BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

特集

2019年10月3日(木)掲載

いまこそ“表現の自由”を求める闘い

2019年10月1日、建国70年を迎えた中国。北京では盛大な軍事パレードと祝賀行事が行われ、お祝いムードに染められた。その一方で、香港では抗議活動は収束が見通せないまま深刻化している。こうした自由を求めた抗議活動が40年前の1979年、北京でも行われた。当局に対して表現の自由を求める芸術家たちの抗議デモ、のちの天安門事件にも影響を与えたとも言われている。2019年9月、40年前のデモのきっかけとなった美術展に関する記録「星星美展」という本が作られた。なぜその本が作られたのか。中国芸術家たちの思いを取材した。

「星星美展」 “表現の自由”闘いの記録

9月28日北京 「星星美展」出版記念パーティー

先月(9月)、北京のレストランで開かれた「星星美展」の出版記念パーティーには、芸術家やその関係者など約20人が集まった。

芸術家の黄鋭さん

美術展の記録をまとめた「星星美展」。企画した芸術家の黄鋭(こうえい)さん(66)は40年前、芸術家たちが行った抗議活動の中心人物。“表現の自由を求めて闘った当時の記憶を風化させたくない”とその出版を決意したという。

「自由な創作と真実の表現は、人生で最も重要な要素です。私たち芸術家は自由であるべきです」(芸術家の黄鋭さん)



1979年10月1日 “建国以来初”の抗議デモ

1979年北京 黄さんが企画した美術展「星星美展」

黄さんが北京中心部の公園で、美術展を企画したのは1979年9月、26歳の時だった。中国にも新しい芸術があることを多くの人に知ってもらおうと、仲間の若手芸術家とともに開催した。

「星星美展」の来訪者

文化大革命が終わり、改革開放政策が始まった頃で、作品の持つ自由な雰囲気に触れようと、約3万人が美術展を見に来たという。しかし、当局の許可を得ていなかったことなどを理由に、美術展はわずか2日で中止に追い込まれた。

1979年10月1日 「星星美展」中止への抗議デモ

憤慨した黄さんは、中国の建国記念日にあたる「国慶節」の10月1日、大勢の仲間とともに抗議デモを決行。

「自由を求めて行った抗議デモとしては、建国以来初めてでした」(芸術家の黄鋭さん)

このデモの後、当局に美術展の開催を認めさせた黄さんたち芸術家は、国内外から注目される存在となった。



抗議デモ後の監視 天安門事件での衝撃

2019年9月北京 黄さんの自宅

抗議デモの後、黄さんに何が起きたのか。北京に住む黄さんの自宅を訪ねた。室内には、中国国内では、当局が展示を許可しないという絵画などの作品も数多く飾られていた。

黄さんの作品「目」

こちらの作品。デモを行った後の、黄さんたちを取り巻く状況を描いたもので、絵の中にある印象的な目を差して黄さんは言った。

作品「目」に描かれている目

「この大きな目は、公安のものです」(黄鋭さん)

集まっている若者たちの背後にあるのは、彼らを監視する当局の「目」。芸術家たちの状況が、暗い色調で描かれている。

日本滞在時の黄さん

抗議デモのあと、あらゆるところで、当局の監視を受けていたという黄さん。創作活動への危機感から、当時、結婚していた日本人女性を頼りに1984年、日本へ移住。

1989年5月15日 天安門広場に集結する若者たち

日本で生活していた1989年5月、北京の天安門広場に民主化を求める大勢の若者たちが集結した。

1989年5月31日 天安門広場でカンパを渡す黄さん

テレビ画面から流れる、自由を求める若者たちの姿に自分を重ねた黄さん。日本で、カンパを集め、天安門広場にいた若者たちに直接届けに行った。しかし、黄さんが広場を離れた翌日の1989年6月4日…。

1989年6月4日 天安門事件(当局の発砲から逃げる群衆)

中国軍が若者たちを武力で鎮圧。

1989年6月5日 戦車の前に立ちはだかる男性

大きな衝撃を受けた黄さんは事件後、流された血を連想させる赤や黒を使った作品などを数多く制作。

天安門事件をテーマにした黄さんの作品

「天安門事件に、とても大きな影響を受けました。私は芸術家ですが、政治にも関心があり、作品には政治の要素も入っています」(黄鋭さん)



創作者として訴える続ける “表現の自由”

2019年3月香港 「星星美展」から40年記念の展覧会

中国での創作活動が、以前よりも厳しくなっていると感じている黄さん。体力的に衰えていく今後、今のようには活動できなくなっていくと考え、ことしは、香港や世界各地を訪れ、展覧会を開くなど精力的に活動している。

「芸術家の自由を求める行動は非常に重要です」(展覧会 来場者)

芸術家の黄鋭さん

中国社会は、今のあり方でいいのか、黄さんは問いかけ続ける。

「あのときのデモは、歴史の1ページになりました。今の中国では、あの時のようなデモもできないのです。この状況が良いのかどうか。今の人たちが考えて行かなければいけません。」(黄鋭さん)

ページの先頭へ