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特集

2019年9月18日(水)掲載

シリア難民に希望を! 歌に込めた思い

内戦が続く中東のシリアからは、多くのミュージシャンも国外に逃れている。その中の一人、エジプトへ逃れたシリア人歌手のタレク・スウィーダンさん。自らも苦難に直面しながら、故郷に帰れないシリア難民の人たちを歌で勇気づけようとステージに立ち続けている。

シリア難民を再び笑顔に

エジプト北部のアレクサンドリアで開かれたコンサート。シリアの伝統的な歌などが披露され、多くのシリア難民の人たちが訪れた。

♪故郷を離れたことを責めないでくれ。別れは涙と悲しみで満ちていた
(タイトル「about Alienation」)

タレク・スウィーダンさん

会場で歌声を響かせたのは、シリア出身の歌手、タレク・スウィーダンさん(37)。6年前、内戦が続くシリアからエジプトに逃れてきた。タレクさんの自作の歌には故郷への強い思いが込められている。難民の人たちは「ホームシックな気分になり、故郷に帰りたくなった」と歌声に聴き入った。

タレク・スウィーダンさん
「シリアのみんなが来てくれて、すばらしいコンサートになった。みんなの笑顔を見ることができ満足だ。」



内戦で人生が一変 歌う場を失う

タレクさんは内戦前、シリアで名の知れた歌手だった。恋愛や結婚にまつわる曲が人気で各地の祝いの席に呼ばれ、人々に夢と笑顔を届けていた。しかし、2011年からの内戦で状況は一変。タレクさんの出身地の南部ダラア県は、はじめに反政府デモが盛り上がった地で、アサド政権と反政府勢力が血みどろの戦闘を展開。人々に歌声を披露する場もなくなってしまった。「10人以上の若者が何の理由もなく殺されるのを見た。私は犠牲者を悼み、歌うことをやめた。そして国を離れた」(タレク・スウィーダンさん)。


“希望の歌”を届けたい

祖国を離れエジプトで避難生活を送っていたタレクさん。失意の中で再び歌声を取り戻すきっかけとなったのが、難民の人たちに音楽を教える国連の活動に参加したことだった。歌を歌うことで子どもたちに笑顔が戻るのを目の当たりにしたタレクさん。取材に対し、「音楽を教えることで私は生き返った。皆が知る歌手、タレク・スウィーダンに戻った」と語った。

かつてのメンバーとバンドを再結成したタレクさんは、先月、イスラム教の新年を祝うイベントを開催した。

そこには、タレクさんが国連の音楽教室で教えたシリアの子どもたちも招かれた。子どもたちの中にはエジプトで生まれた子もいたが、みんなが一緒になって歌声を響かせた。タレクさんが最後の曲として選んだのは、シリア国民なら誰もが知っているという童謡だった。

♪私たちの国に小さな家を建てましょう。私たちが大きくなる時、世界も一緒に変わっていく
(シリアの国民的な童謡)

シリア内戦では、560万人余りが周辺国へ逃れている。軍事的に優勢なアサド政権は、そうした難民たちに帰還するよう促しているが、いまだ、故郷に帰ることはできていない。タレクさんは、一日も早くシリアに平和が訪れることを願い、多くの人に歌でメッセージを届けたいという。

タレク・スウィーダンさん

「人々には『希望』が必要で、それを歌で届けたい。私の武器は歌の言葉です。国を再建するための武器として、歌を次の世代に伝えていきたい。」

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