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特集

2019年9月12日(木)掲載

日本のママさんたち イスラムファッションへの挑戦

イスラム教徒の女性たちが身に着けている「ヒジャブ」や「アバヤ」。宗教上の理由から、人前で髪や肌を露出することを避けるための衣服だが、女性たちは、この「ヒジャブ」や「アバヤ」の色や素材を自由に楽しんでいる。最近は、日本の着物を仕立て直した商品が人気を呼び、その独自の柄と品質の良さから、イスラム教徒の女性の間で人気が高まっている。

きっかけは育児のための退職

着物を仕立て直して「ヒジャブ」や

「アバヤ」を作っているのは、福島県白河市にある小さな縫製会社だ。30代から40代までの育児中の女性たち、10人が働いている。

WATASI JAPANの代表 名和淳子さん

3年前の2016年に、この縫製会社を立ち上げた名和淳子さん。もともと、農業関連企業で技術職として、働いていたが、育児のため、9年前、14年間続けてきた仕事をやめた。「矛盾を感じました。子供を産むということは非常に大事なこと。でも女性は、それがあるからこそ、時間を制限されてしまったりします。それで働けなくなってしまうというのは非常におかしいと思います」(WATASI JAPANの代表 名和淳子さん)



アイデアの源はマレーシア留学時代の出会い

マレーシア留学時の名和淳子さん

育児に専念して4年が過ぎ、名和さんが、自分のような母親たちが活躍できる場所を作りたいと思いを募らせていたとき、ふと頭に浮かんだことがあった。マレーシア留学中に出会ったイスラム教徒の女性たちが頭にかぶっていた「ヒジャブ」だ。世界のイスラム教徒は約16億人。人口の4分の1を占めている。イスラム教の戒律を守りながら、おしゃれを楽しめる「ヒジャブ」や「アバヤ」にビジネスチャンスがあるのではないかと名和さんは思いついたのだ。

さらに、名和さんは、縫製業ならば、子育てで時間を制限される母親たちが、自分たちのペースで働き続けることができると考えた。さっそく、商品開発にのりだした名和さん。その目に留まったのは…

希少価値の高い昔の着物だった。仕立て直すことで、世界に一つしかない独自の商品を生み出していった。



イスラム教徒の女性に聞き取り調査

インドネシア人女性に聞き取りをする名和淳子さん

商品開発には、イスラム教徒の女性のさまざまな意見も取り入れた。「袖にも柄が欲しいって、イスラム教徒の方の意見があったので袖に柄を入れました」(WATASI JAPANの代表 名和淳子さん)
宗教上、人前で肌を見せることができないイスラム教徒の女性たち。何度も女性たちに聞き取りをし、その意見を商品開発に反映させた。市内に住むインドネシア人女性からは、「イスラム教徒は手先しか見せないので、袖が広すぎると腕が見えてしまう」と袖口を狭くする工夫が必要だとアドバイスを受けた。

購入者から届いた写真や手紙の抜粋

地道な聞き取りから開発された商品は、ネットや日本のモスクなどで販売。旅行者やイスラム教徒へのお土産として徐々に売り上げが伸び、これまでに、10か国以上の人たちに500枚以上の商品が売れた。

左:菊の模様 右:松の模様

品質の良さはもちろんだが、商品に人気が集まる大きな理由が、もともとの着物の柄が生かされている点だ。着物の模様には様々な思いが込められている。長寿を願う「菊」。暮らしの平穏を願う「松」。名和さんは、着物に込められた日本の女性の思いを知ってもらいたいと、商品のひとつひとつに着物の柄の意味を書いたカードを添えている。「昔から続いてきた日本の美を生かしながら、形を変えて、新しい女性の働き方を交えながら、これから事業を進めていけたら いいかなと思います」(WATASI JAPANの代表 名和淳子さん)



世界進出!ジャカルタへ

バイヤーと商談中の名和淳子さん

ことし7月下旬、名和さんは初めて海外での商談会に臨んだ。世界最大のイスラム国家で、多様なイスラムファッションが注目されるインドネシア。ここで、富裕層を取り込めれば、 今後の事業拡大も夢ではない。

バイヤーにアバヤを売り込む名和淳子さん

「うちの商品はすべて一点ものですよ。」

通訳を介して、バイヤーたちに売り込む名和さん。デザインと機能性に富んだ商品は その場で次々と売れていった。バイヤーからは「素材も肌触りも良くて涼しいです。着物の柄ならインドネシアでは、よく売れると思いますよ」と好評だった。

バイヤーと記念撮影をする名和淳子さん

早速、ファッションショーへの参加も打診されるなど、十分な手応えを得た名和さん。

「想像していた以上に、すごく良いお話を頂いたので本当に来て良かったです。着物でできた新しい商品を、インドネシアの方々に広めたいと思います。」

子育て中の母親の手から生まれるイスラムファッション。福島から世界へ羽ばたいていく。

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