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特集

2019年11月1日(金)掲載

米大統領選挙 混迷極める民主党候補者選び

2020年のアメリカ大統領選挙まで1年あまり。与党・共和党は、トランプ大統領が再選を目指す。対する野党・民主党の候補者指名争いは、まれに見る乱戦。いまも18人の候補者が、我こそはと主張を掲げている。その中で、先頭争いをしているのが、中道・穏健派のバイデン前副大統領と、富裕層への増税や国民皆保険などを掲げる、左派のウォーレン上院議員だ。アメリカの政治情報サイト、リアル・クリア・ポリティクスがまとめた各種世論調査の平均値によれば、5月の段階では、バイデン氏がウォーレン氏に30ポイント以上の差をつけ、一貫して首位を走ってきた。しかし、先月(10月)上旬には、ウォーレン氏が初めて首位に立ち、一躍、注目候補に踊り出た。それぞれの選挙戦を取材した。

“ウクライナ疑惑”バイデン氏に飛び火

2019年10月4日 ロサンゼルス バイデン前副大統領

指名争いのトップを走り続けてきたバイデン前副大統領(76)。自分こそがトランプ大統領に勝てる候補だと訴えてきた。10月9日、ニューハンプシャーでの支持者集会では、「トランプ大統領はアメリカを裏切っており弾劾に値する」と声高にトランプ大統領を糾弾した。しかしここにきて、ウクライナをめぐる疑惑がバイデン氏にも持ち上がっている。

2019年10月17日 ニューハンプシャー州 トランプ大統領

トランプ大統領は、バイデン氏の息子がウクライナの企業から巨額の利益を得ていたと主張。問題があるのはむしろバイデン氏だと批判を続けている。

「バイデンがウクライナ政策を担当していた時に、ウクライナの会社から息子に巨額の報酬を与えた。これを何と呼ぶか知ってるかい?賄賂だ!」

バイデン氏の支持者 チャック・ホウェンスタインさん

ウクライナ疑惑はバイデン氏の支持者にも影を落としている。ペンシルベニア州に住むチャック・ホウェンスタインさん(63歳)は、今回の選挙で、30年以上の議員経験のあるバイデン氏に投票するつもりでいた。

「バイデン氏はまともで、モラルがある人物だと思います。私は大統領として皆から尊敬される人物を望んでいます。」

しかし、一方で、ウクライナ疑惑で本当にやましいところがないのか、バイデン氏は徹底して調査されるべきだとも考えている。その結果しだいでは支持を変えると言う。

「バイデン氏の息子は何の経験もないのに、どうやって毎月5万ドルを稼ぐ仕事に就くことができたのでしょうか?何か問題がある気がします。シロクロはっきりさせる必要があります。」



ウォーレン氏 人気の理由とは?

2019年10月18日 バージニア州ノーフォーク ウォーレン上院議員

ウクライナ疑惑で防戦一方のバイデン氏に対し、勢いづいているのが、ウォーレン上院議員だ。先月18日のウォーレン氏の選挙集会では、開始の2時間前の段階ですでに参加者の長蛇の列が出来ていた。ウォーレン氏の人気の理由とは何か。それは有権者が抱く「共感」にある。その最大の要因は、ウォーレン氏の幼いころの体験だ。ウォーレン氏は、各地で演説をする際、幼少期の苦しかった生活を一番最初に語る。

「父は重い心臓発作に襲われました。家族で使っていた車を失った日のことは今も覚えています。『住宅ローン』や『差し押さえ』という言葉をそのとき初めて知りました」

ウォーレン氏の幼少期の写真

病に倒れた父親の代わりに、ウォーレン氏の母親は最低賃金で働き、貧しいながらも家族を養った。ウォーレン氏は、そうした自らの体験をもとに、社会保障の充実の必要性を訴えている。

「(当時)私たちの家族は最低賃金の仕事で救われました。しかし今のアメリカの最低賃金では母親と赤ちゃんを貧困から救えません。それは間違っている!だから私は闘う!」

ウォーレン氏

さらに、ウォーレン氏が鮮明にするのが大企業との対決姿勢だ。大企業は富を独占し、政治を牛耳っていると鋭く批判する。

「ワシントンの決定は金に左右されます。ウォール街とワシントンの関係を断ち切らなければなりません。そのための計画を私は持っています!」

フェイスブック ザッカーバーグCEO

ウォーレン氏の対決姿勢の矛先は、フェイスブックやグーグルなど大手IT企業にも向けられている。

「巨大企業を解体し反トラスト法(独占禁止法)を適用しましょう。ターゲットはIT企業!マーク・ザッカーバーグ!あなたのことよ!」

ウォーレン氏に名指しで解体すると言われたフェイスブックの創設者、ザッカーバーグCEOも黙ってはいない。

「彼女が大統領になれば、最悪だ」

2人の対決は大きな関心を呼び、「闘う候補」としてのウォーレン氏の株を上げることにつながった。



格差への反発 ウォーレン氏支持者たちの思い

左:マシュー・ハートさん 右:メリッサ・ブラザーズさん

大企業にきぜんと立ち向かうウォーレン氏の“格差の少なかった、かつてのアメリカの姿を取り戻そう”という主張が、経済成長の恩恵を感じられない人々の共感を呼んでいる。ウォーレン氏を支持するマシュー・ハートさん(28歳)と、職場の同僚のメリッサ・ブラザーズさんは、トランプ大統領のままでは、自分たちの暮らしが苦しくなる一方だと不満を募らせている。

「生活費は上昇する一方です。アメリカ社会はいま、ものすごい速さで悪い方向に向かっていると感じます」(ウォーレン氏の支持者マシュー・ハートさん)

集会参加者と写真撮影するウォーレン氏

ハートさんは、ウォーレン氏の人柄にも共感。集会に来た参加者との写真撮影に何時間でもつきあうウォーレン氏の誠実さに信頼を置いている。

左:ハートさん 右:ウォーレン氏

集会などで撮影した写真をハートさんたち支持者は、自分のSNSに投稿。ウォーレン氏の評判が広まるきっかけにもなっている。そして、さらにウォーレン氏の人気を後押しする要因がもうひとつ。ウォーレン氏が“有権者に直接語りかけること”を重視している点だ。“有権者に直接語りかける”とはどういうことか、ハートさんの同僚でウォーレン氏支持者のブラザーズさんが教えてくれた。

ウォーレン氏の支持者 メリッサ・ブラザーズさん

「ウォーレン氏は新しい政策を打ち出すたびに、携帯電話にテキストで送ってくれます。今朝は教育改革についてでした。他の候補よりもずっと政策内容や行動が具体的だと感じます。」

ハートさんたちはウォーレン氏なら、自分たち庶民の生活をわかってもらえると期待している。

「貧しい家庭で育ったウォーレン氏なら、今のアメリカの生活を理解しているように感じます。金持ちのトランプ大統領には、庶民の現実はわからないのです。」

ウォーレン氏

最近の世論調査では再びバイデン氏にリードを許しているウォーレン氏。民主党の候補者選びは当分混迷を極めそうだ。「トランプ大統領を倒す」使命に向かって誰がどう抜け出すのか、候補者たちの動向から目が離せない。

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