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特集

2019年11月5日(火)掲載

サウジアラビア アニメ制作にも改革の波

中東のサウジアラビアでは、イスラム教の厳格な解釈のもと、娯楽が長い間厳しく制限されていた。しかし近年、王位継承者で改革の旗振り役を担うムハンマド皇太子が文化の開放路線にかじを切り、去年、約35年間禁止されていた映画館が復活。ことし7月には、国内初の遊園地やサーキットなどを整備した超大型テーマパークの建設計画が発表された。さらに今、日本アニメの大ファンだというムハンマド皇太子の後押しで、サウジのアニメ事情が大きく変わろうとしている。

日本のアニメが大人気!

サウジアラビア西部の都市ジッダは首都リヤドに次ぐ大都市だ。

ジッダ最大のショッピングモール

そのジッダ最大のショッピングモールに入っているのがアニメショップ。

アニメショップ

店内には所狭しとフィギュアが並び、多くの家族連れや若い男女などが店を訪れていた。

取材した佐野圭崇記者

萌えキャラから、なつかしのロボットものまで日本のフィギュアがずらり。何を買いに来たのか、お客さんに聞いてみると・・・。

若い男性
「『ワンピース』のフィギュア」

若い女性①
「『進撃の巨人』のまんが」

若い女性②
「『コナン』のノートよ!お気に入りなの」



厳格なイスラム教の国サウジを改革へ

サウジアラビア メッカ「カーバ神殿」

聖地メッカを擁するサウジアラビアは、厳格なイスラム教国。

ヒジャブを着用した女性たち

イスラム教の厳しい解釈は国の仕組みにも徹底されていて、欧米などの映画やアニメの多くも堕落につながるとして認められてこなかった。

ムハンマド皇太子

そんなサウジアラビアを今、大きく改革しようとしているのが王位継承者のムハンマド皇太子だ。去年、サウジアラビア政府を批判していたジャーナリストが当局者に殺害される事件で関与が取りざたされる剛腕の権力者というイメージがある一方、日本のアニメが大好きで、「ワンピース」や「機動戦士ガンダム」がお気に入りといわれている。 


皇太子の後押しで国産アニメに挑戦!

リヤド アニメ制作会社「マンガプロダクションズ」

その皇太子の後押しのもと、サウジアラビアのアニメ事情は今、大きく変わろうとしている。ムハンマド皇太子の財団の傘下にあるアニメ制作会社が、これまでほとんどなかったサウジアラビアの国産アニメに挑戦している。

リヤド アニメ制作会社「マンガプロダクションズ」ブカーリ・イサムCEO

アニメ制作会社「マンガプロダクションズ」のCEO、ブカーリ・イサムさん(41歳)は、要人の来日の際は日本語の通訳を務める「日本通」。自身も日本への留学でマンガが好きになったというブカーリさんは、ムハンマド皇太子の財団と「マンガプロダクションズ」の意義について日本語で語ってくれた。「ムハンマド皇太子が次世代の人びとを育てるために、この財団を作りました。我々はコンテンツという側面から、次世代の教育・育成に貢献しています」

いま、ブカーリさんは、あるプロジェクトを進めている。サウジアラビアの古代文明を舞台にした映画『ザ・ジャーニー』の制作だ。プロジェクトは日本とサウジアラビアのアニメーターによって進められ、日本と中東各国で来年2020年の上映を目指している。ブカーリさんはこの映画がこれまで日本のマンガを輸入してきたサウジアラビアが今度は日本へマンガを輸出する1つの成功例として、歴史に残るのではと意気込みを語った。


高いハードル 当局の厳しい審査

アニメ制作会社「スタジオ・タニム」マジド・アズライCEO

しかし、お国柄ゆえのハードルもあるという。アニメ制作会社「スタジオ・タニム」のCEOマジド・アズライさん(24)に、そのハードルについて話を聞くと、テレビで放映するアニメや書店に並ぶマンガはすべて、イスラムの教えに照らして適切かどうか、当局の審査を受けなければならないという。

マジドさんと作画担当者らとの編集会議

例えば女性の描写について。当局の厳しい審査があるので、マジドさんは作画担当者らと女性の描写について会議で細かくチェックする。

マジドさん
「この女性忍者はサウジに来るならヒジャブをつけないとだめかな?」

作画担当者
「でも忍者はもともと頭髪を覆っているから、ヒジャブをつけても問題ないだろう」

試行錯誤の結果、マジドさんたちは、女忍者にヒジャブをつけることにした。


これからの“サウジアニメ”

アニメ制作に対して当局による厳しい審査がある中でも、マジドさんはデリケートな社会問題に果敢に挑んでいる。その挑戦とは、“若者のテロ”をテーマにした作品の制作だ。イスラム過激派が聖典コーランを極端に解釈し、若者にテロを促す実態を描き、社会に警鐘を鳴らしたいと考えている。「若者たちを洗脳し、悪事を正しいと信じ込ませる人々がいるのです」そしてマジドさんはアニメ制作に対する強い思いも話してくれた。「この国ならではのマンガやアニメを制作しているんです。子どもだけではなく、若者向けにも」

女性アニメーター

訪れた複数のアニメ関連企業では女性社員もいて、男女が一緒に働いているシーンを多く見かけ、女性の社会進出がより進んでいる印象を受けた。アニメという新たな分野だからこそ、より障壁が少ないのかもしれない。文化の開放が進み日本のアニメが広く受け入れられるようになった今、サウジアラビア発の作品が大きく羽ばたこうとしている。

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