別のイギリスの艦艇に向かう途中、空からペルシャ湾を航行する掃海母艦の様子を一瞬カメラで押さえることができた。



“航行の自由確保”各国連携強化へ

私が乗っていたアメリカ軍のヘリが着艦したのは、有事に備えて常にペルシャ湾に展開しているイギリスの揚陸艦だった。揚陸艦には、日本を含む10か国から軍人や自衛隊員が乗り込んで、機雷の探知や処理の訓練を日々行っている。海上自衛隊の隊員は、機雷などを探知する無人潜水機を持ち込み、機材の使い方や、発見の仕方などノウハウを共有していた。ホルムズ海峡封鎖を念頭にした想定などについては、詳しくは教えてもらえなかったが、チームの責任者は、演習目的について、次のように話してくれた。

海上自衛隊 小田浩司 一等海尉

「各国の部隊が集まってこの海域で演習を行うことで、航行の自由を確保することにつながると思います。言葉は各国違いますが、積極的にコミュニケーションをはかって連携して、成果が得られるように訓練しています」

演習を主催したアメリカ軍の担当者も、中東地域での航行の自由を確保するため、各国と連携を深めることの意義を強調した。

アメリカ海軍担当者

「機雷は、どの種類の船舶にも脅威となります。我々は、技術も使い方も共有できる環境にあります。お互いに影響を与えることは、すべての国に有効です」



アメリカ 有志連合司令部を立ち上げ

ペルシャ湾での機雷の探知・除去訓練というとイランを巡る情勢を意識せざるを得ない。緊張が高まるとイランはホルムズ海峡の封鎖も辞さない姿勢を度々示してきたからだ。しかし、様々な立場の国が参加する国際軍事演習である手前、話を聞いたいずれの国も、イランを名指ししないよう、相当気を遣っている様子が伺えた。

アメリカは、各国を巻き込みながら、イランの包囲網の形成を進めたいものの、その思惑通りには進んでいないのが現状だ。今回の取材を終えた2日後に、アメリカは、ホルムズ海峡などを通過する船舶の安全を確保するための有志連合の司令部の立ち上げをバーレーンで行った。ただ、参加したのは、7か国にとどまっている。一方、日本は、有志連合には参加せず、独自の取り組みとして自衛隊の派遣を検討している。イランを巡る緊張がどうなるのか、各国の動向をにらみながら、注視する必要があると感じる。

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