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特集

2019年9月4日(水)掲載

アフガニスタン和平の道は タリバンと戦う女性リーダー

9月2日、アメリカ政府の高官が、アフガニスタンでの和平交渉の草案でタリバンと原則合意したと明らかにした。タリバン側が和平合意の条件を遵守すれば、18年に及び現地に駐留するアメリカ軍が段階的に撤退を進め、最終的には、約1万4,000人のアメリカ兵は撤退するという。しかし、現地ではむしろ、懸念も高まっている。米軍がいなくなることで、地域情勢が不安定になるおそれもあるからだ。こうした中、北部の州では、ある女性がリーダーとなって自警団を結成し、自分たちの手でタリバンから身を守ろうとする動きが始まっている。

攻撃強化するタリバン

アフガニスタン北部にあるチャーケント地区。アフガニスタンの軍や治安部隊による掃討作戦の結果、一度は、タリバンを一掃した。しかし、今年に入り、再びタリバンが攻勢を強めているという。

この村で出会った男性は、ことし5月、父親をタリバンに殺害されたという。略奪を行っていたタリバンの戦闘員のひとりが、畑で農作業を行っていた父を銃殺したのだという。男性は、一家の大黒柱を失ったことで、当時通っていた高校を辞めざるを得なかったという。「父親をタリバンに殺され、生活が一変した。タリバンは、残忍なひとたちだ。タリバンは人々を抑圧し、住民はタリバンの手によって苦しめられている」。男性は泣きながら語った。



“自分たちの身は、自分たちで守る”

しかし、この地区の住民たちは、決してタリバンの脅威に負けなかった。住民たちは、ことし6月、治安対策として自警団を結成。かつての部族長やタリバンとの実戦経験のある元治安部隊の隊長など、さまざまなキャリアの人材が参加した。当初、タリバンからの報復を恐れて反対する声もあったが、タリバンの蛮行には力で対抗するしかないと多くの住民が決意を固め、自警団が結成された。当初は、100人規模だったが、今やメンバーの数は、1,000人以上にまで増えている。

この自警団の結成を呼びかけたのが、サリマ・マザリさん(38)。2018年、女性として初めてアフガニスタン政府から地区長に任命された人物だ。

サリマ・マザリさん
「タリバンは、平和のメッセージを発しながら戦闘を始める。
 そんな連中を誰が信じられるでしょう。」

8歳の時に、タリバンの支配から逃れるため、着の身着のまま隣国イランに逃れたサリマさん。2年前に祖国アフガニスタンに戻り、“故郷の復興の力を尽くしたい”という思いから地区長に名乗り出たという。「故郷に奉仕することが自分の義務だと感じた。故郷の人たちの生活が良くなり、町の復興に大きな変化をもたらすために全力をつくしたいと思った」。

しかし、地区長に就任後、女性が行政の長を務めていることを疎んじるタリバンの戦闘員から、 “やめなければ殺す” と脅しの電話がかかってくるようになったという。多い時には、1日5回も電話があるが、サリマさんは、それに屈することなく活動している。

「地元の人たちの治安を守るために、立ち上がった。本音をいうと、タリバンは恐れてはいない。もし恐れていたらタリバンと戦うためにここにはいなかった。」



“反タリバン”戦いは続く

サリマさんは、(7月)自警団のメンバーとともに、タリバンによる被害を減らすことができたという北部の山岳地帯を視察に訪れた。この村では、人々がお金を融通し合って武器を購入したという。この村の自警団の司令官は、タリバンの攻撃が夜間に集中していたことから、この時間にパトロールを強化したことが特に効果的だったと説明した。「治安部隊の人員が少ないため、私たち自警団は、自分たちで武器や弾薬を購入してタリバンと戦い、治安を維持していくしかないのです」(視察先の自警団司令官)

視察の結果を持ち帰ったサリマさんは、さっそく自らの地区でも、夜間にパトロールをする専門のチームを立ち上げた。さらに、タリバンの戦闘員の規模や活動するエリアを調査するなど分析を行い、次々と対策を進めている。

サリマ・マザリさん
「アフガニスタンの平和はアフガニスタン人自身でつかまなければならない。
 人々がそう思わないかぎり、アフガニスタンに平和は訪れない。」

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